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クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行) しみ抜き法について

2025年02月01日 | 書籍・新聞記事

皆様こんにちは

山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。

いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

先輩のクリーニング業者から52年前の昭和48年(1973年)発行の「クリーニングの基礎知識」

の本をお借りしました。本を読んで52年前のしみ抜きの事が分かりました。

クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行)

クリーニング基礎知識 目次

クリーニングの基礎知識 P279

Ⅷ しみ抜き法

1. はじめに

衣料品のしみ抜きを手際よくできるといろいろな点で有効なものである。顧客に対してきわめて

有効なサービスになるし、また顧客の強力な確保にも役立つものである。しかしクリーニング業

者は従来、自分達の専門外のことに案外無関心であったように思われる。クリーニング業界の春

秋時代ともいえる現在、このような無思慮な営業方針では、やがては敗惨没落の憂き目をみるに

至るのではないかとさえ思われる。しみ抜きの技術を一通り心得たからといっても、如何なるしみ

をも、つねに完全に除去できるとは限らない、また脱色剤を用いてしみとともに染色を脱色して

いわゆる地直しにかけるのは、少なくともクリーニング業者の行うしみ抜き法としては邪道である

と思う。地直ししたからといってもけっして完全に元の状態に戻るというものではない。

これから述べるしみ抜き法も、このような地直しを必要とするしみ抜き法ではない。しかし

クリーニング業者が日常、除去に苦労されているようなしみも、その方法としみ抜き剤の選択

が適当であるならば、除去が案外容易である場合がきわめて多く、地直しを必要とするような

しみは、問題になるほど数多くあるものではない。

しみ抜きを実際に行おうする場合にはいろいろ知っておかねばならない道具や、その用法、あるい

はしみ抜き操作上ぜひ守らねばならない重要な事項がかなりあるのでまずこれらの主なるものを

あらかじめ説明しておきたい。

クリーニングの基礎知識 P281~P282

3. しみ抜きに用いられる器具やその用法

(1) 機械法

スチームスポッター機(蒸気しみ抜き機)と登場して間もない超音波洗浄機の事が

書かれています。

この当時はやっと超音波洗浄器やスプレーガンがやっと登場だした頃でまだ十分に機器を

使いこなしていなかった時代ですので、事故も多かったと思います。

これ以前は、和式のしみ抜き道具は水木と呼ばれていたパッキンブラシを使用していましたし

クリーニング業界では濡れタオルで叩く事や下記のブラシやを使用していた為に技術の習得が

困難だった事や、、使用薬品のゆすぎ出しが非常に手間が掛かった事により薬品残留での

経時変化による黄変事故が多発していたと思われます。

私自身修業時代もタオルの下敷きにしてスプレーガンを使用してのしみ抜きを行っていましたが、

師匠から習ったスプレーガンの使用法を学んで使用していた為に記事の穴開きや目開き事故は

有りませんでした。現在は従来のスプレーガンよりも霧の細かいスプレーガンと下敷きのタオルは

バキュームモーターでの吸引に変わって薬剤残留による経時変化が激減しました。

クリーニングの基礎知識 P282

(2) 道具

竹ベラ、しみ抜き用ブラシ、しみ抜き用手鏝の事が書いています。

4.しみ抜きを完了してからの後処理

5.しみ抜き剤

6.しみ抜き操作の実際 P286~P323

37ページにわたってしみ抜きの方法が掲載されています。

この当時どんなしみが多かったかがよくわかります。

(1)  塗料のしみ抜き 

 (a) ラッカーのしみ

 (b) エナメルのしみ

 (c) ペンキのしみ

塗料のしみですが、この当時建設ラッシュでしたし、現在は建築現場外部のの足場にテントを

張って養生している事で塗料やペンキのしみは、ほぼ無くなっていると思います。

(2)  チューインガムのしみ抜き

次にチューインガムのしみですが、この当時はガムのしみ抜きが多かったのでしょうが、最近は

プロ野球選手が試合中にガムを噛んでいますが、あまりガムを噛んでいる人を見かける事が皆無と

なりました、私自身着物のしみ抜きがメインだった事からガムのしみ抜きをした事がありません。

(3)  血液のしみ抜き

つぎは血液のしみですが、血液のしみは現在でもよくあるしみです。人血や動物の血液や魚の血液も

あります、新しい物であれが、中性洗剤の水溶液で処理しても落ちますが、付着して時間が

経った場合は血液中のたんぱく質の部分が凝固する為の水洗い(水処理)でも落ちない為に

凝固した蛋白質を除去する為にむかしはうぐいすの糞を使用していましたが、現在は高性能な

蛋白分解酵素を使用しています。蛋白分解酵素は湿度(濡れた状態)、温度(温度40℃~45℃)と

時間(30分以上)の条件下でたんぱく質の部分が除去できますが、残った色素は、過酸化水素水や

過炭酸ナトリウムで酸化漂白を行うと除去できますが、酵素処理は時間が掛かる為に水処理後に

酸化漂白を行いしみが残って失敗している事例もよく見ます、蛋白分解酵素処理がとても重要と

なります。

(4)  泥のしみ抜き

 ① 濃色に染色した羊毛地、又は化繊地に付着した泥のしみ

 ② 絹地の高級和服に付着した泥のしみ

 ③ シールやビロードの泥じみ

 ④ パイルがアセテートのビロードの泥じみ

 ⑤ 木綿、麻、等のしみ

泥はねのしみもこの当時は道路が悪かった事と撥水加工が普及してなかった事が原因で泥はねの

しみは非常に多かったです。当然修業時代は泥はねのしみ抜きもとても多かったです。

石油系溶剤でブラシングしてから丸洗い(ドライクリーニング)を行いますが、泥はねは

ほとんど落ちない無い為にその後にしみ抜き工程で泥はねしみを除去しました。

泥はねのしみ抜きはスプレーガンを使いでこなす練習に最適なしみでした。

泥はねの部分に油性のしみ抜き剤を付けて、ブラスで叩いた後に、指先でスレが出ないように

やさしく揉んで泥はねに薬剤を浸透させた後に、生地に目依れや穴が開かない圧力調整をして

スプレーガンで油性のしみ抜き用溶剤で洗浄して除去します。この後に落ちない場合は化粧石鹸

を濡らした刷毛で付けて、ブラシで叩いた後に、スプレーガンで水を使用して除去していました。

この工程で舗90%の泥はねは除去できましたが、これでも落ちない場合は、黄変しみ抜きを行い

最後にサビ取り剤を使用するとほとんどの泥はねしみは除去出来ました。

現在はしみ抜き剤の性能の向上したので、油性のしみ抜き剤を付けて指先で揉んだ後にスプレーガン

で油性のしみ抜き溶剤の使用でほぼ100%除去出来ています。

(5)  カビのしみ

 ① 青カビの場合

 ② 赤カビの場合

カビのしみですが、この本に書いてある時代は白綿地の場合は次亜塩素酸ナトリウムを使用しての

カビ落とします。他の場合は過マンガン酸カリを使用してのカビ落とし行っている事が書かれて

いますが、染色の事を考えると難しい処理になります。

現在は染色に対して影響が少ない過炭酸ナトリウムの登場と過酸化水素水用の高性能助剤が

出てきた為に過マンガン酸カリを使用する事無くなりました。

着物の喪服等に生える白カビは修業時代はブラシング後に石油系溶剤で丸洗いを行ってもあまり落ち

ませんでした。次に油性のスプレーガンで処理していました。

現在は抗菌・防カビ剤入りのドライソープでブラッシング後に同じドライソープの入った石油系

溶剤で必要洗浄時間で洗うと白カビもカビ臭の除去できます。

着物の胴裏や表地全体に生えた黄色いカビは黄変しみと一緒なので、水洗い後に過酸化水素水で

漂白して除去していますし、洋服の場合は過酸化水素水や過炭酸ナトリウムを使用して酸化漂白で

除去していますが、染色との関係があり薬剤に耐えられない場合は作業が出来ませんが過マンガン酸

カリよりも漂白力は弱いですが、染料に対して脱色する事が無い為にしみ抜きや全体漂白に使用でき

ます。

