草むしりしながら

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草むしりの「箭竹」

2019-02-22 16:21:04 | 平成
草むしりの「箭竹」
 
 山本周五郎の「日本婦道記」の主人公の女性たちは、多くを語ることなく日々の暮らしぶりが、周囲の人間を感動させる。とりわけ配偶者である夫には、大きな感動を与えている。その中にあって「箭竹」のみよの生き方は、彼女を取り巻く多くの人たちに、そして将軍にまでも感動を与えている。
 
 みよが息子の安之介を背負い、照り返しの河原を歩いて消えていく情景が目に浮かぶ。下僕の六兵衛の目には、ゆらゆらと揺れるかげろうの中にみよがみえたであろう。しかし私には熱く燃え立つようなかげろうが、みよの決心の象徴のように思えた。
 
 さて2011年の大学生の就職内定率は68,8パーセントと過去最低のものだった。そんな中でからくも内定を勝ち取った息子であったが……。意気揚々と帰省すると思っていたら、まるで人生が終わった人のように私の前に現れた。厳しい現実との闘いだったようだ。

 「これからが、本当の勝負ですよ」とみよを気取った私の言葉に、彼は素直に「はい」と答えた。今から八年ほど前の思い出である。

2011年2月文章講座