草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

田口ランディ「キュア」

2024-02-02 06:57:13 | 読書記録

田口ランディ 「キュア」cure

 若き外科医斐川(ひかわ)竜介は、医療現場で日々癌と戦っている。彼は人の精神回路にアクセスすることができる能力を隠しもっており、メス通じてがん細胞がどこにあるのかわかるのだ。それゆえ人は彼を「ゴット・ハンド」と呼ぶ。

 だが大学病院での彼の身分は院生なので、給料も出ない。五時間を超える手術が週三度はあり、その上夜間のバイトのかけ持ちをしている。体力だけは自信があったのだが、この頃なんだかおかしい。

 やがて彼は自分が肝臓がんで余命一年であることを知った。

 指導教授の井沢は、頭は切れるがオペは下手だ。人間の臓器を触る感性のようなものがない。

 今切れば5年は延命できると言われるが、かたくなに手術を拒否する患者

 体中に癌が転移し余命宣告されても、まだ手術を望む若き実業家。

 斐川を支えるリストカットの少女キョウコ。

「先生も私と同じ人間だから」と言いて斐川に接近してきた看護師白井

 同じ研修医の増田は「待っています」と言って、次の配属先である内科の癌病棟に去った。

 その他にもスピリチュアルのカリスマ。新生児室のアイちゃん。斐川の祖母ちゃん。そして彼にすがる多くのがん患者たち……。

 彼らとの出会いを通して、斐川は自分の治療方法を模索していく。

 

 田口ランディは好きな作家で、過去にも何冊か読んだことがある。強く惹かれて一気に読んでしまった記憶があるのだが。はて、どんな内容だったか?

 図書館の本棚にはまだたくさんの田口作品がある。ハマってしまいそうだ。しかし読んだ端から忘れて行っては困る。今後はしっかりと読書記録を残していきたい。

 

 明日は節分だ。これから豆と魔よけ飾りを買いに行く。すでに年の数だけの豆は食べきれない年齢になって久しいが、一個十年の勘定で食べれば何とか行けそうだ。

 明日は恵方巻を食べるので、今日は鰯を焼こうか。さて昔の魔よけ飾りは、柊に焼いた鰯の頭をさして豆がらと一緒に小さな束になっていたが、先日見たの飾りには鰯の頭はついてなかった。やはり生ものはやめた方がいいだろう。

 今日からまた寒くなった。風邪ををひかないように暖かくして早寝しよう。


恒川光太郎「雷の季節の終わりに」

2023-07-14 08:33:32 | 読書記録

恒川光太郎 雷の季節の終わりに

 ただ暑さを避けるために通っている図書館で、偶然見つけた本である。前もっての知識もなければ、申し訳ないが作者も知らなかった。

 現世から離れて存在する異世界穏(おん)には、四季の他にもう一つ雷季と言われる季節がある。激しい雷が何日も続き、人々はその間雨戸を締め切り家にこもるのだった。

 そんなある年の雷季の夜、幼い賢也はたった一人の身寄りだった姉を何もかに連れ去られた。以来隣の家の老夫婦の庇護を受けながら、一人で暮らしている。

 孤独な賢也にとって、少年のような少女穂高と体の大きな少年凌雲はかけがえのない友だった。しかし賢也にはその友さえも知らない、大きな秘密を抱えていた。

 それは姉が連れ去れた時だった。風わいわいに憑かれたのだった。

 賢也が小学五年生になった夏のことだった。ヒナという若い娘が不可解な失踪を遂げた。ある日賢也はヒナが穂高の兄のナギヒサに殺されたことを知った。おかげでナギヒサに殺されそうになったが、賢也にとりついた風わいわいが出現して助かったのだ。だがナギヒサ深い傷を負わせてしまった。もうじきナギヒサは死ぬだろう。

