これは想定に過ぎないが・・・。
【隅田川】と言う能がある。子供をかどわかされた母親が、その跡を追って旅する内に悲しみの余り狂ってしまう。そして墨田川の渡しまで来た。人々は狂女を見ようとやって来る。
彼女はそこで死んだ愛児【熊王丸】の亡霊に会う、と言う物語である。既に幽冥境を異にする母と子の悲しみに人々はその深い慟哭を読み取って感慨に打たれる。
その後、今度は狂言が始まる。【鬼瓦】・・・公事(訴訟)の事があって都に上ったさる国の大名、首尾よく事が運んで明日はいよいよ国元へ向けて出立と言う日、せっかくだからと都見物に出る。ある名刹の山門を潜った、大名はふと目を上げて凍り付いた。見れば大粒の涙があふれている。びっくり仰天した太郎冠者が聴く、【殿、いかがなされまいたか?】。『あれを見よ、あの鬼瓦を見よ、明日からはまたあの鬼瓦(妻女)の下に戻らねばならぬ』とさめざめと泣いた。
こういう能・狂言を生み出した日本人とは甚だ以て侮りがたい民族であると思う。
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