うえぽんの「たぬき鍋」

日々のつれづれ、野球ネタ、バカ話など、何でもありの闇鍋的世界?

うえぽん版「お葬式」第5話・「通夜・ウチってこんなに親類いたっけ?」

2005-03-17 23:55:55 | 雑記
(『うえぽん版「お葬式」・第4話「怪しい三人組、桃色地帯を右往左往する」』の続き)

午後2時に家を出て斎場へ行くと、式場の準備はほとんど整っていた。たくさんの花に囲まれる祖父の遺影。おじいちゃん、立派な祭壇ができたよ。
しかし、よく見ると問題があった。母の名前の花がないのだ。ダンナ(私の父ね)の名前だけ書いてある。それとは逆に伯母夫婦の花は、喪主であるヒロコおばさんの名前だけで、ヒロシおじさんの名前がない。これはまずいだろうと思うのだが、今さらどうにもならない話である。
ちなみに、祭壇の右下にある白いかたまりは、我ら孫一同(4人)の供物である。花が予想より多く来ることになったため、急遽フルーツ詰め合わせになったのだった。

5時過ぎに、棺の中の祖父の旅支度をし(足袋や脚絆を身に付けさせる)、愛用の品などを収めた。本来なら、納棺と同時にやるのだが、今回は衛生上の問題もあって葬儀屋が先に納棺を済ませてしまっており、順序が前後したのである。
三途の川を渡るための六文銭は、「紙幣」であることを初めて知った。銭6枚を印刷した紙を持たせるのだ。へぇへぇへぇ。確かに、本物の硬貨を入れたらまずいしね。
お気に入りだった服を2着、トレードマークのハンチングも2つ。得意だった折り紙、愛用の辞書、ものを書くのが好きだったから筆記用具。そして、忘れちゃいけない大好物のお酒(パック入り)も枕元に。しかし、もう一つ入れるべきブツを、母は持ってくるのを忘れた。それは、
セ○ンイレブンで売っている、1個105円のシュークリーム(笑)。
晩年の祖父は、なぜかこれをこよなく愛した。他の店の高いヤツを持っていっても「やっぱりあのシュークリームの方がおいしい」だって。だから、翌日の告別式には忘れずに持っていくぞ。

孫をはじめ、親族の写った写真も一緒に収めた。これに関しては私の父が
「そんな話聞いたことない!生きている人の写真を焼くなんて、縁起でもない!」
と前の晩に力説したのだが、母は聞く耳を持たず持ってきた。収まらぬ父は、準備に来ていた双子の弟・タケオおじさんに「おかしいよなぁ!?」と同意を求めたが、タケオおじさんは、
「え?オレ、おふくろ(私の祖母)が死んだ時、お棺に写真入れたけど、別にいいんじゃないの?」
とバッサリ。父、「あ、そうなの…?」と、すっかり意気消沈。昨日の勢いはどうした父!
まったくもう。この人いつもこうなんです。そのくせ、あくまで負けを認めようとしないんです。これで我々すごく苦労してるんです。普段は気配り上手なのに、なんで変なところで意地張るんでしょう。
母も負けを認めたがらないクチなので、ケンカになると父は母に「もっと素直になれよ!」としょっちゅう怒るのだが、「そりゃアンタもだよ」とツッコみたいのを毎回こらえる私である。

通夜の時間近くになると、親類が続々とやってくる。が、誰が誰だかほとんどわからない。特に、ヒロシおじさん方の親類などは、初めて見る顔ばかりだ。もっとも、こういう時ぐらいしか一堂に会する機会などないから、当然と言えば当然である。
かわいい赤ちゃんも一人いた。私の従兄弟(ターちゃん・トーゴちゃん)のそのまた従妹の息子で(ややこしいな)、名前はトムくん。ハーフではない。漢字では「登夢」と書く。まわりは知らない人ばかりなのに、物怖じすることなくニコニコと笑っている。子供嫌いの私もつい頬が緩み、あまつさえ写真まで撮ってしまった。

通夜の間は一応受付をやっているのだが、密葬だから親類以外誰も来やしない。かといって、お留守にするわけにもいかないので、一緒に受付にいた妹やタケオおじさんとヒソヒソ話をしながら暇を潰していたら、読経が終わった時点でお通夜も終わってしまった。密葬ならではの芸当である。
その後は精進落としで飲み食いだ。ここぞとばかりに親類に次々と挨拶する。母や伯母が互いを紹介してくれるのだが、未だに顔と名前が一致しない。お葬式終了後に記念写真でも撮らねばならん。

8時半頃に解散。昔のお通夜は線香を一晩中絶やさずにしたり、式場にそのまま泊まったりすることが普通であったが、最近はそういうこともあまりないようだ。線香も火事の危険性があるから消してしまう。それでも、ここの斎場にはお泊まり用のシャワー室なんてあったりするから侮れない。

帰る前にもう一度、棺の窓を開けてみた。昨日よりも「死体顔」の祖父がいる。一度は閉じた口が再び開きはじめ、右目は半開きで白目をむいている。亡くなった翌日が、一番顔がいい具合に締まってハンサムだったのに、もうこんなのおじいちゃんじゃない…(涙)。ここまで人相が変わってしまうと「早く焼いて、お墓で待っている祖母のもとへ行かせてあげたいなぁ」というような気になってきた。

明日は、祖父との本当のお別れの日。

(以下次号)