乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

『身毒丸 』 折口信夫  23 彼の聨想が、ふと一つの考へに行き当つた時に、跳ね起された石の下から、水が涌き出したやうに、懐しいが、しかし、せつない心地が漲つて出た。

2024-09-09 | 民俗学、柳田國男、赤松啓介、宮田登、折口信夫

『身毒丸 』 折口信夫  23 の聨想が、ふと一つの考へに行き当つた時に、跳ね起された石の下から、水が涌き出したやうに、懐しいが、しかし、せつない心地が漲つて出た。

 

 





   「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
   1954(昭和29)年11月
   「折口信夫全集 27」中央公論社
   1997(平成9)年5月

 


 身毒の再寝は、肱枕が崩れたので、ふつゝりと覚めた。

 床を出て、縁の柱にもたれて、幾度も其顔を浮べて見た。

 

 どうも見覚えのある顔である。

 唯、何時か逢うたことのある顔である。

 

 身毒があれかこれかと考へてゐるうちに、其顔は、段々霞が消えたやうに薄れて行つた。

 

 の聨想が、ふと一つの考へに行き当つた時に、跳ね起された石の下から、水が涌き出したやうに、懐しいが、しかし、せつない心地が漲つて出た。

 

 さうして深く/\その心地の中に沈んで行つた。

 

 山の下からさつさらさらさと簓の音が揃うて響いて来た。

 鞨鼓の音が続いて聞え出した。

 

 身毒は、延び上つて見た。

 併し其辺は、山陰になつてゐると見えて、其らしい姿は見えない。

 鞨鼓の音が急になつて来た。

 

 身毒は立ち上つた。

 かうしてはゐられないといふ気が胸をついて来たのである。





 
『身毒丸 』 折口信夫  1  信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。

『身毒丸 』 折口信夫  2  此頃になつて、それは、遠い昔の夢の断れ片(はし)の様にも思はれ出した。  / 父の背

『身毒丸 』 折口信夫  3  父及び身毒の身には、先祖から持ち伝へた病気がある。  身毒も法師になつて、浄い生活を送れ」

『身毒丸 』 折口信夫  4   身毒は、細面に、女のやうな柔らかな眉で、口は少し大きいが、赤い脣から漏れる歯は、貝殻のやうに美しかつた。

『身毒丸 』 折口信夫  5  あれはわしが剃つたのだ。たつた一人、若衆で交つてゐるのも、目障りだからなう。

『身毒丸 』 折口信夫  6  身毒は、うつけた目を睜(せい)つて、遥かな大空から落ちかゝつて来るかと思はれる、自分の声に ほれ/″\としてゐた。

『身毒丸 』 折口信夫  7  芸道のため、第一は御仏の為ぢや。心を断つ斧だと思へ。かういつて、龍女成仏品といふ一巻を手渡した。

『身毒丸 』 折口信夫  8  ちよつとでもそちの目に浮んだが最後、真倒様だ。否でも片羽にならねばならぬ。神宮寺の道心達の修業も、こちとらの修業も理は一つだ。

『身毒丸 』 折口信夫  9  放散してゐた意識が明らかに集中して来ると、師匠の心持ちが我心に流れ込む様に感ぜられて来る。あれだけの心労をさせるのも、自分の科だと考へられた。

『身毒丸 』 折口信夫  10  accident

『身毒丸 』 折口信夫  11  そのどろ/\と蕩けた毒血を吸ふ、自身の姿があさましく目にちらついた。

『身毒丸 』 折口信夫  12  住吉の神の御田に、五月処女の笠の動く、五月の青空の下を、二十人あまりの菅笠に黒い腰衣を着けた姿が、ゆら/\と陽炎うて、一行は旅に上つた

『身毒丸 』 折口信夫  13  其処は、非御家人の隠れ里といつた富裕な郷であつた。瓜生野の一座は、その郷士の家で手あついもてなしを受けた。

『身毒丸 』 折口信夫  14  accident

『身毒丸 』 折口信夫  15  氷上で育てた弟子のうちにも、さういふ風に、房主になりたい/\言ひづめで、とゞのつまりが、蓮池へはまつて死んだ男があつたといふぜ。

