皆様こんにちは
山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。
いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
お茶のお稽古に使用とお義母様の道行コートを箪笥から出した所たたみしわが
あったので、しわを伸ばそうと家庭用の蒸気アイロンを掛けようとした所、蒸気
アイロンからドレン(水)が噴出して道行コートに輪じみが出来てしまい、
取れないかとおしぼりで叩いてみたが取れなかったので、しみ抜きをして
欲しいとのご依頼です。
道行コート(三越製)
重めの生地のしっかりした三越で誂えた道行コートです。
道行コート(三越製)上前身頃 水による輪しみ
蒸気アイロンから出たドレン(水しみ)により輪じみです。
表地に付いている糊と染料が高温水によって溶け出て輪じみになっています。
道行コート(三越製)後身頃 水による輪しみ
道行コート(三越製)上前身頃裏 水による輪しみ
かなり大量のドレンが噴き出たと思われます。
これだけ広範囲の輪じみをしみ抜き処理をするに手間が掛かりますし、しみ抜きした部分が
さらに輪じみが発生する事と生地に付着している糊と余分な染料を除去しないと根本解決が
出来ません、以前は洗い張り(水洗い)と仕立て替えをしないといけませんでした。
現在は仕立て上がった状態で糊と余分な染料を除去出来る水洗い(ウエットクリーニング)が
出来ることから、この処理を行います。
道行コート(三越製)水洗い(ウエットクリーニング)中
見立て通りに洗浄液に入れると白濁した糊が出て来て、少し時間が経過すると
余分な染料が出て来ました。
道行コート(三越製)上前身頃 水洗い後
水洗い(ウエットクリーニング)を行うと綺麗に輪じみは除去出来ました。
道行コート(三越製)後身頃 スレ(擦れ・白け・白化現象)
後身頃の輪じみを取ろうとおしぼりで叩いた部分にスレ(擦れ・白け・白化現象)が
発生しています。
道行コート(三越製)後身頃 スレ直し後
幸いな事に軽いスレ(擦れ・白け・白化現象)の為にスレ直し剤で補正して分からなくなりました。
道行コート 仕上げ後
綺麗に仕上がりました。
1/18のブログ記事 クリーニングの基礎知識(昭和48年5月発行) 絹和服クリーニングについて
の中に絹に付いての記載を再度載せます。
① 絹
日本は全世界の絹の大半を生産している絹の国である。しかしそれでも国内需要をまかないきれず
毎年相当量を輸入しており、世界の絹の60%位が日本が消費されている計算になっている。とは
いっても日本人が1年間に消費する絹は僅かに0.3kg(昭和45年)であるから、絹の絶対量が少なす
ぎることも事実である。その絹の消費量の実に90%もが和装用に向けられいるというから、日本
女性は世界の絹の半分を消費しているということができる。絹繊維の側面はなめらかであるが、
断面はなめらかであるが、断面は三角形に近い形をしており、絹の美しい艶はこの三角の断面に
当たって光線が、いろいろな角度に乱反射するためであるともいわれている。また、蚕が吐き出し
たままの絹糸は1本に見えるが、2本の繊維がニカワ質のセリシンという物質が接着されたような
格好をしているが、顕微鏡で観察できる。このセリシンは石けん液で煮ると溶け、2本の繊維(フィ
ブロインという)は1本ずつに分離される。このようにセリシンをとることを”練り”または”精練”
といい、精練を終わった絹繊維は柔らかく光沢も増してくる。精練にはセリシンを全部除いた本練
(ほんねり)から、多少残した七分練、三分練等がある。絹は美しい艶と、しなやかで暖かな感触
をもっており、糸が細いから薄手の織物が比較的多い。また、紋様が織り出したものが多いのも
絹織物の大きな特長の1つである。絹製品には正絹とか本絹といわれている絹100%のもの、
シルクウールのように羊毛との交織のもの、あるいはレーヨン、アセテート、ポリエステルなど
との交織等がある。正絹物の中には、まわたから手でつむいだ紬(つむぎ)糸を使ったものや、
玉糸(2匹以上の蚕が共同してつくった繭からとった糸)、野蚕糸(養蚕によらず野外で自然に
できた繭からとった糸)など、節の多い糸を使ったものもある、またくず繭からとったまわたを
機械紡績した絹紡(けんぼう)糸使いのものもある。絹織物は組織や使用染料がデリケートで
あるから、機械的な強い操作を加えることは禁物である。ササラ掛けなどして生地を毛羽立たせ
たり、地紋をいためてしまってからでは、いくら悔やんでもとり返しはつかない。
本来絹は黄変しやすい性質をもっているが、最近は蛍光増白剤をしてあるものが多いので、一層
黄変が促進されやすく、その上洗剤が残存していると、これも黄変を促進する1つの原因となる
から洗剤が残らないような処理をする必要がある。また、湿度が高い状態で長期間保管すること
も黄変の原因となる。絹織物の染色堅牢度は、あまり強くはない。このため直射日光で退色する
おそれがあり、蛍光灯をつけたガラスケースの中に長期間保存しておく程度でも、退色するおそれ
がある。
一般消費者もそうですが、クリーニング業者も絹に対しての知識と取扱いが皆無な為に綿や
化学繊維の様に扱って大失敗をしています。絹(シルク)製品にしわは業務用のアイロンと
仕上台が無いと上手くしわが伸びません。しわが有った状態で専門店に持ち込んいただけると
余分なお金もかからなかったと思いますし、自己処理をして脱色やスレ(擦れ・白け・白化現象)を
出してから慌てて持ち込まれても、上手く行かない場合もありますので後悔先に立たずで、
手を掛ける前にご相談いただけると非常にありがたいです。
着物のお手入れと洋服のメンテナンスは
厚生労働大臣認定一級染色補正技能士と
クリーニング師のいる
山三 三ツ屋染舗にご用命下さい。
〒062-090
札幌市豊平区豊平2条2丁目2番20号
電話011-811-6926 FAX011-811-7126
営業時間 9:00~18:00
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メール mitsuyasenpo@train.ocn.ne.jp
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