(6)  金属化合物のしみ

 ① 酸化鉄のしみ

 ② 銅化合物のしみ

  (a) 塩基性炭酸銅(緑青)のしみ

  (b)銅の塩化物のしみ

     (c)銅のアンモニア塩の水酸化物のしみ

    (d)酸化銅のしみ

金属化合物のしみは現在ほとんどはお目に掛かる事ないので、省略します。

(7)  黄褐色のしみの除去

黄褐色しみ(黄変しみ)は以前に記事にしたために下記の記事をご覧下さい。

 黄変しみのページ参照 →  http://blog.goo.ne.jp/toyo32892/d/20250111

(8)  化粧品類のしみ

 ①アイシャドウのしみ

 ②口紅、眉墨、頬紅しみ

 ③おしろいのしみ

 ④マニュキュアしみ

 ⑤コールドクリームしみ

化粧品のしみは現在も多いしみです。

修業時代に日本舞踊で日本手ぬぐいを噛む為に濃い口紅が付いて他の業者に出しても

完全に落ちないけれども、修業先の泉州生洗い本舗おくながでは綺麗に落ちるのは、

どの様なしみ抜きをしているかを問われて、師匠の奥様が企業秘密なので教えられない

と言っていた事を思い出しました。

またみけし洗い小出富勝の先生の講習会でお聞きしましたが、着物に黒いしみが付いていて、

墨のしみかと思い、うぐいすの糞を何度も使ったが除去出来なかったが、黒いしみはアイライン

なので油性のしみ抜き剤を使用して除去した事なども思い起こされます。

マニキュア(ネール)しみはマニキュア除光液の成分にアセトンという成分が入って

いますが、アセトンのみではマニキュアしみが除去できなかった為に、マニキュアしみに

マニキュア除光液で落とした後に油性処理と水処理をして経時変化を防いだ記憶があります。

(9)  インクのしみ

 ①青インクのしみ

 ②赤インクのしみ

 ③黒インクのしみ

インクのしみ抜きですが、以前は万年筆をジャケットの内ポケットに入れてインクが漏れて

表地に付着していたしみ抜きを良くやりました。一部解いて、ポケット地、裏地、芯地、

表地の順にしみ抜きしていきます。いきなり表地のしみ抜きするとポケット地に大量のインクが

付いている為に油性処理で取り切るつもりでやらないと完全に除去出来ない為に手間ひまと

忍耐と諦めない心が必要です。

現在は万年筆を使用する事は無くなった為に万年筆インクのしみ抜きもここ10年は行っていません。

その代わりにボールペンや筆ペンや蛍光ペンのしみ抜きは非常に増えました。

現在は非常に高性能なしみ抜き剤が有りますが同じしみ抜き剤を使用しても、綺麗に除去出来る

クリーニング業者が少ないと思います。

取引先のクリーニング業者からポリエステル生地のナース服の胸元に50カ所位のボールペンしみが

付いていて、この業者は低価格大量処理をしているので、ドライクリーニング、またはランドリー

処理をしている為に胸ポケットのボールペンしみが付きっぱなしで納品していました。

ナース服のボールペンしみが落ちるかどうか相談されましたので、15分位掛けてしみ抜きを

行った所、「こんなに綺麗になるんですね」と非常に驚いていました。

(10) 油類のしみ

 ①機械油のしみ

 ②植物性油にしみ

 ③乾性油のしみ

油のしみも多いしみです。

クリーニング業者の中には油のしみはドライクリーニングで落ちていると誤解して入り業者も

多いですが、油のしみはドライクリーニング処理では除去する事は出来ません、断言できます。

亡き小出富勝先生のしみ抜きの講習会でがおしゃっていましたが、現在は使用禁止になっている

溶解力の強いエタン溶剤で7回ドライクリーニングしても除去できない油しみに対して、モノクロール

ベンゼン+ドライソープを付けて指先でやさしく揉んで、超音波洗浄機を使用して石油系溶剤で

ゆすぎ出すと油しみは除去出来たとお聞きしました。大正14年発行の高橋新六著「京染の秘訣」の

なかでしみ抜きを失敗しない為にはまずベンジンから使いなさいと記されています。

小出先生がしみ抜き講習会の最後に油しみと蛋白質しみを正しくと除去するた、大抵のしみは

落ちるとおっしゃっていました。

 

昭和55年に高等学校卒業後に家業の継承の為、大阪府岸和田市の泉州生洗い本舗おくなが

(師匠奥長昭治)にしみ抜き・色掛けと着物の丸洗い・仕上げ(プレス)の技術の基礎を

3年間の修業で習得しました。実家の山三 三ツ屋染舗に入店して45年間のしみ抜き職人と

仕事に従事して来ました。しみ抜きを行って決して避けて通れないのが黄変しみ(黄褐色しみ)

です。着物の場合着用後にお手入れをしないで、保管している為にいざ着用しようとして初めて

気付く為にほとんどが、付いているしみのほとんどは黄変しみです、掛衿の焼け(黄変しみ)

胸の汗しみ、食べこぼしの黄変しみです。黄変しみ抜きを行うと着物に使用している酸性染料の

青系の染料が脱色する為に必ず色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)が必要と

なります、しみ抜き・色掛けの技術の無いクリーニング業者は丸洗い(ドライクリーニング)を

行いますが、しみを残したまま仕上げをしてしみが落ちませんでしたと言って、納品しています。

クリーニング業者としてはドライクリーニングで落ちないしみのしみ抜きを行い生地の脱色や

スレの発生で生地を傷めるよりも、取れませんとお返しする事の方が親切との考えがあります。

お客様はクリーニングに出してしみを落として、また着物を着用しようと考えてクリーニング業者に

出します。お客様はしみだらけの着物を着用したいと考えているのかと思います。

洋服の場合でもクリーニング業者の大命題の低価格で大量処理の為に、溶剤管理が悪くて汚れた

ドライクリーニング溶剤で洗った洋服のしみ抜きを行うとしみ抜きした箇所のみ綺麗になります。

再洗いをするか水洗いをして溶剤の汚れを落とすか、色掛けして綺麗になった箇所を汚すかの

選択肢となります。

しみ抜き法のはじめに書かれていますが、「脱色剤を用いて染色を脱色して色掛け(色修正

・染色補正・染直し・部分染・地直し)を行うしみ抜き法はクリーニング業者の行う

しみ抜き法としては邪道であると思う。色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)

を行ってもけっして完全に元の状態には戻というものではない。」と書かれています。

50年前のしみ抜きや色掛け技術を取得していないクリーニング業者が書いた本での意見です。

この本を読んで感じた事はクリーニング業者は誰よりもしみ抜き技術を必要としていますが、

低価格で大量処理の大命題がある為に、脱色する漂白や色掛け(色修正・染色補正・染直し

・部分染・地直し)は邪道だと断言しています。本心は喉から手が出るほど必要ですが、

色掛けを含めたしみ抜き技術を習得する方法が分からない為に根本の問題を見ないようにして

現実を避けていると感じています。

 

私自身しみ抜きの仕事に携わりは早くも45年が経ちました。

汚れた着物を必死に洗い張りして両親の持っている技術では取れないしみを眺めて悔しそうに

「このしみが落ちればもっと良くなるんだ」としみじみと語っていた父の言葉が今も胸中に

響きます。洗い張り職人として真摯に働いていて、さらなる高みを目指していた事が忍ばれます。

私自身もしみ抜き丸洗い(ドライクリーニング)、しみ抜き、色掛け(染色補正)、洗い張り、

湯通し、水洗い、全体漂白、染め替えとお手入れやメンテナンスを行う技術の選択肢も増えました。

クリーニング業者としては邪道な脱色して、色掛けで補正するしみ抜き方法は染色補正師のしみ抜き

職人としては極当たり前の事ですし、お客様のニーズを叶えることは、職人として当然の事と

思います。しみ抜き屋(染色補正技能士)としては当たり前のクリーニングて引き起こした、脱色した

クレーム品を直す事の出来る邪道な色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)で補正を

行っています。クリーニング業者は、しみ抜きを行わない為にお客様からの信用を無くしている、

現実を受け入れないといけないと思います。

現在は黄変しみ抜きを行う為の良い薬剤も登場していますし、何よりお客様は綺麗に

してくれるしみ抜き技術を必要としています。

大東和戦争終戦後今年で80年で昭和100年です、低価格大量処理の大命題が岐路に立っていると

感じます。

 

