
山田悠介、幻冬文庫、2004年。時は西暦三〇〇〇年、国王は突然、全国五百万人の”佐藤”と名のつく者の殺戮を命じます。期間は一週間。主人公の佐藤翼の目の前で父や親友が殺されていきます。絶滅者たる”鬼”から、必死に逃げる主人公は同時に、幼い頃に生き別れた妹を探すたびに出ます。行き詰まる”追いかけっこ”。翼は、妹を見つけ出し、また理不尽なゲームから生き延びることができるのでしょうか。
着想も奇抜で、かつ全編を貫く疾走感も、読むことの楽しさを実感させてくれます。理不尽なゲーム設定を、あからさまにしすぎることで不条理感が半減されていても、なお面白さがあります。しかしながら、物語の前半部分において特に顕著な、文章の拙さにぶつかるたびに、ストーリーに魅力的な部分がある分、残念に思います。「改訂版」となっていますので、おそらく文章が手直しされているのでしょうが、それでも、あまりに紋切り型な言い回しは鼻につきます。
初出は文芸社から、自費出版というかたちで上梓されたようです。一般的な文芸誌に掲載される場合、編集者とのやりとりのなかで、文章は鍛えられるのでしょうが、そこが端折られたまま著者はデビューを果たしたようです。自費出版という形態は、作者側が費用を負担するシステムから、会社側のリスクの少ないままに驚異的な数の自社ブランド書籍の出版を可能にします。返本制度の下においては、刊行点数が多いほど、出版社の運転資金は回転するのですから、現在の出版流通システムを逆手に取った手法と言えるでしょう。
ところが一方で、文芸としての文章レベルに達しない出版物が多く流通する、あるいは出版費用とその後の宣伝をめぐってトラブルが絶えないなどの、問題を抱え込みがちです。新たな作家を発掘し、新しいスタイルの出版形態といわれた自費出版も、新風舍の倒産によって曲がり角に達したと見るべきでしょう。山田悠介は、その後二十冊ほどの物語を世に出しているようです。最新刊でどのような文章を書いているのか興味があります。
着想も奇抜で、かつ全編を貫く疾走感も、読むことの楽しさを実感させてくれます。理不尽なゲーム設定を、あからさまにしすぎることで不条理感が半減されていても、なお面白さがあります。しかしながら、物語の前半部分において特に顕著な、文章の拙さにぶつかるたびに、ストーリーに魅力的な部分がある分、残念に思います。「改訂版」となっていますので、おそらく文章が手直しされているのでしょうが、それでも、あまりに紋切り型な言い回しは鼻につきます。
初出は文芸社から、自費出版というかたちで上梓されたようです。一般的な文芸誌に掲載される場合、編集者とのやりとりのなかで、文章は鍛えられるのでしょうが、そこが端折られたまま著者はデビューを果たしたようです。自費出版という形態は、作者側が費用を負担するシステムから、会社側のリスクの少ないままに驚異的な数の自社ブランド書籍の出版を可能にします。返本制度の下においては、刊行点数が多いほど、出版社の運転資金は回転するのですから、現在の出版流通システムを逆手に取った手法と言えるでしょう。
ところが一方で、文芸としての文章レベルに達しない出版物が多く流通する、あるいは出版費用とその後の宣伝をめぐってトラブルが絶えないなどの、問題を抱え込みがちです。新たな作家を発掘し、新しいスタイルの出版形態といわれた自費出版も、新風舍の倒産によって曲がり角に達したと見るべきでしょう。山田悠介は、その後二十冊ほどの物語を世に出しているようです。最新刊でどのような文章を書いているのか興味があります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます