草むしりしながら

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古事記あらすじ21

2019-12-08 19:53:55 | 古事記
内田英雄文 古事記あらすじ21

第七章天孫降臨

㈣なまこの口

 邇邇藝命のおくだりという大きなしごとも一応終わりました。そこで道案内務めた猿田毘古命を伊勢の国に返すことになりました。 

  邇邇藝命は宇受売命をお呼びになり、猿田毘古の名を最初に聞き出したので、これからはそなたを猿女(さるめ)と呼ぶことにしようと仰せになり、猿女に猿田毘古命を本国まで送って行くようにと命じられました。

 今では猿女君(さるめのきみ)と呼ばれるようになった宇受売命が、猿田毘古命をお送りする途中、阿邪訶(あざか)というところに来た時です。海に入った猿田毘古が大きな貝に手を挟まれ、危うく死にそうになりました。
 
 猿女君は海の中の動物に、邇邇藝命にお仕えする気はあるのかと聞きました。魚たちはみんなお仕えしますと答えたのですが、なまこだけが返事をしません。猿女君はなまこをとらえて、この口があまりに小さので、返事が出来ないのであろうと、小刀でなまこ口を切り開いてやりました。

 それで今でもなまこの口は、切り裂いたようになっているといいます。

㈥邇邇藝命の結婚

 それから数年たち邇邇藝命は立派な青年に成長されました。ある日笠沙の御崎を歩いておいでになると、美しい姫君にお会いになられました。姫はこの国の神で大山積見神(おおやまつみのかみ)の娘で木花佐久夜毘売(このはなさくやびめ)と申しました。

 命は早速父親の大山津見神の所に結婚の申し込みのお使いを出しました。大山津見神は喜んでたくさんの贈り物をととのえて、姉君の石長比売(いわながびめ)も一緒に命の元に差し上げました。
 
ところがこの石長比売は背は低く、色は黒で二目とは見られないような顔をしておいででした。そこで命は姉の方を返しておしまいになりました。
 
 姉の石長比売を差し上げたのは、天の神のみ子が岩のように丈夫で長生きするように。妹の木花佐久夜毘売を差し上げたのは、桜の花が咲き誇るようにお栄になるようにと思って差し上げたのです。 佐久夜毘女だけをおとどめなされたのだから、み子こお命は桜のようにはかなくなるに違いないと、大山津見神は嘆きました。
 
 それから後は神の御子孫である天皇のお命も、普通の人間と同じになってしまわれました。

㈦皇子誕生

 数か月後のある日、木花佐久夜毘女は邇邇藝命に「私は子どもを産む時がまいりました。この子は神の子でございますから、皆の者にはっきりと知らせたい」と仰いました。

 「確かにあまりに早く生まれるので、変に思う者があるかもしれぬ。天の神の子であることを知らせてやるがよい」と邇邇藝命は仰せられました。

 早速窓もない産屋が建てられました。木花佐久夜毘女は自分がこの中に入ったら、戸を閉め切って外から火をつけるように。わたくしの生む子が天の神の子ならば、火の中でも平気です」と言って産屋に入りました。

 仰せに従って人々は火をつけました。火の燃え盛るときにお生まれになったのが、
火照命(ほでりのみこと)。火が少し弱くなった時にお生まれになったのが、火遠理命(ひおりのみこと)です。

 笠沙の宮はきさきやみ子を加え、次第に賑やかになって行きました。

古事記あらすじ20

2019-12-08 06:57:46 | 古事記
内田英雄文 古事記あらすじ20

第七章天孫降臨

㈢輝く目

 お供の神々も揃いご出発も間近にせまったとき、突然下界のほうに金色の光が輝いているのが見えました。空の道の四つつじに、怪しい一人の神が立ちはだかっています。
 
 普通の二倍はあろうという背の高さです。顔は真っ赤で鼻は高く、目は金色で眩しい光が輝いています。だれもあの神の正体をただしてくるものがおりません。そこで天照大御神は天宇受売命に、あの神の元に行き、どのような考えでそこに立っているのかただしてくるように仰せられました。

 天宇受売命は相手の目を見ながらにこにこ笑いました。相手の神はますます顔を赤くして、大きな目玉から金色の光を出し、天宇受売命を射すくめようとします。しかし天宇受売命はその光を受けとめて立っています。やがて相手の神は光をやわらげ、いさぎよく自分の負けを認めました。