着物のお手入れと洋服のメンテナンスは

厚生労働大臣認定一級染色補正技能士と

クリーニング師のいる 

山三 三ツ屋染舗にご用命下さい。

〒062-090

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クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行) ウエットクリーニングについて

2025年01月25日 | 書籍・新聞記事

皆様こんにちは

山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。

いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

先輩のクリーニング業者から52年前の昭和48年(1973年)発行の「クリーニングの基礎知識」の

本をお借りしました。ここ十数年で普及して来たウエットクリーニングですが、本を読んで

52年前にウエットクリーニングが有った事が分かり驚きました。

クリーニングの基礎知識

労働省認定教科書で発行元が全国クリーニング環境衛生同業組合連合会で

今から半世紀以上前の昭和48年(1973年)発行の教科書です。

クリーニング業者さんもクリーニング師の資格取得の為に必死で勉強していた教科書で、

どこのクリーニング屋さんにもあった本とお聞きしました。

この当時の札幌市の地下鉄の乗車料金が20円で現在は210円ですので10倍になっていますが

日銀のホームページによると物価は2,4倍となっていても、かなり高価な本です。

クリーニングの基礎知識 P272

9.その他クリーニング

(1) ウエットクリーニング

 ① ウエットクリーニングの目的

 ウエットクリーニングとは、ドライクリーニングをするために受託した衣料を、処理後も

 なお汚れがおちてない場合に、広範囲なしみ抜きとして行う水処理をいう。

 従って操作としては、低温ランドリーと類似する場合もあるが、その本旨はあくまで

 ランドリーではなく、水を用いた特殊処理であり、その上、ドライクリーニングに比べて

 見劣りのしない仕上がりとする責任があるから、これを行うか否かの決定も、衣料がその

 処理に耐えるか、あるいは型くずれがあっても復元可能の見通しがあるときにのみ、

 処理責任者の判断によって行うべきものである。このような高級特殊技術であるから、

 もしこの処理によって、品質低下の恐れがあるときには、あらかじめ、委託者の諒解を

 得る必要があることはいうまでもない。

 ② ウエットクリーニング実施上の注意

 ウエットクリーニングの主対象となる汚れは、汗や香粧品や飲料その他、水や石鹸水で

 除去しやすいものが多い。しかしこれがさらに古くなっておちにくくなった場合には、

 蛋白質除去、鉄分除去その他漂白などの処理を要することが少なく、その原理はしみ抜きに

 準じるわけである。これらの化学的処理方法は、「しみ抜き」を参照することとし、水処理に

 おける一般注意事項につき述べる。

 (a) 水処理の特徴としては、いきなりワッシャー中に投入することなく、原則としてブラッシ              

 ングにより、脱色や型くずれに注意しながら汚れの除去および部分的なすすぎを行う

 (このことは、「ブラシを見る」という特殊な技術用語によく表現されている)

 ブラシの使用方法は、対象物により臨機応変にする必要があり、絹のような微細繊維束から

 なる長繊維を使用した織物は、洗剤用液を含ませたシュロブラシ等でたて糸方向に軽く擦る

 ことにより繊維を毛羽たせること少なく、しかしもよこ糸の打ち込みが多いことを利用する

 ことにより、糸寄りを防ぎながら目的を達することができる場合が多い。

 このように、ブラッシングは、繊維束の間隙の汚れをしごき出すことおよび、表面の汚れを

 擦り取るのに効果がある方法であるが、紡績糸のように、短繊維の集合からなるもので、

 しかも甘燃の場合とか、ループなどのような立体構造の場合、その他、表面のつやがこのまれる

 朱子状組織などについては、軽くブラシの先で叩く必要のあるものも多くこの目的に沿った

 各種のブラシが製造されている。次に全体すすぎにネットに入れて、ワッシャー中で、短時間

 行うことが多いが、型くずれの危険のある物は、手押し洗い、または流水すすぎ(ワッシャー

 停止時のすすぎを含む)が必要となる場合もある。ただし流水すすぎの場合には、意外に多量

 の水が衣料に作用するので、水道水中の微量の塩素殺

クリーニングの基礎知識 P273

菌剤(0.3~1ppm 程度)や、井戸水中の鉄分、硬度分が原因して、退色や着色などの予期

しない事故となることがあるので注意を要する。

(b) 洗剤または助剤については、石けんが汚れの除去に効果的であるが絹練用マルセル石鹸で

     も弱アルカリ性であるので、これが使用できない不堅ろう染色品には、中性洗剤を使用する

  必要がある。ただし、家庭用合成洗剤のみならず、業務用の「ぬきもの用洗剤」にもアルカリ

  配合品が多く、また家庭用合成洗剤の大部分に蛍光増泊剤が、時には青味剤さえも、配合され

  いるのが現状であるのでこれを赤色系統の淡色染品に使用するときは、変色または退色と同様

  の結果を招かぬよう、予めこれを試験をようすることがある。さらに不堅ろうな染色品の中

 には、中性洗剤による常温処理によっても、脱色するものがあるので、単なる冷水によるすすぎ

 のみにとどめるか、あるいは、色止め剤を添加しながら洗浄しなければならない場合もある。

 酢酸などを色止め剤として加えて行う酸性洗浄には、非イオン洗剤を用いるのが効果的である。

 カチオン系界面図の活性剤や明礬(みょうばん)を用いて、色止めをすることもあるが、

 変色のおそれがないことをあらかじめ確認することが必要である。

(c)  脱液乾燥については、型くずれのおそれがあるものに対する注意が主体となる。そのためには

  軽い遠心脱液を行うか、さらに危険なものは、タオルに挟んで軽く手押ししぼりを行ない、

 自然乾燥をするが、伸びる危険のあるものは、網などの上で乾燥させる。また、脱色するもの

 は、脱液、乾燥時に染料が移染しないように注意し、タオルに挟んで脱液した上で迅速に乾燥

 させる。特に、糊付その他の加工剤処理により、乾燥に要するときには、模様の染料が滲み

 だして、いわゆるマイグレーション(色泣き)を起こすおそれのないように注意を要する。

 

ドライクリーニングで除去出来ない水溶性のしみや汚れを落とす事ができる

ウエットクリーニングがこの本に書いてあった事が有る意味驚きでしたが、

この時代はまだ現在の様な高性能な洗剤や仕上げ剤等が無かった為に水洗いを

行っても現在の様に仕上がらなかった事が分かります。

着物のお手入れもこの当時でも、水洗いしている洗い張りがある意味究極の

ウエットクリーニングになります。

両親が洗い張りで使用していた棒石鹸や粉末洗剤、液体洗剤と変化していった事を

思い出します。

先人の苦労が忍ばれますし、この50年でクリーニング業界も変わってきている事を実感しました。

現在は着物も洋服も、この様な問題を解決した非常に高性能なウエット用の洗剤や仕上げ剤が

メーカーの研究・開発のお陰で色泣きや収縮や風合いが悪くなる失敗等が少なくなりましたし、

更に過炭酸ナトリウムや過酸化水素水の助剤の登場で洋服全般の黄変除去出来る全体漂白も

可能になり、不可能が可能になるクリーニングの選択肢が増えました。

さらにアパレル仕上げ機の登場で、仕上がりもさらに良くなりました。

この本に書いている当時の技術とは雲泥の差となっています。

 

着物のお手入れと洋服のメンテナンスは

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クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行) 絹和服クリーニングについて

2025年01月18日 | 書籍・新聞記事

皆様こんにちは

山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。

いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

先輩のクリーニング業者から52年前の昭和48年(1973年)発行の「クリーニングの基礎知識」

の本をお借りしました。本を読んで52年前の絹和服クリーニングについての基礎知識が良く

分かりました。

クリーニングの基礎知識

労働省認定教科書で発行元が全国クリーニング環境衛生同業組合連合会で

今から半世紀以上前の昭和48年(1973年)発行の教科書です。

以前はクリーニング師になる為に必死で勉強して、どこのクリーニング屋さんにも

あった教科書とお聞きしました。この当時の札幌市の地下鉄の乗車料金が20円で

現在は210円ですので10倍になっていますが日銀のホームページによると物価は2,4倍と

なっていても、かなり高価な本です。

クリーニングの基礎知識 P45~P47

絹の特徴について

(3) 繊維の特質

 繊維にはそれぞれもって生まれた特質があり、その特質を無視して、クリーニングはできない。

 綿はアルカリで高温洗たくできるが、絹を同じ方法で処理すれば必ず事故が起きる。繊維のもっ

 ている特質を知り、それに適合した取扱い方をするはことは非常に大切なことである。以下は

 単一の繊維について記述してあるが、実際の衣料品には混紡、交織、交編などが多いことを

 忘れてはならない。混紡等の場合は、混ぜられている繊維のそれぞれの注意点に留意して取扱う

 必要がある。

[動物繊維]

