草むしりしながら

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草むしりの得意料理 その1

2019-02-02 17:08:01 | 草むしりの得意料理
草むしりの得意料理 その1

コロッケ
 
 コロッケを始めて食べたのは小学校五年か六年の時だった。近所のヨーコちゃんというお姉さんが揚げたてのコロッケを一つくれ、作り方を教えてくれた。材料は家にある物で、ひき肉がなければ魚肉ソーセージでもいいと言われ、早速家に帰って作ってみることにした。

 今考えると小学校五年やそこらで、よくそんな手間のかかることが出来たと思う。たぶん途中から母か姉に手伝ってもらったのだろう。その辺のところはよく覚えていないが、以来コロッケは私の得意料理になった。

 平皿に盛られたキツネ色のコロッケのなんとお洒落なことか。ふだん菜っ葉と豆腐ばかりの食卓が、その時ばかりは華やいで見えた。父は「上手いものだな」と言うと、普段は全くしない晩酌を始めた。

 母は「すり鉢でジャイモを潰さなくても」と小言を言った。今ならば湯がいた鍋の中でジャイモを潰すのだが、その時は言われた意味が分からなかった。 

 自分だって白和えや山芋のとろろ汁を作るときは、すりこ木とすり鉢を使っているじゃないか。すりこ木はすり鉢の相棒なのだから、ジャガイモをすりこ木でつぶす時には、すり鉢の中でつぶすのが筋ではないか。

 すりこ木とすり鉢が相棒だなんて……。その時思ったかどうかは怪しいが、私が何かするとすぐ文句をいうと思ったのは確かだ。しかし「なぜそれがいけないのか」などと疑問に思ったことを素直に聞きもせず、ふてくされて黙って食べた。

 初めて作ったコロッケの味は正直言って覚えていないのだが、ほんの少しだけ反抗期のほろ苦い味がしたような気がする。