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乱鳥の書きなぐり

永遠(towa)の語らい / Um Filme Falado 

永遠(towa)の語らい

   Um Filme Falado 






       満足度   ★★★★☆

       感動度   ★★☆☆☆








        2003年

        ポルトガル・フランス・イタリア 

        1時間35分

        監督・脚本・台詞  マノエル・ド・オリヴェイラ 

            キャスト  レオノール・シルヴェイラ
                  フィリパ・ド・アルメイダ
                  ジョン・マルコヴィッチ
                  カトリーヌ・ドヌーヴ
                  ステファニア・サンドレッリ
                  イレーネ・パパス     








 ポルトガル人の母子ローザ=マリア(レオノール・シルヴェイラ)とマリア=ジョアナ(フィリパ・ド・アルメイダ)は、パイロットであるローザ=マリアの夫と落ち合うボンベイに向かう。

 歴史学者のローザは自分の目で各地を確かめたい思いから、地中海を渡る船に乗った。
 
 ローザは停泊する各地で娘に史跡を丹念に説明。




 マルセイユでは夫と同じ名前の魚屋(ミシェル・ルプラノ・ディ・スブラリオーネ)と出会い、ポンペイでは噴火により埋もれた文明を観る。

 ポンペイでの世界一といわれるモザイクの『狂犬注意』は、後々の物語の導きともいえよう。

 アクロポリスでは演劇を研究するギリシア正教の神父(ニコス・ハツォプーロス)に導かれてアクロポリスやディオニソス劇場を巡った。

 マリア=ジョアナは母の言葉にじっと耳を傾け、素朴な疑問を投げかけてくる。まるで自らの知識を吸収させるように、ローザ=マリアはゆっくりとその言葉に応えていった。




 各地を訪れ、共通点が二点。

 全てが最後は破壊の一途をたどっていることと、ローザがポルトガル人であるがためにどこのヨーロッパにも所属せずに、孤独感を味わうがために優位な立場を保とうと、各人各国各ガイドを小ばかにした冷ややかなまなざし。







 そんな彼女の心理状態に気づいた船長。

 彼はアメリカ人であるジョン・ワレサ船長。

 ポルトガルである彼女を含めて、ヨーロッパをまとめようとする。





 晩餐のあと、は船長に声をかけられた。

 船長は片言のポルトガル語を使って挨拶し、娘は好感を持つ。

 全員異なる言語のヨーロッパ三女性の中にマリアを誘う。

 実業家はフランス語、元モデルははイタリア語を、女優兼歌手はギリシア語。

 マリアは「娘とふたりで過ごしたいから」とやんわりと断る。







 たまたまベンチにいた三人は少し見下した視線を彼女に投げかける。

 この映画では、ポルトガルの位置を明確に示す。

 





 船旅はヨーロッパを出てイスラム圏に差し掛かる。

 親子はここで始めて娘の服を買い、着替えさせる。

 一方船長は女のこのために人形を買い求める。

 親子と船長はバザールから言えば目と鼻の先であるはずなのに、ここでもすれ違いを起こす




 夕食の時、船長は子どもへのプレゼントといって、自分のテーブルに半ば強引に進める。

 人形を手渡され、喜ぶ女の子。

 家族に恵まれない三人はそんな親子を複雑な思い出みつめ語る。

 しかし地位も名誉もある彼女たちは、露骨ないやみは言わない。



 

 マリアはそんな彼女たちの気持ちも考えず、夫自慢などを話し出す。

 ただ、今までは各国言葉で自由に話し合っていた彼女たちは、マリア同席によって英語に変える。








 船長はその場の空気を察し、女優兼歌手でギリシア神の女性に、
「古い歌を…」
と勧める。

 女性はしんみりと歌う。

 唄い続ける…



 途中船員が船長に連絡に来る。

 女性はしんみりと唄い続ける…


 
 緊急事態の様子で、船長は席をはずす。

 女性はしんみりと唄い続ける…




 女の子だけがマリアに尋ねる。
「千兆三はどうしたの?」

 女性はしんみりと唄い続ける…




 そして…

 舟に時限爆弾が仕掛けられたことを知らされる。




 あわてる乗客。

 直ちに部屋に戻り、救命装置をつけ甲板に出て船から脱出するという支持が下される。



 親子も同様、救命装置をつけ甲板に出酔うとしていた。

 人ごみの中、女の子はみんなとは逆流して部屋に戻る。

 船長からもらった人形を忘れてしまい、そてをとりに行く為に…



 母のマリアは急がせる。

 急いで甲板に駆け上がって、二人は愕然とする。

 予備のみんなを乗せた船はすでに出た後…






 船長の顔のアップ。





 船長は、
「船を戻せ。」
「時間が間に合いません」



「飛び込め!飛び込むんだ!!!」
叫びながら、彼は海に飛び込もうとする。



 そして…

 本船は二人を乗せたまま爆発。




 船長の顔のアップ。

 ここで初めて、ジョン・マルコヴィッチ特有の表情で幕を閉じる。







 興味深いのは中立役の船長以外の顔はぼやかせて映さない。





 あくまでも<全てが最後には破壊の一途をたどった運命の諸国を訪れた、孤立したポルトガル人の親子の非運的立場。

 ふとしたことから大きな出来事(歴史)に巻き込まれた皮肉な運命の一線上の人間(親子)を描いた深い映画でした。

 ポルトガルとは日本人にはなじみがないほどに、ヨーロッパから閉ざされた位置にありました。
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