動物繊維には絹と毛の2つの天然繊維がある。いずれもアルカリに弱く塩素系漂白剤には耐えられ

ないから、洗剤や漂白剤の選定を誤ってはならない。白物は黄変しやすく、虫害やかびの害を受け

やすいが、軽く、暖かで、しわになりにくい性質をもっている。価格は一般に高価である。

① 絹

日本は全世界の絹の大半を生産している絹の国である。しかしそれでも国内需要をまかないきれず

毎年相当量を輸入しており、世界の絹の60%位が日本が消費されている計算になっている。とは

いっても日本人が1年間に消費する絹は僅かに0.3kg(昭和45年)であるから、絹の絶対量が少なす

ぎることも事実である。その絹の消費量の実に90%もが和装用に向けられいるというから、日本

女性は世界の絹の半分を消費しているということができる。絹繊維の側面はなめらかであるが、

断面はなめらかであるが、断面は三角形に近い形をしており、絹の美しい艶はこの三角の断面に

当たって光線が、いろいろな角度に乱反射するためであるともいわれている。また、蚕が吐き出し

たままの絹糸は1本に見えるが、2本の繊維がニカワ質のセリシンという物質が接着されたような

格好をしているが、顕微鏡で観察できる。このセリシンは石けん液で煮ると溶け、2本の繊維(フィ

ブロインという)は1本ずつに分離される。このようにセリシンをとることを”練り”または”精練”

といい、精練を終わった絹繊維は柔らかく光沢も増してくる。精練にはセリシンを全部除いた本練

(ほんねり)から、多少残した七分練、三分練等がある。絹は美しい艶と、しなやかで暖かな感触

をもっており、糸が細いから薄手の織物が比較的多い。また、紋様が織り出したものが多いのも

絹織物の大きな特長の1つである。絹製品には正絹とか本絹といわれている絹100%のもの、

シルクウールのように羊毛との交織のもの、あるいはレーヨン、アセテート、ポリエステルなど

との交織等がある。正絹物の中には、まわたから手でつむいだ紬(つむぎ)糸を使ったものや、

玉糸(2匹以上の蚕が共同してつくった繭からとった糸)、野蚕糸(養蚕によらず野外で自然に

できた繭からとった糸)など、節の多い糸を使ったものもある、またくず繭からとったまわたを

機械紡績した絹紡(けんぼう)糸使いのものもある。絹織物は組織や使用染料がデリケートで

あるから、機械的な強い操作を加えることは禁物である。ササラ掛けなどして生地を毛羽立たせ

たり、地紋をいためてしまってからでは、いくら悔やんでもとり返しはつかない。

本来絹は黄変しやすい性質をもっているが、最近は蛍光増白剤をしてあるものが多いので、一層

黄変が促進されやすく、その上洗剤が残存していると、これも黄変を促進する1つの原因となる

から洗剤が残らないような処理をする必要がある。また、湿度が高い状態で長期間保管すること

も黄変の原因となる。絹織物の染色堅牢度は、あまり強くはない。このため直射日光で退色する

おそれがあり、蛍光灯をつけたガラスケースの中に長期間保存しておく程度でも、退色するおそれ

がある。

クリーニングの基礎知識 P27

着物が一番売れたのは昭和52年と聞いています。

当時京都の室町の問屋街は売れすぎていて、商品が無くてシャッターが閉まっている

開店休業状態だったとききました。その5年ほど前ですから、景気が良かった時代です。

(3) 被染物の傾向

 (b) 和服ブーム

 もともと和服は日本の民族衣装であり、今さら和服ブームとはおかしな話であるが、昭和40年頃

 から和服に対する需要は非常に大きなものとなった。その和服の素材は高級品になるほど絹が絶

 対的な強さを発揮し、ウールや化学繊維は影が薄い。和服の中心を占めているのはもちろん婦人用

 のもので紳士物は最近目立ってきたとはいうものの、婦人物と比べれば数量的には問題にならない。

 和服ブームの結果、わが国は現在世界の絹の60%を生産する絹の国でありながら、国産の絹でけで

 は足りず、昭和41年以降現在まで、毎年韓国や中共、あるいはその他の国から絹を輸入しなければ

 ならなくなってしまったのである。絹和服の需要がどんなに強いものであるかは、日本の絹の消費

 量の実に90%が和装用に向けられているという事実を示すだけで理解されよう。和服も洋服と同じ

 ように高級品化の傾向にあり、地組織、紋様に手のこんだものが次第に多くなり手つむぎ、手織、

 あるいは天然染料による染色なども盛んに行われている。手間のかかったもの、天然染料を使った

 ものはいずれも高価であり、本場結城紬などのように、平常着でもぜいたくなものなら一反10万位

 するものも珍しくない。このような高価な和服が売れているのも、生活水準が向上したからであり、

 日本女性の絹に対するあこがれがなくならない限り、和服ブームが下火になることはないともいわ

 れている。

 

50年過ぎて着物の時代から洋服のDCブランド、インポートブランドへと移り変わっていきました。

絹への憧れも着物からシルクスカーフやシルクブラウスに変わっていきました。

クリーニングの基礎知識 P2

(3)  クリーニングの技術史的展望

 ① 解き洗い

 日本では、昔はほとんど和服を用いていた。そして庶民の用いた平常用なものは、木綿の盲縞

 (紺色の無地の木綿の平織物)とか、縞木綿とか、木綿絣なので、家庭で丸洗いし、すすいで、

 のり付けをし、絞ってから、平らにたたみ、掌(てのひら)で叩いて、平たい形をととのえて

 乾かすだけでたりた。しかし絹物は、たとえば糸織とか、縞や絣の紬織(つむぎおり)などは、

 家庭洗たくでもほどいて布片として洗ってから、板張りや伸子張りして、そのときに布海苔の

 のりを施し、乾かすことで布片の形状をととのえて仕上げた。そして縫製し直すので、その際、

 傷んでいるところと、傷まないところとを代えたり寸法をあわすことができた。また、ちりめん

 友禅とか、小紋類は、洗うときに、染め替えることによって、同じ布を、年齢に応じた色や柄に

 することで、高価な布地を新たに購入しないですませるようにしていた。したがって脱色が容易

 でないと、染め替え上、不便なので、あまり堅牢(けんろう)でない染色を施すのが普通である。

 このような場合の洗い張りは、専門の悉皆屋(しっかいや)と称する業者に委託し、染め替えは

 西陣に送り、いわゆる京染め業者の手でなされた。現在では、このような従来の手段では経費が

 かさむので、友禅染の訪問着などは、京洗いと称する一種のドライクリーニングによって、済ます

 方が経済的になので、相当の量が京洗いによっている。

 

解き洗いの項目に洗い張りの事を記載していますが、洗い張りは仕立て上がっている着物を

解いた後に、現在はロックミシンで行いますがこの当時は白木綿の仮縫い用の糸で、手縫いで

は縫いを行い一反の布に戻します。は縫いをしないと仕上げの伸子張りや湯のし機(テンター機)

を行う事が出来無いですので、大切な事が抜けています。また当店は染屋であり洗い張り屋です

ので分かりますがこの当時のドライクリーニングは溶剤管理や使用する水分が多くて丸洗い

(ドライクリーニング)することで汚れが落ちるよりも溶剤中の汚れを被染物へのの逆汚染に

より白い胴裏がグレーになったり、色泣きや移染や裏地が収縮した型崩れを起こす事故が多発して

いたので、クリーニング事故に合い心に傷(トラウマ)を抱えたお客様は「着物は丸洗い

(ドライクリーニング)だけは、絶対にするな」と平成時代まで言い続けていた方も多かったです。

クリーニングの基礎知識  P273

着物丸洗いについて

(2)  絹和服クリーニング

絹和服は、一般衣料が多様化して、特殊な扱いを要するものが次第に増加する傾向がある中でも、

毛皮皮革製品と並んで、最も特殊な処理を要する衣料であり、これに対するクリーニングの研究

も、近年、とみに、さかんになってきた。絹和服の処理方法についても、種々の方式が打出され

おるがこれを一々述べることはできない。また絹和服の種類、特性については、被染物の項と

重複を避けて省略して、ここでは「事故防止必要と思われる、処理場の注意および関連する知識」

のうち、ごく基本的な事項のみについて述べる。

絹和服のクリーニングにおける基本的な注意事項としては

  • 生地の黄変、脆化させないように処理すること
  • 加工の脱落を防ぎながら、汚れを十分に除去し
  • 万一、脱落した場合に、修正できる技術を備えること
  • 生地が風合いや縫製形態を損なわずして仕上げること

などであるが、その他に、保存中における変色等の事故が発生し易いので、これに対する配慮も

必要であり、また絹和服特有の再生サービスとして、衣料のいたみ箇所の振替、更新などの要望

もあるので、このような多角的要求を満足できるような、有機的連繋組織も今後は必要になると

思われる

クリーニングの基礎知識  P274

①絹和服の黄変性

絹和服が黄変しやすいことは、他の繊維との比較においてはいうにおよばず、蛋白繊維である

毛と比較してさえも著しく、この原因として次のようなことがあげられる。まず、一般に蛋白

繊維は黄変しやすい傾向をもつが、絹の場合は、特に変色しやすいチロシン、フェニルアラニン

等の特殊蛋白質を含むことが、基本原因とされ、この傾向をさらに、その傾向をさらに、顕著に

する条件として、更に、次のような原因も考えられる。即ち、毛の繊維は表面をケラチン質で

固く保護され、その上をろう質で覆われているのに対し、絹は反対に、保護質はほとんど除去

された上に、微細繊維束からなっている関係上その表面積は著しく広く、したがって、外部変化

を受けやすいのみならず、その間隙に異物を包蔵し易くできていること等の影響も大きい。

この他に、蛋白質を黄変させやすいアルカリ処理を、精錬工程において、かなり強烈に受けて

いること。生地反に加工されることの多い蛍光増泊剤が、これまた、それ自体が黄変しやすい

のみならず絹繊維を黄変させる傾向さえも無いとはいえないことなど、絹和服は、黄変しやすい

素質を十分にもっているといっても過言でない。これに対し、黄変防止のための加工処理として

は、基本処理、後加工処理のいずれも、特筆すべきものは未だに開発されていないのが現状であ

るから、クリーニング処理を行うに際しての、黄変防止に対する心構えとしては、急激な黄変

および局部的黄変を防止するよりあらゆる配慮をしながら、処理を行うことが、そのすべてと

いえる。以下、現在絹和服の標準処理といわれる石油系溶剤処理の例について述べる。

② 絹和服の洗浄と黄変防止

 (a) 溶剤処理に繊維に与える影響

 ドライクリーニング溶剤の作用が、絹繊維に変質を与えるという報告は、実用および試験の

 結果のいずれにおいても、未だ行われていない。しかし、生地のぬめりの消失や、加工の脱落を

 防ぐためには、石油溶剤の場合でさえも、夏期には溶剤冷却装置が望ましいとされており、した

 がって、パークレンなどによる処理に際しては、この点に関して十分な対策を講じる事が必要と

 思われる。

 (b) 洗剤処理の絹繊維与える影響

 しみ抜き用の水溶液洗剤としては、絹練用マルセル石けんが、仕上りの風合いの良さと、

 石けん自体の焼けの少ないことから、古きから賞用されている。しかしながら、アルカリ性で

 あるから、使用後に水を用いて十分にすすぎ出す必要のあることはいうまでもない。

 一方、ブラッシング用のドライ洗剤も、絹用として黄変のおそれのないものを用いるべき

 ことはもちろんであるが、すすぎを容易にするための方法としては、あらかじめ生地を清浄な

 溶剤で濡らすことにより、微細繊維束の間隙を溶剤で満たしてから、ブラシ液を用い、

 処理後は乾かないうちに、ただちに、ワッシャーに投入して十分にすすぐことを基本とする。

 この際に使用するブラッシング液に、水を使用する事は洗浄効率からいえば望ましいことは

 いうまでもない。しかし、ブラッシング液かもし乳化状態(外観は透明でも)であるときには

 溶剤中に投入して希釈されれば白濁状態を呈し生地に洗剤が粘着するおそれもあるので、

 被染物の乾燥度を

クリーニングの基礎知識  P275

十分に考慮すべきものであり、これらの管理できない状態ならば水を含ませた溶剤による

ブラッシングは不適当と思われる。

(c)  溶剤管理

絹和服の洗浄は、ブラッシングに重点がおかれ、ワッシャーにおける処理は、すすぎを目的と

しているので、短時間で十分なすすぎを行なう必要がある。したがって、溶剤の清浄化が迅速に

行われることが、必須条件となる。ワッシャー中の溶剤が、ほぼ清浄化されるためには、少なく

とも約7回程度溶剤が循環する必要があるとされているが、絹和服のクリーニングにおいては、

さらに短いすすぎ時間に、それが可能なようにポンプ、フィルターの能力を設置し、沪過はもと

より、吸着剤による溶剤の清浄も最高度に発揮できるような設備が必要である。

③ 機械操作

 (a) ブラッシングにおける、毛羽立ち、糸寄り、加工の脱落の防止

ブラッシングは、繊維表面の汚れの除去効果が大きいのみならず、微細繊維束の間隙に滲み

込んだ汚れや洗剤用液をしごき出す効果も大きいので、絹和服のように、もみ洗いを嫌う衣料に

対しては、有効な汚れ除去方法とされている、ただしこの際に、生地の毛羽立ちや糸寄りを防ぐ

ためには、生地表面がたて糸勝ちになっていることや、たて糸に較べてよこ糸の密度が多いこと

などを利用して、刷毛を前方に寝かせ、刷毛先に神経を手中させるような気持ちで、たて方向に

軽くブラッシングすることがなど、十分な注意を必要とする なお、これでも危険な場合には、

ブラシで軽く叩くことが良いとされ、これに適した種々な形のブラシも考案されている。

ブラッシングも、このような注意と熟練をもって行なえば、ワッシャーもみに較べて、汚れの

除去効果が大きい割合に、加工剤を少なくできる。しかし、金銀粉、金銀箔、顔料加工などの

接着剤が、生地の硬化を嫌って、固着が不十分であったり、あるいは軟化または脆化していたり

すると、ブラッシングのみならず、畳んでネットに入れた上でごく軽いワッシャーすすぎを

行なってさえも、表面加工が脱落したりする場合があるから、再加工が必要となってくる。

(b) すすぎ、乾燥

前記のように、すすぎに際しては、表は内側に畳んで、ネットに入れてワッシャー中で数分、回転

させながら、高数位ですすぐ。乾燥もタンブラー乾燥は厳禁であり、吊り干しによる自然乾燥が

望ましい。

④ 仕上げ

仕上に際しては、一般に、蒸気アイロンが用いられる。しかし、縮緬や朱子のような、ふくらみ

のある風合いを生命とする生地に対しては、アイロンを軽く浮かせて蒸気を吹かしながら整える

のが、普通であり、特に、襟、袖、裾、および縫目のふくらみはこれをつぶさないように、蒸気

を吹かすのみで整えるか、止むを得ない場合には、蒸気を止めて、アイロンで軽く抑えることが

行われる。全体の収縮に対しては、あらかじめ、広範囲に引張って伸ばしておき、そこに蒸気を

かけてセット

クリーニングの基礎知識  P276

することが好ましく、アイロンを用いて部分的に、伸ばすことは生地のふくみをつぶす危険が

あるので注意を要する。アイロン温度は、絹に対する適温とされている150℃よりも、できるだけ

低くして、後日の経時黄変を防ぐような配慮が望ましいが、その場合にも、ドレインが滴下しない

ように注意をようする。

⑤ 保存

絹和服の保存に湿気を避けるのは、かびのみならず、黄変の予防からも、重要なことであり、低湿

低温でかつ、温度変化の少ない場所に格納することが必要である。ポリ袋に密閉したまま保管する

ことは、かえって、低温時には、多湿となるおすれがあり、しかもその対策として同封される

シリカゲルなどの吸湿剤も量的に十分でない場合が少なくない。したがって、一般には、タトウ

紙に包んで、防湿性の桐箪笥に格納し、気候が涼しくなる時期の秋に、乾燥した日を選んで、

通風乾燥(虫干し)を行うなどの配慮が必要である。絹和服は防虫よりも、防かびを主眼とする

ことが必要であるが、防虫剤にパラジクロールベンゾールを用いる場合には、ガスによる変色の

危険がある場合を考慮し特に、衣料に接触させることは禁物である。また、通風乾燥も公害の

多い大気中では、環境を考えなければならない。最近は折り畳んだ衣料の周辺部が格納中に

変色するなど、ガスに関係した格納中の事故が増加している。

 