 このままでは賢也はナギヒサ殺しの罪で捕らえ始末されるだろう。もう逃げるしかない。わずかな食料と小刀を持って賢也は穏の地を出た。

 途中で追手と戦い、賢也を追って来た穂高と一緒に東京にたどりつくことができたのだが。そこで待ち受けていたのは……。

 と物語はこんな感じで続いていくのだ。ファンタジーホラーというジャンルだそうだ。

 それにしても暑い。外は体温を越えているようだ。この猛暑の中クールシェアしようと多くの人が図書館を訪れていた。熱心に本を読む人、居眠りをする人。人それぞれであるが誰もが口を閉じて、外の猛暑をやり過ごそうとしているようだ。どことなく家に閉じこもり雷季をやり過ごす穏の人々に似ている。

 ちょっと固めのソファーに腰を下ろし、異次元の不思議な物語の世界にしばし身を置いた。だがどうやら私も風わいわいに憑かれたのかしれない。読み終えた本を棚に戻すと、隣にあった恒川氏の本をまた手に取っていのだ。


瀧羽麻子「松ノ内家の居候」

2023-04-19 16:00:14 | 読書記録

「松ノ内家の居候」(草むしり家の家宝)

 久しぶりの読書だった。ここしばらくあらすじを書くのが目的の読書だったので、純粋に本を読むだけという読書は新鮮だった。

 「松ノ内家の居候」瀧羽 麻子著

 松ノ内家は昔、一人の小説家が居候をしていたことがあった。小説家はその後大家とよばれるになり、著書の中には中学校の教科書に載ったり、ノーベル賞の候補になったりもした。その年は生誕百年になり、亡くなってから十年の節目にあたる。

 ある日小説家の孫と名乗る青年がやってきて、松ノ内家に小説家の未発表原稿が隠されていると告げた。原稿には一億の価値があり、権利は松ノ内家ある。そこで原稿探しがはじまったのだが……。

 以外にもすぐに原稿は出てきた。しかも結末が異なったものが二部出てきたのだ。さてどちらを小説家の作品とするか……。またそれを世に出していいものかどうか……。松ノ内家で話し合いがもたれたのだ……。

 テレビの刑事ドラマみたいな殺人や不倫もなかった。最後はすがすがしい気持ちになって本を閉じた。

 ちょっと気になるのは居候の話。実は我が家は昔、居候ではないが、偉い人を匿っていた。という話を聞いたことがあった。その話は父だけではなく、二人の叔父達からも聞かされていたので、どうも本当の話のようだ。

 以前我が家は母屋だけではなく薪小屋や味噌部屋もあったと記したが、戦前その偉い人は警察の目を逃れて、味噌部屋の中に隠れていたという。その偉い人は思想犯だったのだ。時代的には父はまだ子供だったので、父の祖父か父親がかくまったのだろう。

 さてその味噌部屋は母屋とは別棟の風呂の裏にあり、味噌のにおいがする狭くて寒い部屋だった。こんな所にどうやって隠れていたのだろうかと、子供心に思っていた。

 味噌部屋は私が中学生の時に、風呂を壊して建て替えたついでに壊した。やがて偉い人の話も次第に口にのぼることもなくなった。

 それから長い月日が経ち、祖父が住んでいた隠居と呼ばれる、これも母屋とは別棟の家を壊した時のことだった。二階の部屋の畳の下一面に、何か難しい計算をした紙が敷き詰めてあった。母はすぐにそれが例の偉い人が書いたもとを分かったようだ。昔父からその紙のことは聞いていたのだ。

 それにしてもすごい量だ。あの偉い人は味噌部屋でこんな勉強をしていたのだ。警察の目を逃れての味噌部屋生活はつらく苦しいものだったのではと思っていたが、案外あの人にとっては好きな勉強ができる楽しい時間だったのかもしれない。

 母は畳の下から出てきたその紙を、ある場所にしまった。そして私にだけそのことを言い置いた。父から母に、母から娘に、草むしりン家(ち)の宝物のありかはこうして言い伝えられた。