芋名月
秋は月がきれいですね。中秋の名月と言われる満月は、別命芋名月とも言われるそうですね。ススキや団子と一緒に里芋の新芋を供えるそうです。思い浮かべてください。満月に里芋。絵になりますね。
しかし教養もないし風流も解さない私などは、芋と聞くとさつま芋の方を思い浮かべてしまいます。名月にさつま芋?クスッと笑ってしまいますね。
今日は芋名月にちなんだ、とっておきの草むしりの幼年時代の話をしましょう。
私の父は子煩悩な人で、寝る前にはよく昔ばなしをしてくれました。この話はある満月の晩に、父が話してくれたことです。
十五夜お月さんの晩にはね、夜中に海からタコ(蛸)があがってきて、畑のイモを掘っていくんだよ。だからその日はみんな早く寝て、夜中に外に出ていたりしてはいけないんだよ。蛸が芋を掘れなくなるからね。という話でした。
蛸が芋を掘るなんて。考えただけでも笑ってしまいますね。芋畑に行って蛸が芋を掘るのを見てみたいと思ったのですが、芋畑に行っては決して行ってはいけないと言われて、おとなしく寝たのを覚えています。
蛸が掘る芋もきっとさつま芋だと、その時私は思いました。満月の晩さつま芋を抱えて海に逃げ込む蛸の姿を、想像しただけで笑ってしまいますね。
ところがこの話には続きがありました。かれこれ二十数年前に地元の漁師さんから聞いた話です。満月の晩蛸が芋を掘るところまでは一緒でしたが、その後がちがいます。
その晩夜中に子どもたちだけで、よその畑に芋を盗みに行ったというのです。満月の晩の芋盗人の犯人は蛸なのだから、見つかっても蛸の真似をすれば怒られないのだとか。そんな馬鹿な!
私ら山の方の子どもがおとなしく寝ているあいだに、海の方の子どもは蛸の真似をして、芋を盗みに行っていたなんて。本当でしょうか。もう大笑ですね。
さて今年の十五夜は九月二十九日ですね。晴れるといいですね。