 神は猿田毘古(さるたびこ)と名乗り、「邇邇藝命さまの道案内を申し上げようと、お待ちしていたのです」と、謹んで答えました。
 
 下界に天下るにつけ、どうしても必要な道案内の神でした。力強い味方を得て、大御神さまもお喜びになり、ご安心なさいました。

㈣三種の神器

 いよいよ出発の日です。天照大御神は邇邇藝命をお呼びになり、ご自身で鏡、勾玉、剣の三つの宝物をお渡しなりました。

 第一は八尺鏡(やたのかがみ) 大御神の魂がこもっています。鏡を見て私のことを思い出して下さい。そして思金神には、そなたはいつもこの鏡を傍に置いて邇邇藝命に私の心を伝え、日本の政治を正しく行えるようにお助け申し上げるようにと、仰せになりました。
 
 第二は八尺勾玉(やたのまがたま)。私が天の岩戸に籠った時に私を呼び出すために作られて玉です。いつの身近に置いておくように。
 
 第三は叢雲剣(むらくものつるぎ)。須佐之男命が八俣のおろちを退治した時に、手に入れた剣です。これを見て正しいことをやり遂げる勇気をふるいおこして下さい。と仰せになりました。
 
 この三つの宝物は三種の神器いって、いまでも天皇陛下のみ位のしるしとして受け継がれています。
 
 支度が揃いました。いよいよおくだりです。猿田毘古命が案内に立ちました。天忍日命と天津久米命が先払いしながら進みます。一行は日本の最も南の筑紫の国、日向の高千穂の「くじふるたけ」という高い山の頂上に無事お着きになりました。そしてここから笠沙(かささ)の御前(みさき)というところにお着きになり、都をここに定められました。

古事記あらすじ19

2019-12-07 06:42:11 | 古事記
内田英雄文古事 あらすじ19

第七章 天孫降臨(てんそんこうりん)

㈠邇邇藝命(ににぎのみこと)

 大国主命が出雲の国をはじめ多くの国をお譲りになりました。しかしあれからもう十一年が経ってしまい、天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)は二人のお子様が生まれておいでになりました。
 
 そこで新しい国には新しい若い神をとのお考えから、まだほんの少年である二番目のお子さまの、邇邇藝命がおくだしになることになりました。すぐに命は天下りの支度をなるために、天の岩戸におこもりになりました。
 
 岩戸のとびらは閉まられたままです。天宇受売命(あめのうずめのみこと)とびらの前でお守りしています。そこに天児屋命(あまのこやねのみこと)がやってきて小さな声で「まだお出ましにならないか」と聞きました。

 邇邇藝命は岩戸の中で、心を鍛えておいでなのです。今は何よりも静かにすることです。近いうちにそのすがすがしい姿をお見せになることでしょう。高天原の神々はその時を待っていました。
 
 やがて天の岩戸のとびらが開いて、邇邇藝命が姿を現しました。今では大御神さまの御心を受け継ぎ、若さと力が満ちておいでです。

㈡お供の神々

 高天原の全ての神々が、お供して下界に行きたいと申します。そこで次のことを考えてお供を選ぶことになさいました。
 
 第一には、邇邇藝命は大御神さまの御名代として、日本の国の主としておくだりする。
 第二は、何処に下って行くかははっきりしない。本当に大御神さまの御名代になるには、多くのことに打ち勝たなければならない。
 第三に日本の国を平和にするには、何百年何千年かかるか分からい。その間に命様をお助け申し上げる覚悟が無ければならない。
 
 だからこそお供をしたいと神々は仰せになりますが、そんなにたくさんはいりません。お供は大御神さまに決めていただきました。
 
 お供の神々がきまりました。あの天の岩戸の前でのりとを唱えた天児屋命(あまのこやねのみこと)。さかきを捧げた布刀玉命(ふとたまのみこと)。舞をまった天宇受売命(あまうずめのみこと)。鏡を作った伊斯許理度売(いしこりどめのみこと)。勾玉を作った玉祖命(たまのおやのみこと)。

 みなお祭りに関係ある五柱(いつはしら)の神々で、五伴緒(いつもとお)といって、この神々は多くの部下を率いてお供なることになりました。
 
 また知恵の神である思金神(おもいかねがみ)。力の神である、手力男神(てぢからおのかみ)。み門の神である石門別神(いわとわけのかみ)をお加えになり、さらに一行をお守りするために、天忍日命(あまおしひのみこと)と天津久米命(あまつくめのみこと)をおつけになりました。