幼少の頃から、家業の現場で育って、三歳の頃より家業の手伝いをしていました。

高校卒業後の昭和55年3月26日(水)大安の日に着物の丸洗い(クリーニング)としみ抜きの

技術習得の為に大阪に修業に行きました。

三年間で学んだ事を振り返ると学んでいた事がこの本に書かれていました。師匠もこの本を

読んで学んでいたのではないかと、思いを巡らしました。

あの頃を思い返すと丸洗い(ドライクリーニング)の機械はオープンワッシャーでしたし、

ノンソープで洗っていました、この50年で機械も洗剤も随分と進歩しました。

仕上げ台も修行当時は最初は手製の仕上げ台でバキューム仕上げ台の試作機が作業場にありました。

翌年に最新のバキューム仕上げ台が導入されて、収縮した着物の仕上げが随分と楽になりました。

現在の仕上げ機はアパレル機で使用されている高性能モーターによるサクション機能(吸引)と

ブロー機能(吹上)の導入によりさらに素晴らしい仕上げができる様になりました。

着物のお手入れも洗い張りから、丸洗い(ドライクリーニング)へと変わって行き、

さらに仕立て上がった状態での水洗い(ウエットクリーニング)が全てではありませんが出来る様に

なりました。洗い張りと丸洗いの良いとこ取りが出来る様になり、また一歩進みました。

先人の苦労とこの50年の進歩を再確認出来ました。

 

着物のお手入れと洋服のメンテナンスは

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クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行) 黄変しみ抜きについて

2025年01月11日 | 書籍・新聞記事

皆様こんにちは

山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。

いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

先輩のクリーニング業者から52年前の昭和48年(1973年)発行の「クリーニングの基礎知識」

の本をお借りしました。本を読んで52年前の黄変しみ抜きの事が分かりました。

クリーニングの基礎知識

労働省認定教科書で発行元が全国クリーニング環境衛生同業組合連合会で

今から半世紀以上前の昭和48年(1973年)発行の教科書です。

以前はクリーニング師になる為に必死で勉強して、どこのクリーニング屋さんにも

あった教科書とお聞きしました。この当時の札幌市の地下鉄の乗車料金が20円で

現在は210円ですので10倍になっていますが日銀のホームページによると物価は2,4倍と

なっていても、かなり高価な本です。

着物のしみ抜きやから出発した私の職人人生ですが、昔から着物の着用後にお手入れ

されずに保管して、次に着用しようとすると掛衿のヤケ(黄ばみ)胸元の汗による

黄変しみや飲食に伴う食べこぼしによる黄変しみと着物のお手入れは黄変しみ抜きと

言っても過言ではありません。

黄変しみは油性処理、水処理、蛋白質処理を経て黄変しみ抜き(酸化漂白)を行います。

黄変しみ抜き(酸化漂白)を行うと青色→黄色→赤色の順に脱色していきます。

黄変しみを100%脱色しなくても地色よりも薄くなると色掛け(色修正・染色補正・染直し

・部分染・地直し)で補正していきますので、黄変しみ抜きに色掛け(色修正・染色補正

・染直し・部分染・地直し)は必須となります。

クリーニングでもしみが落ちないと言う事は以前の「最新汚点抜き」の本にも書かれて

いましたが低価格で大量処置が命題のクリーニング業界においては、しみ抜きしましたが

取れませんシールの添付する事がベターの判断になると思います。

それでも諦められないお客様はネット検索して、しみ抜き店に持ち込む事になります。

今回黄変しみについてクリーニング業界の教科書でどの様に記載しているかを調べて

みました。クリーニングの基礎知識の教科書には昭和48年度の知識が詰まっています。

クリーニングの基礎知識  P309

(7)黄褐色のしみの除去法

①黄褐色のしみ

衣料地に発生する黄褐色のしみの発生原因は種々様様である。しかもその除去については、

数多いしみの中でも最も難しいものの一つであると一般に考えられている。確かに付着した

ばかりの飲食物のしみや、泥のしみと異なり、付着した異物の変質、生地に加工した蛍光染料

の変質、あるいは生地を構成する繊維それ自体の変質等によるものがほとんどであるために、

単なる洗剤の溶液又は洗剤類似のしみ抜き剤をつけて叩いたり、あるいは水のような無機溶剤

や、シンナー、パークロルエチレン、石油系の溶剤といった有機溶剤をつけて叩くといった

単純な手段方法によって除去できないものがほとんどである。当然このようなしみの除去には

酸化剤、あるいは還元剤を用いる化学的方法によるのでなければならない。したがって衣類地の

ほとんどは染色加工を施したものであるので、地色をおかすおそれが多分にあるので問題は厄介な

ことになる。しかしここで酸化型や還元型の漂白剤及びこれらの漂白剤に対する一般衣料地に

加工されている染料の性質について考察してみる必要がある。というのは、何も染料のあらゆる

部属を知悉し、さらにその個々の部属に属する数多くの染料の漂白剤に対する化学作用を学べと

いう難しいことを要求するものではない。漂白剤の、染料に対するきわめて一般的な傾向を

まず知ってもらいたいということである。さらにその用法を誤りなく行うならば、このような

難しいと考えられている黄褐色のしみ除去についてもけっしって失敗の憂目をみるようなことは

ない。その用法とはどのようなことであるかといえば、用いるものは漂白剤であるので

クリーニングの基礎知識 P310

いきなり漂白剤を用いて本番に取りかかるような乱暴なことはしてならない。すなわちどの

ような場合でも、特に高級和服などにおいては、次のような手順を経てから本番にかかるように

慎重でなければならない。

(a)まず水で絞ったタオルで叩く、あるいは高級アルコール系の洗剤3%程度の水溶液をつけてか

らしみ抜きブラシで叩いてみる。ただし、そのような操作でしみが動くならば、できるだけその

方法で除けるものは除去してしまう。

(b)次に、衣料の一部で用いようとする漂白剤で、染色が耐えるかどうかを実験してみる。

場合によっては衣料の縫目を解いて失敗しても支障のない部分を作って実験を試みる。

白地の衣料ではもちろん、このような実験の必要はないので、ただちに本番にかかるのも

よいで有ろう。地色のあるものなどでは、以上のような実験を試みてから本番に取りかかる

ようにすれるならば、万に一つも失敗のおそれはないはずである。次にこのような黄褐色の

しみは一般に、化学的な方法を必要とするものの代表的なものであり、用いられるものは

漂白剤が主である。したがってそれらの染料に対する一般的傾向および用法を知る必要がある。

②漂白剤の種類

a 還元漂白剤

一般に染料をおかす確率が高いものであり、その用途もしみ抜きの主役的役割にあるものでは

ないただし、次に述べる亜鉛末などはその例外であり、その水溶液は酸性であるが、通常用い

られるものは次のようなものである。すなわち

a ブランキット(次亜硫酸ソーダ)或はハイドロサルファイト(Na2S2O4)

b 酸性亜硫酸ソーダ(NaHSO3)

c 亜鉛末と酸

 酸性亜硫酸ソーダ(NaHSO3)はまた重亜硫酸ソーダあるいは亜硫酸水素ナトリウムとも

いわれる還元系漂白剤であるが、その漂白作用はブランキットに比較するとはるかに弱い。

したがってブランキッドによりおかされて変褐色するような染料でも、酸性亜硫酸ソーダには

おかされない場合がきわめて多く、この事実はしみ抜き処理操作に有効に利用できる。

(b) 酸化漂白剤

衣料地に生じる黄褐色のしみを除去するための主役的をなす漂白剤であり、還元漂白剤に比較

すると、染料をおかすことも比較的少ないために、地色のある衣料地にもしみ抜き剤として

十分使用できる場合が多く、次のようなものが通常用いられる。

a 過マンガン酸カリウム (KMnO4)

b 過硼酸ソーダ (NaBO3・4H2O)

c 過酸化水素水 (H2O2aq)

