銀河のサンマ

何でもあり

春のペペロンチーノ

2023-02-06 | 銀河食堂

 

 

立春にはいり、どんよりし始め明日からは雨が続くらしい。

寒いので、しっかり半ちゃんを羽織っているボクはクシャミをする。

節分から風邪をひいたり治ったりを繰り返している。

けれど気分転換に、珍しくボクが料理をしようと台所へ立っている。

春が待ち遠しいので菜の花と筍でペペロンチーノをつくるのだ。

ペペロンチーノはママンの味を思いだしてつくるので、頭は十分、昔の記憶を辿っている。

さてニンニクをみじん切りにする。

隣町で作られたジャンボニンニクを使用している。

なかなかの手際じゃないか、とボクは嬉しくなり少し寒さを忘れていた。

母のペペロンチーノは菜の花もなにも入ってなかった。

ただ、ペペロンチーノというのがあるらしくて習ってきたよ、と夕食にでてきて初めて口にしたの覚えている。

何だか具もなくて不思議だね、これが流行っているんだ…と家族がいつしか無言になって食べ終わったことを覚えている。

あの頃はナポリタンがメインスパゲティというもので、

その後にミートスパゲティというソースの缶が美味しいらしい、と聞いて買い始めた頃くらいである。

それからそれからボクは社会人になりペペロンチーノをお店で食べた。

その時は母のつくった事なんて覚えてもいなかった。

だがお店で食べて、ペペロンチーノって具材がない!と心の叫びが小さく漏れたのは覚えている。

きっと貧乏性なのだろう、ペペロンチーノと具材の入ったパスタを値段的に比べてしまう。

だからそれからも余りボクはペペロンチーノを口にすることはなかったと思う。

ボクが母にペペロンチーノをつくってもらったというのを思い出したのは、つい数日前にことである。

さてボクは具ありのペペロンチーノをつくる。

筍の水煮、菜の花、ボクの食べたい春を一足早めに食べるんだ。

熱いオリーブオイルにニンニクと唐辛子を入れ香りつけ

パスタと一緒に湯がいた菜の花をザッと入れサッと炒めてスルンと皿に盛る。

最後に黒コショウ…ちょっと多めにね、ママンの味は黒コショウが少なめだった。

当時は辛いのが苦手な家族だったから、唐辛子も黒コショウも少なくて十分だったのだ。

急げ、香ばしくそそる春のペペロンチーノを食べるんだ。

よっし、食べるぞっ!

一礼し「いっただっき…あ゛ーーーーー!!!」

「どれぐらいぶり?いただきます?では、私もいただきます♡」

ニッコリ笑う久しぶりの登場、銀河食堂の小料理風女将が目の前に。

「どうしたんですか、突然に。どうやって現れたのですか…」少しボクは腰がひけた。

「美味しそうな香りする方へ行ってみたら、ここだったの。何か?」

「……」

「さ、出来たてを食べないと♡お皿が春いっぱいね」と女将がニッコリ微笑みフォークを握った。

ふぅー。そう、いつもそうだ。こうなんだ。この女将はいつも無邪気な突然な人なんだ。

もう1本、フォークをとりながらボクは自分にこう言い聞かせ、改めてふたりで、いただきます、をした。

一口いれボクはそのまま女将をそっとうかがった。

「美味しいわ、すごいじゃない、つくるのね。えらいわ」と女将が微笑んで春のパスタを食べる。

良かった、とボクは何だか安心して二口目をゆっくり味わった。

菜の花の苦味が好き。筍の歯ごたえが絶妙に良い、そして黒コショウの量を除けばママンの味。

ボクは少し恥ずかしく呟いた。

「ママンの味にしたくって…」

「ママンの味?」と女将は不思議な顔をした瞬間

「ハ、ハ、ハ、ハッックショーーーーンっ!!」女将が突然クシャミした。

ボクはビックリした。

少しドキドキして「女将も風邪?」と尋ねる。

すると、鼻を手で覆った女将はとんでもない!という表情で首を横へふり

「何これ辛いわよー!コショウ多くない!?これ、これ…ハっクショーン!!」

2度目のクシャミした女将が顔を歪めて春のパスタをみつめ、みるみる涙目になってゆく。

ボクは慌てて後ろにあったテッシュをとろうと女将に背を向けた。

すると小さく籠った声で「もう、なによ…ママンの味じゃないじゃない…一足早めの春を…」

「え?」

ボクはテッシュを持って振り返ると女将はそこに居なかった。

女将?ボクは部屋を見渡したが女将がいたという気配すらない。

フォークも1つしかテーブルにない。

そのフォークでボクは少し冷めかかったペペロンチーノを食べる。

ボクはいつから黒コショウ多めでも平気になったんだろう。

皿の奥へ目をやるとコップに一輪の満開の菜の花が入っている。

その日のニュースで今川の菜の花が満開という映像が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

※ 夕食

 

 

 

※ 昨日、朝。

 3匹、炬燵の前の私べったり争奪戦のため私は足を入れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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