『身毒丸 』 折口信夫  16  おまへらは、なんともないのかい、住吉へ還らんでも、かうしてゐても、おんなじ旅だもの。

「身毒丸」 折口信夫  17  田楽法師は、高足や刀玉見事に出来さいすりや、仏さまへの御奉公は十分に出来てるんぢや、と師匠が言はしつたぞ。

『身毒丸 』 折口信夫  18  頼んで来ても伝授さつしやらなんだ師匠が、われだけにや伝へられた揺拍子を持ち込みや、春日あたりでは大喜びで、一返に脇役者ぐらゐにや、とり立てゝくれるぢやろ。

『身毒丸 』 折口信夫  19  分別男や身毒の予期した語は、その脣からは洩れないで、劬る様な語が、身毒のさゝくれ立つた心持ちを和げた。

『身毒丸 』 折口信夫  20  あけの日は、東が白みかけると、あちらでもこちらでも蝉が鳴き立てた。昨日の暑さで、一晩のうちに生れたのだらう、と話しあうた。

『身毒丸 』 折口信夫  21  彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。

『身毒丸 』 折口信夫  22  彼は花の上にくづれ伏して、大きい声をあげて泣いた。すると、物音がしたので、ふつと仰むくと、窓は頭の上にあつた。

『身毒丸 』 折口信夫  23 彼の聨想が、ふと一つの考へに行き当つた時に、跳ね起された石の下から、水が涌き出したやうに、懐しいが、しかし、せつない心地が漲つて出た。

  了

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『身毒丸 』 折口信夫  22  彼は花の上にくづれ伏して、大きい声をあげて泣いた。すると、物音がしたので、ふつと仰むくと、窓は頭の上にあつた。

2024-09-09 | 民俗学、柳田國男、赤松啓介、宮田登、折口信夫

『身毒丸 』 折口信夫  22  彼は花の上にくづれ伏して、大きい声をあげて泣いた。すると、物音がしたので、ふつと仰むくと、窓は頭の上にあつた。

 

 





   「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
   1954(昭和29)年11月
   「折口信夫全集 27」中央公論社
   1997(平成9)年5月


 一つの森に出た。

 確かに見覚えのある森である。

 

 この山口にかゝつた時に、おつかなびつくりであるいてゐたのは、此道であつた。

 けれども山だけが、依然として囲んでゐる。

 

 後戻りをするのだと思ひながら行くと、一つの土居に行きあたつた。

 其について廻ると、柴折門があつた。

 

 人懐しさに、無上に這入りたくなつて中に入り込んだ。

 庭には白い花が一ぱいに咲いてゐる。

 

 小菊とも思はれ、茨なんかの花のやうにも見えた。

 つひ目の前に見える櫛形の窓の処まで、いくら歩いても歩きつかない。

 

 半時もあるいたけれど、窓への距離は、もと通りで、後も前も、白い花で埋れて了うた様に見えた。

 

 は花の上にくづれ伏して、大きい声をあげて泣いた。

 すると、物音がしたので、ふつと仰むくと、窓は頭の上にあつた。

 

 さうして、其中から、くつきりと一つの顔が浮き出てゐた。



 
『身毒丸 』 折口信夫  1  信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。

『身毒丸 』 折口信夫  2  此頃になつて、それは、遠い昔の夢の断れ片(はし)の様にも思はれ出した。  / 父の背

『身毒丸 』 折口信夫  3  父及び身毒の身には、先祖から持ち伝へた病気がある。  身毒も法師になつて、浄い生活を送れ」

『身毒丸 』 折口信夫  4   身毒は、細面に、女のやうな柔らかな眉で、口は少し大きいが、赤い脣から漏れる歯は、貝殻のやうに美しかつた。

『身毒丸 』 折口信夫  5  あれはわしが剃つたのだ。たつた一人、若衆で交つてゐるのも、目障りだからなう。

『身毒丸 』 折口信夫  6  身毒は、うつけた目を睜(せい)つて、遥かな大空から落ちかゝつて来るかと思はれる、自分の声に ほれ/″\としてゐた。

『身毒丸 』 折口信夫  7  芸道のため、第一は御仏の為ぢや。心を断つ斧だと思へ。かういつて、龍女成仏品といふ一巻を手渡した。

『身毒丸 』 折口信夫  8  ちよつとでもそちの目に浮んだが最後、真倒様だ。否でも片羽にならねばならぬ。神宮寺の道心達の修業も、こちとらの修業も理は一つだ。

『身毒丸 』 折口信夫  9  放散してゐた意識が明らかに集中して来ると、師匠の心持ちが我心に流れ込む様に感ぜられて来る。あれだけの心労をさせるのも、自分の科だと考へられた。