等である。植物性繊維の白生地(木綿の白地、レーヨン、アセテート)では塩素系の漂白剤の

利用も可能である。すなわち

d 次亜塩素酸ソーダ溶液( NaOlaq)

e  亜塩素酸ソーダと酸(NaO2Cl)

クリーニングの基礎知識 P311

亜塩素酸ソーダ溶液は、ナイロンやアクリルニトリル系の白地に用いると効果的に利用でき

るが、これらの酸化系漂白剤は、過酸化水素水を除いては、アルカリ性である。

これら酸化漂白剤を用いて黄褐色のしみを除く方法について順次、詳細に述べることとする。

さてすでに述べたように、強い漂白剤を用いてしみ抜きをおこなおうとものであるので、

生地や染色のためにできる限り漂白剤の作用時間を短縮させるために、水または

高級アルコール系の洗剤を用いて、あるいはドライクリーニング用の洗剤を用いて、

汚れを除去できる限りあらかじめ除去し、次いでこれから使用しょうとする酸化剤で

染色物の耐性実験を試み、安心して使用できることを確認してから本番にかかるように

することが必要である。

③各種漂白剤の用法

(a) 過マンガン酸カリ

過マンガン酸カリは現在クリーニングやしみ抜き作業でほとんど使用していない為に

省略します。

(b) 過硼酸ソーダ

以前は京都で黄変しみ抜きに良く使用されていましたが、反応温度60℃以上の為に

しみ抜き作業中にいきなり染色が抜ける為にとても使いずらい漂白剤です、反応速度が

20℃からの過炭酸ナトリウムが登場してから徐々に使われなくなりました為に硼酸ソーダも

省略します。

 クリーニングの基礎知識 P313

(c) 過酸化水素水

過酸化水素水をしみ抜き処理に用いる場合と、衣料の全体を過酸化水素水の中につけこんで

用いる場合とでは、原理的には全く同様であるが、処理操作は全く異なる。常温でただ、

しみの部分につけただけでは、不完全であるし、鏝で加熱しながら使用するのも不適当

である。つまり、過酸化水素水のを中性で使用した場合、それが常温であると緩慢すぎるので、

有効に分解して作用しないうちに乾燥してしまうので効果的な用法とはいえないし、加熱して

使うと、分解が迅速すぎて漂白作用が半端になってしまう。すなわち3%程度に希釈した

過酸化水素水に無水炭酸ソーダ(ソーダ灰)を加えてトロトロにやわらかく溶いてしみの部分に

塗布して十分乾燥するまで放置しておく。ソーダ灰のかわりに消石灰でもよい。

過酸化水素水にソーダ灰や消石灰のようにアルカリ塩等を加えるのは、過酸化水素溶液は

中性においては分解漂白が順調に進まないが、溶液がアルカリ側のある場合には、その分解が

順調に進行して漂白作用も手順よく進行するからである。さて塗布した過酸化水素水と

アルカリ剤の混合物物が完全に乾燥したら、生地裏面に指先で叩いて乾燥物をきれいに落とす。

生地の間に残留物がするものも、なるべくきれいに落とす。次に水で絞ったタオルで入念に叩き

拭いして、残留物が生地に残らないように後処理を行う。分解促進剤として混合ソーダ灰などの

作用で、しみが除去されても、しみ抜き剤の付着していた部分が淡黄色に変色していることが

ある。このような場合にこれを除くために20倍に希釈した稀酢酸を塗布すればほとんど淡黄色は

除去されるものである。ただし、アセテート地がおかされる危険があるので、稀酢酸なりとも

使用することは避けて、重亜硫酸ソーダの水溶液を使用する方が安全であるのみならず、

復元も完全に行われる。

(d) 次亜塩素酸ソーダ

次亜塩素酸ソーダを使用できるのは、白地の植物性繊維地(セルロース系繊維地)、

ポリエステル繊維地などで、その他の天然繊維地、合成繊維地では黄褐色に変色するので

使用してはならない。セルロース系、ポリエステル繊維地、それ自体は次亜塩素酸ソーダの

使用も差し支えものであるが、合成樹脂加工を施してあるものでは、樹脂の種類によっては、

その塩化物ができるので黄褐色に変化することがある。その王褐変したものの復元には、

還元剤(ブランキット)を用いて強く漂白する以外に方法はない。さて次亜塩素酸ソーダを

用いてのしみ抜き作業であるが、王褐色のしみ抜きのみならず、その他、いろいろなしみの

除去剤としてきわめて効果的な化合物であるが、その品質については十分に吟味する必要がある。

次亜塩素酸ソーダ溶液の使用により、木綿地がおかされ脆化し、生地をボロボロにしてしまう

事故がしばしば発生している。次亜塩素酸ソーダ溶液の選択には、次のような注意するとよい。

a 有効塩素濃度が6%といわれているものに良質のものが多い。有効塩素濃度が10%あるいは

 12%などといわれているものにはほとんど良質のものは皆無に近く、不純物が多く、次に

 述べる遊離の苛性アルカリの含有量が多いのみならず、実際に測定してみると、公称されて

 いる有効塩素量よりはるかに実量の低下しているのが実状である。純度が悪いので安定性が

 なく、われわれの手  入るまでに分解してしまう率が高いからである。

b 遊離苛性ソーダ(アルカリ)の含有量が0.2%以下のものでなければならない。有効塩素量の

 多いものは、この残留アルカリの量を多くすることによってわずかにその分解の防止剤、

 つまり安定剤として用いられているものである。純度が高ければ残留苛性アルカリの量は

 少なくともかなりその安定性が改善されるものである。

 この次亜塩素酸ソーダのしみ抜き剤としての用法であるが、しみの部分に霧吹きまたは

 濡れタオル軽く水分を含ませる。次に5倍ないし6倍に希釈した(1~1.2%)次亜塩素酸溶液を

 割りばしなどでつけてやる。早いときは即刻、遅くとも数分以内でしみは消えてしまうはずで

 ある。しみが消えたならばチオ硫酸ソーダの飽和溶液を軽くつけて(脱塩素剤Na2S2O3

 市販薬はNa2S2O3 5H2O)から後処理するとよい。すなわち清潔な下敷を置き、霧吹きで

 水を吹きかけて、乾いオルなどでよく叩き拭きをするとよい。下敷きをそのつど交換しなが

 ら、少なくとも4回以上この後処理を行なう必要がある。白木綿地についているしみを

 除くには、特殊なしみを除いては過マンガン酸カリや過硼酸ソーダを使用するよりも、

 次亜塩素酸ソーダ溶液を使用する方が、はるかに便利であり、効果的でもある。

 しかしその使用できる生地の範囲が制限されるのは、性質上止むえない。

 

私自身の修業時代の昭和55年当時は泉州生洗い本舗では酸化漂白剤として

京クリン(商品名)+過酸化水素水を使用して熱のの掛け方も弱かった為に黄変しみが

なかなか抜けずらくて難儀していました。

しみ抜きについて色々と調べていて以前に師匠に黄変抜きの薬剤に付いて聞いた事がありました。

着物についての黄変抜きで一番最初は過マンガン酸カリで行っていたと、次は過酸化水素水を

炭酸マグネシウムで溶かした物を使用して天日干しや紫外線ランプを当てていたとききました。

この方法はしみは良く抜けたけれども、地色がリアス式海岸の様にガタガタに脱色してその後の

色掛けがとてもむずかしかったとお聞きしました。次の過酸化水素水+京クリン(商品名)と

聞いています。その後に高名なしみ抜きの先生が過炭酸ナトリウム+過酸化水素水を使用する

ようになり、漂白効果がかなり効果が有った為に、私もこの方法で黄変しみ抜きを行っていま

した。

現在の黄変しみ抜き剤は過酸化水素水を入れて使用するしみ抜き剤で全ての生地に対して脆化

しにくく、地色が抜けにくくて、漂白力の強い薬剤を使用しています。以前の過炭酸ナトリウム

よりも高性能で、脱色も少ない為にとても重宝しています。

今日繊維業界やアパレルメーカーは新しい繊維や加工法が開発されるために我々の業界も

使用薬剤やしみ抜き方法も常にアップデートして行かなければ技術の退化していき時代に

取り残されるどころか業界そのものが絶滅していく実感をひしひしと感じています。

 