古事記あらすじ18②

2019-12-06 07:48:02 | 古事記
内田英雄文 古事記あらすじ18②

第6章国譲り

㈦力比べ

 建御名方命は相手の神の姿を見つけると、大きな岩を高く持ち上げて投げつけました。ことろが岩は相手まで届かずに落ちてしまいました。相手の神は鼻先で笑っています。

 ならば今度は相撲だ。命が相手の腕をつかむと、相手の腕は氷の柱になってつかむことが出来ません。さすがの建御名方命も手の出しようが無くまごついています。

 「今度はわしの番だ」相手の神は、いとも簡単に命を投げ飛ばしてしまいました。命は相手の腰に組み付いたのですが、力が全く抜けてしまい、まるで大人と子供の相撲のように何度も投げ飛ばされてしまいました。

 あまりのひどさに建御名方命は、一応逃げておいて力が戻ったら仕返しをしようと考え、その場から走って逃げました。それを見た相手の神が追いかけてきます。建御名方命は力の続く限り、走りに走りました。

㈧洲羽海(すわのうみ)のほとり
 
 命は逃げに逃げて辿り着いた先は洲羽海(すわのうみ)のほとりでした。岸の草の上に腰をおろししばらく休んでおりました。目の前の湖は水をたえ、何もかもが平和で静かな景色です。
 
 命は何もかも忘れて、うっとりとあたりの景色に見とれておりました。兄上や母上父上のことを思い出しておりましたが、急ににこにこ笑われ、ひだをはたと打つと「あれは高天原の神に違いない」と仰せになりました。
 
 その時あの神の足音が聞こえてきました。そして「もう逃がしはせぬぞっ」と怒鳴る神に「逃げも手向いもしませぬ、あなたは高天原の神ですね」と申しました。
 
 相手の神は「高天原の使者、建御雷神だ」と名乗り、自分が遣わせられた理由を述べました。「お前の父上も兄上もこころよく国を譲ることを承知したのに、お前だけが手向いするとは何事だ」建御雷神の言葉に「知らなかったからです。もともとは天照大神様の治めたもう国、私もこの国を喜んでお返しいたしましょう」と答えました。

 それからふた柱の神はがっしりと組合い、力比べを致しました。互いに力を出しつくして争いましたが、なかなか勝負はつきません。最後には二人とも疲れて草の上に座り込みいつまでも笑いあっておりました。

 建御雷神は茨城県の鹿島神宮に、建御名方命は長野県諏訪湖のほとりの諏訪大社にお祭されています。

 天照大御神は大国主命のために大きな神社をたて、いつまでもりっぱなお祭りを続けるようにとご命令になりました。出雲大社が、その神社です。




古事記あらすじ18①

2019-12-05 07:32:07 | 古事記
内田英雄文 古事記あらすじ18①

第六章国譲り

㈤お諏訪(すわ)様

 大国主命には多くのお子さまがありました。その中で特に優れているのは、のちに恵比寿さまと呼ばれる事代主命(ことしろにしのみこと)とその弟で、お諏訪さまと呼ばれる建御名方命(たけみなかたのみこと)でした。

 ある時大国主命はお二人をお呼びになって、一生懸命私の仕事を手伝ってくれるので、何か褒美を取らせようと仰せになりました。

 すると元気者の建御名方命は日本一強い力を、事代主命は知恵が欲しいと仰いました。大国主命は満足そうに微笑んで、そなたたちが毎日働いているうちに、その力がつくようにしてあげようと、仰せられました。
 
 しかしその後真面目な顔になり、もし高天原の神々に逆らうようなら、その力も知恵もたちまち消えてしまうぞ。と仰せられました。数年後お二人は望み通りになっていました。
 
 御兄さまの事代主命は素晴らしい知恵を身につけ、なんでもひと言で解決してしまう、一言主命(ひとことぬしのみこと)と人々にあがめられるようになりました。建御名方命はたくましい力を用いて、人々のためになる仕事をなさいました。

㈥一大事

 今日も今日とて建御名方命は、一人で山の中に入って働いておいででした。そこに召使が息せきって走ってきました。

 その日はいい天気で伊佐那の浜には大勢に人が出ていました。するとはるか沖合から鳥の形をした美しい小舟が近づいて来ました、舳先には強そうな一人の神様が、こちらをにらんでいます。見知らぬ神様は岸につくと「大国主命を呼んで来い」と叫びました。
 
 やがて大国主命がおいでになり、見知らぬ神と二人で何なら話し込んでおられます。このときお兄上様は小舟を浮かべて、一人静かに釣りをしておいででした。

 すると見知らぬ神は、今度はお兄上様の方に行き何か話しあいました。お兄上様は丁寧にお辞儀をなさいました。するとお乗りになっていた小舟にみるみる柴が生えだし、お兄様の御姿をかくしてしまい、海の向こうのほうに行って見えなくなったと、いうのです。

 これを聞いた建御名方命は、急いで浜辺に下っておいでになりました。