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乱鳥の書きなぐり

王は踊る / LE ROI DANSE


     王は踊る

      LE ROI DANSE







        満足度    ★★★★★

        感動度    ★★★☆☆

        俳優の素適度 ★★★★☆






        2000年  ベルギー・フランス・ドイツ

        原作   フィリップ・ボサン
                『リュリ、もしくは太陽の音楽家』より

        キャスト
            ブノワ・マジメル
            ボリス・テラル
            チェッキー・カリョ
            コレット・エマニュエル
            セシール・ボワ





 実話に基づいた作品。

 一見絢爛豪華だが、重厚へ気品があふれた秀作。





 バロック音楽に合わせて若い王がリュリの音楽に合わせて、美しく可憐に踊る。

 



 話はベッドに横たわるリュリの回想から始まります。

 年老いた彼は追うの来ない室内音楽を指揮し、居らダリを抑えきれずに、槍のような杖のような指揮棒で荒々しく床をつき、自分の足を刺してしまいます。

 彼は破傷風になり、足を切らねば死ぬと宣告されますが、
「この脚は嘔吐踊った大切な脚。切るわけにはいかない。」
と、周りを困らせます


 そしてここから、若き日の思い出のの回想が始まるのです。






 イタリア人のリュリは心底したい愛するフランスの国王であるルイ14世のために、志の高いバレエ音楽を創作。

 王もフランスの為また王たる威厳、自分が自分自身である人間らしさを保つためにリュリの曲に合わせて踊る。

 そのバロック音楽の調べは人間の血液の流れをやや早くしたテンポの良さで心地が良い。

 私はバロック音楽も好きな尾で、かなりリズム仁乗りながら、この映画を楽しんでいました。




 若き王のために合計3,000曲余の曲ををつくり、一生と彼の精神を尽くす。


 リュリの王に対する愛情、芸術に対する信念、しきたりや宗教の矛盾に対するジレンマを表に出せない苦悩、彼の根本的男色、彼のイタリア人であるが故のコンプレックスとフランスへの憧れ、フランス人のイタリアに対する差別感、解雇及びイタリア強制返還に対する恐怖、表面上婚礼を挙げた妻に対する愛情のなさに対しての後ろめたさ、モリエールとの共感と行き違い…


 彼の苦悩は王室に従事する限り付きまとうのですが、王と芸術に対する愛に支えられて、作曲を続ける。


 



 5歳で王になったルイは、実権を母親や宰相たちに握られ、形ばかりの王。

 ルイに与えられた喜びは、踊ることとギターを弾くくらいのこと。

 類はいつしかバレエや音楽といった芸術で、フランスをまとめようという野望に燃える。




 ダンスそのものはかなり上手いとはいいがたいシーンもわざと作られていましたが、気持ちの良い踊りでした。

 ダンス部分は吹き替えらしいのですが、完璧な踊りでないところがまた、心憎いですね。

 ルイを太陽のように崇めたたえてつくった作品は見事で、彼自身の存在に芸術性を感じる。
 全身を70年代のアングラ劇のように金粉を刷くし、まじめに正面を向いて踊る姿は美しい。





 一端王の心は離れるものの、リュイの芸術の説得力にほだされ、ルイはまた、芸術性を求めたフランスオペラを志します。


 その一方リュイからみるならば、芸術論や社会批判を目指し語り合っていたモリエールは、今では観客を笑わせるだけの堕落した舞台に成り下がった金儲け主義の彼を裏切り、真のフランス芸術を目指そうとします。








 モリエールは舞台の上で自分の信念に基づいて喜劇を続け、その舞台で喀血し、
「とうとうお迎えが来たようだ…」
と静かに息を引き取ります。


 その顔は自分の仕事を着実に置かれた立場でこなしてきたという満足感に満ちていたように思います。

 死に行くモリエールがこれほどまでに美しく感じたのは、彼の仕事の功績と、役者の演技力によるものではないのでしょうか…





 色々な回想にさいなまされて、場面はリュイの寝室に戻ります。





 彼は思い出深い足、また今となっては抜け殻と化した精神苦から開放されるべく、脚を切り落とすことを強引に拒んだようです。





 妻は駆けつけたオペラ歌手であり姪である愛人仁向かって、
「間に合ってよかった。さっきから、嘔吐、モリエールの名ばかりを読んでいるのよ。」
と悲しく伏せ目がちに伝えます。

 姪は、
「本当に愛してらっしゃったのですね。」

 妻は床を離れ、姪は彼の元に駆け寄ります。

 そして、彼は息を引き取ります。





 一方王は、最近ではリュイの音楽に足を運ばなくなっていたにもかかわらず、音楽が始まる定刻に、窓に向かってつぶやきます。

「今日は音楽は始まらないなぁ…」

 王は僕を連れていつものように録かを静かに立ち去ります。










 ここで忘れてはならないのが…

 リュイ役のボリス・テラル。

 中世のバロック音が訓作曲家役なのですが、彼がとてつもなく美しい。

 衣装とヘア・スタイルがとても似合っていました。

 昔の作曲家はカツラをかぶっていたようですが、モーツアルトにしても他の作曲家にしても、両脇がくるくるよ回っていて、まるで名古屋巻きの変形のようなヘアスタイルが多い。

 ところが…

 リュイのヘア・スタイルはまるで70年代前半のハード・ロックのアーティストのようなかっこよさ。

 ロンゲでくるくる細かいウエーブでまるでクイーンや83年のボンジョビをみているよう。

 目元もくるくるしていて、男前で愛くるしい。

 とてもかわいらしい彼に見入ってしまったのであります。
 
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