『身毒丸 』 折口信夫  10  accident

『身毒丸 』 折口信夫  11  そのどろ/\と蕩けた毒血を吸ふ、自身の姿があさましく目にちらついた。

『身毒丸 』 折口信夫  12  住吉の神の御田に、五月処女の笠の動く、五月の青空の下を、二十人あまりの菅笠に黒い腰衣を着けた姿が、ゆら/\と陽炎うて、一行は旅に上つた

『身毒丸 』 折口信夫  13  其処は、非御家人の隠れ里といつた富裕な郷であつた。瓜生野の一座は、その郷士の家で手あついもてなしを受けた。

『身毒丸 』 折口信夫  14  accident

『身毒丸 』 折口信夫  15  氷上で育てた弟子のうちにも、さういふ風に、房主になりたい/\言ひづめで、とゞのつまりが、蓮池へはまつて死んだ男があつたといふぜ。

『身毒丸 』 折口信夫  16  おまへらは、なんともないのかい、住吉へ還らんでも、かうしてゐても、おんなじ旅だもの。

「身毒丸」 折口信夫  17  田楽法師は、高足や刀玉見事に出来さいすりや、仏さまへの御奉公は十分に出来てるんぢや、と師匠が言はしつたぞ。

『身毒丸 』 折口信夫  18  頼んで来ても伝授さつしやらなんだ師匠が、われだけにや伝へられた揺拍子を持ち込みや、春日あたりでは大喜びで、一返に脇役者ぐらゐにや、とり立てゝくれるぢやろ。

『身毒丸 』 折口信夫  19  分別男や身毒の予期した語は、その脣からは洩れないで、劬る様な語が、身毒のさゝくれ立つた心持ちを和げた。

『身毒丸 』 折口信夫  20  あけの日は、東が白みかけると、あちらでもこちらでも蝉が鳴き立てた。昨日の暑さで、一晩のうちに生れたのだらう、と話しあうた。

『身毒丸 』 折口信夫  21  彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。

『身毒丸 』 折口信夫  22  彼は花の上にくづれ伏して、大きい声をあげて泣いた。すると、物音がしたので、ふつと仰むくと、窓は頭の上にあつた。

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『身毒丸 』 折口信夫  21  彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。

2024-09-09 | 民俗学、柳田國男、赤松啓介、宮田登、折口信夫

『身毒丸 』 折口信夫  21  彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。

 

 





   「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
   1954(昭和29)年11月
   「折口信夫全集 27」中央公論社
   1997(平成9)年5月





 一行が遠い窪田に着いた頃、ぽつちりと目をあいた身毒は、すまぬ事をしたと思うて床から這ひ出した。

 

 衣装をつけて鞨鼓を腰に纏うてゐた時、急にふら/\と仰様にのめつたのである。

 鼻血に汚れた頬を拭うてやりながら、師匠は、も暫らく寝て居れと言うた。

 

 身毒は、一夜睡ることが出来なかつたのである。今の間に見た夢は、昨夜の続きであつた。

 

 高い山の間を上つてゐた。道が尽きてふりかへると、来た方は密生した林が塞いでゐる。

 

 更に高い峯が崩れかゝり相に、の前と両側に聳えてゐる。

 

 時間は朝とも思はれる。

 又日中の様にも考へられぬでもない。

 

 笹藪が深く茂つてゐて、近い処を見渡すことが出来ない。

 流れる水はないが、あたり一体にしとつてゐる。

 

