内田英雄文 古事記あらすじ 17
第六章国譲り
㈢きじのお使い
いっぽう高天原では天若日子の帰りを今か今かと待ちわびていました。なにしろ天菩比神を使わしてから十一年も経っています。そこで「泣女(なまめ)のきじ」をやってようすを探らせることにしました。
泣女のきじは早速下界に飛んで行くと、天若日子家の前の木にとまり、ケンケンと早口でわめきたてました。これを聞きつけたのが、天佐具売(あまさぐめ)という意地悪ばあさんでした。
天佐具売は天若日子の所に走っていき、門前で鳴いているきじを射殺してくれと言いました。天若日子はきじの言葉をよく聞きもしないで、高天原の宝物の弓矢を放ちました。矢はきじの胸を射抜きそのまま天へ飛び立ちました。天若日子は大得意になりました。
さてきじを射抜いた矢はそのままずんずん飛び続け、高天原の高木神(たかぎのかみ)の足元に落ちました。その矢は天羽羽矢に間違いなく、白い羽根は、真っ赤な血で染まっています。いったいこれはどうゆうことだろうか。
そこで矢が地面に明けた穴から下に落としてみました。もし天若日子が悪い心をおこしたならば、この矢に当って死ぬはずです。そして矢は天若日子の胸板に、ぐさりと突き刺さってしまいました。
天若日子の妻の下照比売の悲しい泣き声が、高天原まで聞こえてきました。天若日子の父親の国玉神やお母様や兄弟たちは出雲に下ってきて、葬式のための準備をしました。
この時、国玉神は弔いに来た高日子根(たかひこね)神を、天若日子と見間違えてしまいました。死人と間違えられ怒った高日子根神は喪屋を切り倒してしまいました。結局天若日子は死んだのちまでも、お弔いをしてもらえませんでした。
㈣建御雷神(たけみかづちのかみ)
高天原ではまたまた会議が開かれ、今度は強い神様を選ぶことになりました。選ばれたのは建御雷神(たけみかづちのかみ)という高天原でも一、二を争う強いかみさまです。
建御雷神は天鳥船(あまのとりぶね)に乗りこみ、稲妻のような勢いで、出雲の国を目指して飛び下っていきました。