16品(良医の譬え②)
その父が来るのを見。
また、歓喜しているのを推察し。
質問し病気を治すことを求めたけれど。
しかし、その薬を与えたところ。
しかして、頑固に服用しない。
その所の者は誰。
毒気が深くはいり。
本心を失っている故。
人が実際に好む。
色香りの薬。
しかして、美味でないと思った。
父はこの考察を行った。
このこは可哀想である。
毒のために当てられている。
こころ皆、転び倒れる。
推察するに我を見て喜び。
救済、療養の手を求め。
このごとき薬を好む。
しかして、頑固服用しない。
我、今、当に方便を施す。
この薬を服用させるため。
即、この言葉を実行した。
汝らは当に知る。
我、今、老衰している。
死ぬときに至っている。
この好む良薬を。
今、ここに留めておく。
汝は取って服用することが出来る。
差別なく憂いている。
この教えを実行してから。
また、他国に至った。
使いを遣わして告げた。
汝ら父は死んだ。
この時、もろもろの子は。
父に背いて喪失したのを聞いて。
こころは大いに憂い悩んだ。
しかして、この思いは作用した。
もし、父がこの場に居る人なら。
我らを等しく慈愛し。
良く救護するのを見る。
今、我を捨てた者である。
他国で遠く喪失している。
自ら考えてみると。
孤児であって頼りにする者がいない。
常に懐(なつ)かしみ悲観した。
こころ遂に悟った。
ないし、この薬を知る。
色香り美味にして。
即、是を服用した。
毒病、皆、治癒した。
その父は子のことを聞き。
差別なく救えた事を知った。
尋ね便りをだし帰り来た。
このことを見ることが出来た。
もろもろの善男子。
そのこころは何。
つづく