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クリーニング業書 最新汚点抜法(昭和32年発刊)クリーニング業界の問題

2025年01月06日 | 書籍・新聞記事

皆様こんにちは

山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。

いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

先輩のクリーニング業者から68年前の昭和32年(1957年)発行の

クリーニング業書・第六巻「最新汚点抜法」の本をお借りしました。

本を読んで68年前の問題も現在の問題が何も変わっていない事が分かりました。

私自身は学者でもあれませんし、実際に作業をしている作業能力者(職人)の目線で

発信しています。

クリーニング業書・第六巻 最新汚点抜法

本の中身はたくさんのしみの種類の対処法が書かれていました。

この当時のしみ抜きは染屋のしみ抜きから発達した「和式しみ抜き」と蒸気しみ抜き機

(スポッター・マシン)及びしみ抜き技術は元来アメリカより伝わってきたもので戦後、

米軍施設のクリーニング工場に設置されたものから、一般に知られるようになったものです。

この本には蒸気しみ抜き機(スポッター・マシン)の使用法や、しみ抜きの種類に応じた薬剤や

濡れタオルでしみの部分を叩く等のしみ抜きの方法が記載されています。

この当時の和式のしみ抜きの道具としてはパッキンブラシが主流でした。

蒸気のしみ抜き機(スポッター・マシン)はしみの部分を吸引するバキューム機に

蒸気を当ててしみを湿らせた後に圧搾空気(ホットエアー)で乾燥してしみ抜き行っていました。

昭和40年代より超音波しみ抜き機やスプレーガン(噴射ガン)が登場してパッキンブラシに

とって代わっていきました。

その後にしみ抜き機のバキュームモーターが普及してきてしみ抜きがかなり進化しました。

クリーニング業書・第六巻 最新汚点抜法

前書きの部分に書かれている事はこの当時と現在の問題が何も変わっていない事が分かります。

発行者の弁

株式会社 日本クリーニング界社 主幹 高橋成治

乾式(ドライクリーニング)、湿式(水洗い)両洗濯の技術を如何に発揮しても

洗濯技術だけでは完全に汚点(しみ)までも除去するのは至難である、

洗濯技術の最後の仕上げは汚点抜(しみ抜き)にある、

洗濯物に汚点(しみ)が残って居るようでは画龍点晴(がりょうてんせい)を欠ぐ有様で

洗濯の本質が失われる、従って汚点抜き(しみ抜き)は洗濯技術の優劣を決定づける

重大なる要素である、我国の汚点抜法(しみ抜き法)は洗張、悉皆を根源として

徳川中期(享保十四年・1729年)に興起して今日に至り技術の奥義は汚点(しみ)と共に

染色を抜き去り色合わせをする地直し(色掛け)にあり非常に手数を要し洗濯業の目的たる

大量低価格加工に合致せぬ欠点がある。

洗濯は元来欧米諸国に端を発し明治初期に業として成り立った物で技術の大半は欧米にあり、

これに我国に適する技法を加味して日本の洗濯は確立している、然し洗濯文化の程度と

科学質が比較的低い我国ではあらゆる点に手練(しゅれん)を用い練磨(れんま)の技術が

総てを解決して居る状態である、特に汚点抜き(しみ抜き)禅の奥義の如く以心伝心、

習得するに習得出来ざる自修自練の技術に根源があり、汚点抜き(しみ抜き)技術を

把握した技術者が業界には幾人も無い事に依りて自明である、現今理(?)、化学に依りて

解析出来ざる物無き時に於て汚点抜技術(しみ抜き技術)はあまりにも業界の負担になった居る、

本社は此禅的思想を打破する為に文献と科学性とによりて汚点抜技術(しみ抜き技術)を

業界誰でも応用解決出来るよう以前にわかり易い汚点抜(しみ抜き)を単行本として業界に贈った、

而し此文献は米国の初歩標準技術書の翻訳であり是れを読破した人は今一段高級なる専門書の発刊を

希望した、本社は此人々に報ずる為に今回発刊したのが本書である。

本書は汚点抜(しみ抜き)に対する総ての物理、化学、これに関聯(関連)する事項をあます無く

収録してあり汚点抜(しみ抜き)を専習するには絶好の良書であると自認して広く業界にお贈りする

次第である年々刊を重ねるわかり易い汚点抜第三巻と共にスポッターの座右に備へなくてならない

資料である事は申すまでも無い、是等専門書に依りて我国業界の汚点抜技術の完成が

早められるなればこれに過ぐ喜びは無い。

昭和32年6月1日 布施の萬居に於て監修を終わりて記す。

 

筆者はドライクリーニングとランドリークリーニングの洗濯技術だけでは、完全にしみを

落とす事は出来ないは落とせない、洗濯技術の最後の仕上げはしみ抜きにあり洗濯物に

しみが残って居るようでは洗濯の本質が失われる、従ってしみ抜きは洗濯技術の優劣を

決定づける重大なる要素である。しかしクリーニング業の目的は低価格大量処理加工であり、

相反するしみ抜きや色掛け技術はこの目的に合致しないと言っている。

現在のクリーニングは低価格である為にしみ抜き出来ない事としみ抜き作業を行える職人を

育成は出来ない事が業界としての本音を吐露しています。

 

私自身は家業を継ぐ決心をして昭和55年(1980年)に業界の知識無しに修業に出ましたが、

しみ抜き屋の大先輩から「しみ抜きの最後は色掛け(地直し)だから、しっかりと習って来なさい」

との言葉をいただきしみ抜き屋を生涯の仕事にする覚悟で丸洗い(ドライクリーニング)しみ抜き

色掛け(地直し)を特にしっかりと学びました。どんなに上手い色掛け(地直し)を行ってもしみが

残っていると綺麗に補正出来ずにしみは落ちた事にはなりません。

クリーニング業の目的の低価格大量処理加工からするとしみ抜き業界は真逆で高価格少量処理加工と

言う事になります。昭和32年当時の価値観と令和7年の現在の価値観とは随分と変わった部分と何も

変わっていない部分があります。

私自身はクリーニング師、一級染色技能士(染色補正作業)、職業訓練作業員(染色科)です。

この本を多角的に見るとクリーニング業界としみ抜き業界は共に成り立たないと思いつつ

しみ抜きの勉強をしましょうと感じます。

しみ抜きの基本は油性処理から行い、水処理、蛋白質の除去、酸化漂白、還元漂白を行い

最後に色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)を行って補正しています。

色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)技術はとても高度な技術でありますが

習得すると脱色によるクレームや弁償を防ぐ事が出来る唯一無二の技術です。

洗浄力が高くて光沢があり溶剤管理したドライクリーニング(丸洗い)、ひどい汚れや

全体の黄変しみを落とす水洗い(ウエットクリーニング)と全体漂白もありますし、

全体ヤケに対応する色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)や全体染・染め替えも

行なえますし、仕上げ(プレス)もとても大切です。

価値観は一人一人が人違います、お客様が思い入れのある品物(衣料)を何とか元の状態に直したい

思いを持ちコンタクトを取られて、出来るだけお客様の思いに職人として答えたい思いの自分の軸を

俯瞰して行く事がこれから残り少ない作業能力者(職人)としての仕事に活かして行きたいと

心新たに日々精進して行こうと思います。

 

着物のお手入れと洋服のメンテナンスは

厚生労働大臣認定一級染色補正技能士と

クリーニング師のいる 

山三 三ツ屋染舗にご用命下さい。

〒062-090

札幌市豊平区豊平2条2丁目2番20号

電話011-811-6926 FAX011-811-7126

営業時間 9:00~18:00

休日 日曜・祝日

メール mitsuyasenpo@train.ocn.ne.jp

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