銀河のサンマ

何でもあり

参鶏湯

2019-10-26 | 銀河食堂

 

 

時計もない部屋の片隅に突然、薔薇が咲いた。

赤深く濃い薔薇が何故か懐かしく僕を惹きつける。

薔薇の香りは濃く深く僕を巻きつけるが思いだせない、懐かし薔薇のこと。

うぅ、更に香りが僕に巻きついてゆく

「雨あがり小寒い中営業中」

銀河食堂現る。幻だろうか。

寒いだろ?参ナンチャラ食べていきな。それは最初にであった食堂の店主だ。

参鶏湯?

参ナンチャラだ、店主はナンチャラと濁す。

一人前で2枚の胸肉の出汁が決め手だ、ニンマリ笑う。

そしてこうも言う。

懐かしさがあれば無理に思いださなくてもいいのさ。

え?

なに深紅の薔薇だろ。その薔薇はちゃんと知っている、同じく君を懐かしんでいる、それでいいんだ。

ごちそうさま、を言う前にサッと器をさげる店主。

その瞬間、僕はまた雨がふりそうな外を部屋から見ていた。

クコの実が歯茎に挟まっている。

そして部屋の隅に咲いていた赤深い薔薇は散っていた。

 

 

 

 

 

 

コメント