月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

吃音克服

2011年05月17日 21時46分02秒 | 仏々相念(住職日記)

伝えるべきものがある・・・

 

映画「イギリス国王のスピーチ」をご存知ですか?

すいません、私は全く知らず、今日の新聞の投稿で知ったことです。

話の内容から一度見てみたい映画です。

 

この映画の主人公は第二次世界大戦直前のイギリス国王ジョージ6世(エリザベス女王の父)の物語だそうです。

彼は吃音に苦しみ演説は恐怖だったとか・・・

この吃音克服のために言語療法士と歩まれる、そんな話なのだとか・・・

 

もの凄く興味があります、どうやって克服していくのでしょうか?

辛かったと思います・・・国民の前でのスピーチ。

本当によく分かります。

吃音である私も辛いですもん。

ベラベラ喋れる人を羨ましく思うほどです。

 

一番酷かった小学生時代・・・

読みが当たる度に純情な少年の心は傷ついていきました。

「なんで当てるの!読めないの分かってるじゃん!どこまで笑いものにするのか!」って、

最初の言葉が出るまで、いや、詰まる言葉を自分が聞きながら、思っていた・・・悔しかったな~

 

私には言語療法士はいません。

でも、阿弥陀さまがいてくださいました。

幼き少年の心の中には、「阿弥陀さま、どうぞ治して下さい。辛いんです、悔しいんです、恥かしいんです・・・」

そんな気持ちを持ちながらのお勤めだったのでしょう・・・

一人で座る本堂には誰もいません、立ち向かうは優しいお顔の阿弥陀さま・・・

「こ、こ、こ、こ、こ・う・げ・んぎぎ・・・」

どんだけ詰まろうとも恥かしくはありません、でも、やっぱり悔しくて・・・

毎日続けたな~・・・治したくて!

 

阿弥陀さまは、病気を治して下さる仏さまではありません。

少年の私の行為は真宗の教義からは外れたものになっていたのでしょう・・・

でも、この行為を誰が咎めることができるのでしょう・・・「そんなことをしてはダメだ!」って。

あの時の思いの中に「仏恩報謝」なんてものがある訳はないのです、

あるのは、辛さ・悔しさ・恥かしさ・・・「なんとかしてください、仏さま・・・」

その思いの中で「讃仏偈」を称えていました。

 

ご縁いただいて、後で気付くのです・・・

あの時、一緒に泣いていてくれたんですね・・・

一緒に・・・

 

未だに詰まります。

もの凄く辛いですけど、「このことお伝えしなくては・・・!」って思いで座らせていただいています。

 

一緒にいてくれるって、温かいですよね!

だから、安心して病んでいける・・・

 

阿弥陀さま・・・ありがとう。


慈愛之眼

2011年05月17日 20時24分50秒 | 仏々相念(住職日記)

あっけないですね・・・

 

数十年連れ添ってきたご主人が往生なされました。

八十数歳の人生はどうだったんでしょう・・・

 

物静かで、穏やかで、優しい雰囲気のお方でした。

子どもさんがおられないのでいつもお二人で居られたように思います。

仲のいいご夫妻でした。

 

やっぱり若い時にはご苦労なされ、ガンバって来られたことをお話しくだされた。

ひたむきにガンバって・・・

時にはけんかすることもありましたよ・・・

いたずらに年を重ねるのではなくお互いを認め合うような歩みだったのかもしれません。

 

突然、その日が来ました・・・

倒れたご主人は数日の入院で儚く今生の命尽きられます。

その日も奥さんを案じられるのです、

家に帰ってお風呂でも入って少し休んで・・・ジェスチャーを交えながらおっしゃったとのこと。

姉妹に看病を任せ帰宅している間に往生なされるのです。

「年齢に不足はありませんが、あと2,3年はゆっくりボツボツと楽しみましょうねって言ってたところでした。あまりにもあっけなくて・・・」

「いいご夫婦でしたね・・・」

 

「夫婦」ってことを思いながらご縁に会わせていただいていました。

苦しくて辛いことの沢山の人生、時には自分一人で押し潰されそうになる。

「こんな苦しい思いをして、オレが守ってやっているんだ」って、浅はかな感情に当たってしまう・・・

気が晴れるどころか重たくなるばかりなのに・・・傷つけてしまう。

言ってもどうしようもないこと、よく分かっているのにイライラして・・・

 

なのに、支えてくださる。

どうしてあげることもできないジレンマを抱えながらも、やっぱりここにいてくれて・・・

歩みを共にして下さる。

このはたらきにいつ頃気付いていくのでしょう・・・

これまでよく一緒にいてくれたねって。

 

病床で奥さんを気遣うご主人のお話しを聞きながら、こうありたいな~・・・

少しでも余裕があれば、ひょっとしたら言えるかもしれません、

でも、もがき苦しむ様な時に妻を、子どもを案じるどころか当り散らしている自分が見えてしようがないのです。

愛する人を悲しませたくはないのです・・・

「ありがとう」いっぱい言いたいのですが・・・

 

愛する人より大切な自分が見えてしようがありません。