 歩みを止めると、急に恐しい静けさが身に薄セマつて来る。

 は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。



 
『身毒丸 』 折口信夫  1  信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。

『身毒丸 』 折口信夫  2  此頃になつて、それは、遠い昔の夢の断れ片(はし)の様にも思はれ出した。  / 父の背

『身毒丸 』 折口信夫  3  父及び身毒の身には、先祖から持ち伝へた病気がある。  身毒も法師になつて、浄い生活を送れ」

『身毒丸 』 折口信夫  4   身毒は、細面に、女のやうな柔らかな眉で、口は少し大きいが、赤い脣から漏れる歯は、貝殻のやうに美しかつた。

『身毒丸 』 折口信夫  5  あれはわしが剃つたのだ。たつた一人、若衆で交つてゐるのも、目障りだからなう。

『身毒丸 』 折口信夫  6  身毒は、うつけた目を睜(せい)つて、遥かな大空から落ちかゝつて来るかと思はれる、自分の声に ほれ/″\としてゐた。

『身毒丸 』 折口信夫  7  芸道のため、第一は御仏の為ぢや。心を断つ斧だと思へ。かういつて、龍女成仏品といふ一巻を手渡した。

『身毒丸 』 折口信夫  8  ちよつとでもそちの目に浮んだが最後、真倒様だ。否でも片羽にならねばならぬ。神宮寺の道心達の修業も、こちとらの修業も理は一つだ。

『身毒丸 』 折口信夫  9  放散してゐた意識が明らかに集中して来ると、師匠の心持ちが我心に流れ込む様に感ぜられて来る。あれだけの心労をさせるのも、自分の科だと考へられた。

『身毒丸 』 折口信夫  10  accident

『身毒丸 』 折口信夫  11  そのどろ/\と蕩けた毒血を吸ふ、自身の姿があさましく目にちらついた。

『身毒丸 』 折口信夫  12  住吉の神の御田に、五月処女の笠の動く、五月の青空の下を、二十人あまりの菅笠に黒い腰衣を着けた姿が、ゆら/\と陽炎うて、一行は旅に上つた

『身毒丸 』 折口信夫  13  其処は、非御家人の隠れ里といつた富裕な郷であつた。瓜生野の一座は、その郷士の家で手あついもてなしを受けた。

『身毒丸 』 折口信夫  14  accident

『身毒丸 』 折口信夫  15  氷上で育てた弟子のうちにも、さういふ風に、房主になりたい/\言ひづめで、とゞのつまりが、蓮池へはまつて死んだ男があつたといふぜ。

『身毒丸 』 折口信夫  16  おまへらは、なんともないのかい、住吉へ還らんでも、かうしてゐても、おんなじ旅だもの。

「身毒丸」 折口信夫  17  田楽法師は、高足や刀玉見事に出来さいすりや、仏さまへの御奉公は十分に出来てるんぢや、と師匠が言はしつたぞ。

『身毒丸 』 折口信夫  18  頼んで来ても伝授さつしやらなんだ師匠が、われだけにや伝へられた揺拍子を持ち込みや、春日あたりでは大喜びで、一返に脇役者ぐらゐにや、とり立てゝくれるぢやろ。

『身毒丸 』 折口信夫  19  分別男や身毒の予期した語は、その脣からは洩れないで、劬る様な語が、身毒のさゝくれ立つた心持ちを和げた。

『身毒丸 』 折口信夫  20  あけの日は、東が白みかけると、あちらでもこちらでも蝉が鳴き立てた。昨日の暑さで、一晩のうちに生れたのだらう、と話しあうた。

『身毒丸 』 折口信夫  21  彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。

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映画『自殺サークル』 2  2002年  監督:園子温 脚本:園子温 石橋凌 永瀬正敏 嘉門洋子 他

2024-09-09 | 映画

  映画『自殺サークル』 2  2002年  監督:園子温 脚本:園子温 石橋凌 永瀬正敏 嘉門洋子 他


 映画『自殺サークル』を再度、見る。

 


 前回の記録

映画『自殺サークル』  2002年  監督:園子温 脚本:園子温 石橋凌 永瀬正敏 嘉門洋子 他

で、

【映画の題名は『自殺サークル』なのに、いかにせん、話の流れでは何度も会話として【自殺クラブ】と出てくる。】

と、書いた。

 その意味が漠然と理解できた。

 園子温監督は、まったくもって形を変えての現在社会におけるドキュメントを作りたかったのだ。そのように感じた。

 

ここで疑問に思うのは、

【形を変えたドキュメント】

とは、何か?

