「あと一輪たりず」
桜の花の開花発表の基準は「5~6輪以上の花が咲いた状態」だそうですね。昨日(3月28日)の靖国神社の境内にある桜の標準木には、4輪しか咲いていませんでした。お待ちかねの開花宣言は、29日以降に持ち越されましたね。
果たして今日は開花宣言があるのでしょうか?咲いたからって日常生活が大きく変わるわけはないのですが、それでも待ち遠しいですね。それにつけても「5~6輪以上咲いた状態」なんて条件が付いているのは知りませんでした。
さて開花宣言の待たれる中、一昨日(3月27日)になりますが、私は末娘母娘と上野動物園に行ってきました。この日は久しぶりに晴れましたね。暖かくなるのかと思ったら、意外に寒くて風が冷たかったです。いったん外に出たのですが、引返して上着を羽織って出直して正解でした。
「桜はまだだし、平日なので少しは空いているかも」なんてことはまったくありませんでした。さすが上野公園ですね。いつ来ても人がいっぱいですね。とりわけ海外からの観光客が多かったですね。
ただ本来ならば桜が満開のはずなのに、今年はまだまだです。桜の時期に合わせてやって来る人も、多くいるのではないでしょうか?なんだか気の毒になりました。
「どこかに一輪でも咲いていないかしら?」
そこで私は一本の木の下で、咲いている花を探してみました。すると咲いていました。太い幹の真ん中あたりから出た爪楊枝くらいの細い枝に一輪。また幹から直接出ている蕾の中にも一輪。よく見れば春はもう来ていたのですね。
娘は道に迷ったとかで、約束の時間になってなかなか現れませんでした。その間ずっとその桜の木の下で待っていました。多くの観光客が残念そうに通り過ぎ、何語かは分からないいろんな言葉が聞こえてきます。
そこに観光客らしい女性が苦笑をしながら、私の立っている桜の木にスマホをむけました。きっと満開の桜の花を写したかったのでしょうね。私は邪魔にならないように横によけて「どうか桜の花に気づきますように」と願っていました。でも気づかずに行ってしまいました。
ああ、残念!どうして声をかけなかったのでしょうか……。何でもいいじゃないですか、知っている言葉を並べて桜の花を指させば、分ってもらえたのかも知れません。それなのに私は恥ずかしくて声なんかかけられなかったのです。こうゆう性格なのですね私は……。
以前家族でニューヨークに行ったことがあります。その時もそうでした。朝食後ホテルのロビーでエレベーターを待っていた時でした。同じホテルの宿泊客に話かけられました。
「こんちわ、ありがとう、はじめまして……」
彼は知っている限りの日本語で、楽しそうに話かけて来ました。それに対して私は何と言って答えていいのか分からす、困ったように微笑むだけでした。でも彼の方はそんな私にお構いなく、どんどん話しかけてきます。やがてエレベーターのドアが開きました。
「はば、ないすでぃ!」
私はそれだけやっと言えて、エレベーターに飛び込むと手を振りました。すると彼は正確には彼一家は、手を振って答えてくれました。あの時は嬉しかったです。
「ああ、今私はニューヨークにいるのだって」思いました。今思えば、一番の思い出かも知れません。だから一昨日も思い切って話かけてみればよかったですね。
「ヘイ マダム! ルック ルック!サクラフラワー」なんてね。身振り手振りを添えてね。
できたらよかったのですが、あと一輪分勇気が足りませんでした。残念!