 

 日本のどこぞのトップが考え、マスコミ全般を支配し、操作し、日本を動かしているのが現状である。

 例えば、ずいぶん前の事となるが、日本の政党が変わった時の事。

 前もっておぜん立てされ、政党が変わるとよいことが起こる、、、強いては、私は見なかったのだが、木村拓哉主演のドラマまで造られ放映された。

 そして国民の政党を変える意識を高めて、、政党は実際に変わった。

 

 昨今では次期天皇問題。

 これまでことごとく蹴落としていた某御人をことごとく神のように崇め奉り、一方をことごとく蹴落としての、民衆への意識操作。

 国民は神撫で考えを持っているように思っている者の、マスコミに大きく支配され、我々はそれによって動かされている。

 

 私は何もそれらが正しいとか、間違っていると云いたいのではない。

 一般の善良なる市民は、国の何らかの意図する創作によってわたくしたちの意識下まで入り込み、私たちの行動制限をしたり、考えを操作されていると云いたいのであり、園子温監督はそうい怖さを表現したかったに違いないと考えるのである。

 

 したがって、形を変えた意識操作、ひいては形を変えたドキュメントであるがために、映画の題名では『【自殺サークル】』とうたうが、映画の中でも詞(台詞)ではことごとく【自殺クラブ】というように違った言葉をもって使い分けされているのだと感じる。

 


「あなたは奥さんと関われていますか。」
「ああ(肯定)
「あなたは子供さんと関われていますか。」
「ああ(肯定)
「あなたはあなた自身と関われていますか。」
「ムムム、、、、、」
「あなたはあなた自身と関われているのですか。」
(青字、要約)

 

この映画の重要な場面は以前にも書いたように二ヶ所あった。

 

 一か所は、刑事の口にピストルを入れて自害する前。

 電話でのやたら咳払いした男の子の会話で、事態の深刻さと重要点を刑事は知った。

 

 また、二点目。

 以前は、コウモリと書いていたが、屋上から自殺した彼氏を持つ蝶の刺青の女性であり、コウモリは間違いであった。

 蝶の刺青の女性と、舞台上で子供たちとの問答は非常に重要な場面である。

 

 加えて三点目に充当な場面は、ところどころに顔を出すアイドル歌手グループのピーチ(?)

 自殺者が増えた、途中、

「もう、頑張れって感じです、、、」

 最後は潔く、

「ピーチは解散します。もう、勝手に生きろって感じです。」

で、事の終末を迎える。

 

 一度目にこの映画を見てすぐに、今現在禁止されているとされる、電波の周波数に紛れ込ませた暗号を何かしらの組織が流しているのではないかといった考えが浮かんだ。

 だが、今はそれは禁止されているし、そういったことが行われてないことと、私たちは信じるほかはない。

 だが、マスコミは電波や紙のばいかいを通してことごとく善良なる市民を支配し動かしている。

 そのことを気付いている民衆も多いが、やみくもに飛びつく人もまた多いのが自自地である。

 こういった本当の怖さは、さとう珠緒や宝生舞が出てきたときの、日本の怪談とはまた違った、現実の、現社会でのドキュメントととらえてよいであろう怖さを、監督は伝えたかったのだと感じた。

 

 映画の初めから出てくる多くの、無機質な表情をした、我々一般の善良なる市民が多く映し出される。

 この表現が上手い。

 この無表情に毎日の生活を送る民衆を描かずして、この映画は作れなかった。

 

 結局子供の言葉は、監督自身の言葉と考えて、おおむね間違いないであろうと感じる。

 したがって、深く掘り下げられていたこの映画は、私は好きです。

 

 ただし、これは私が見た感想であり、あくまでも他の方との考え方は違うと思います。

 私の見方が甘いのかもしれませんが、私の感想ですのでお許しください。

 





 最後になりましたが、この映画を教えて下さいました御方に心より御礼申し上げます。

 ありがとうございました。

 



自殺サークル

2002年

99分

監督
園子温
脚本
園子温

主題歌/挿入歌


出演者
石橋凌
永瀬正敏
さとう珠緒
宝生舞
佐藤二郎
ROLLY
嘉門洋子 他

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