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乱鳥の書きなぐり

あしたは ひな祭【母、そして 京都のばら寿司とちらし寿司の違いを思う】



        ばら寿司



 わたしが幼かった頃、ひな祭の日には毎年ばら寿司を作ってくれた。

 干し椎茸を戻して甘く煮る。

 にんじんや高野豆腐も同様。

 かまぼこや薄焼きたまごや上の材料を細く薄く或は細かく刻む。

 ちりめんじゃこも用意。



 適当に味見しながら甘めの寿司飯を作り、干し椎茸やにんじんや高野豆腐の刻んだものを混ぜ合わす。

 甘い酢の香りは幸せのにおい。


 
 ばら寿司用につくったすし飯の上にたっぷりの薄焼き卵をのせる。

 ふかふかの干し草の上に寝転んでいるようで、母の愛を感じる。

 黄色に敷詰められた錦糸卵の上には、甘い椎茸。

 かまぼこや紅生姜をのせる。

 ここで、黄、黒、赤。

 最後に母はとっておきの緑を出してくる。

 最近はあまり見かけない瓶詰めのグリンピース。

 ひと粒ひと粒を大切そうに箸でつまむ母。

 色合いを考え、構図を整え、まるで絵を描いているように彼女は緑の粒をおいていた。

 案外母の幸せはこんなところにあったのかもしれない。




 不思議なことに母はちらし(寿司)と呼び、根っからの京都人の父は ばら寿司と呼んでいた。

 わたしは母のつくった寿司をばら寿司と呼び、仕出し屋他でいただくものはちらし(寿司)と読んでいた。




 ところで京都ではちらし寿司のことをばら寿司と呼ぶ。

 また、ばら寿司のことをちらし(寿司)ともいう。


 

 家庭でつくるばら寿司或はちらし寿司は上に書いたようようにすし飯に具を混ぜ込む。

 上にのせるのは錦糸卵や野菜、かまぼこなど。

 一般的には海鮮類をのせることは無い。

 市場や大衆食堂で頼むとやはり家庭でつくるようなばら寿司が出る。




 ところが仕出し屋さんでちらし寿司を頼むと、海鮮類がのっているのが普通。

 いわゆる東京風ちらし寿司という。

 東山などの古い寿司屋へいくとこの混乱を避けるために 京都風ちらし寿司と東京風ちらし寿司といった表示がされている場合もある。

 京都の人ならば、ばら寿司とちらし寿司という表示だけで、京都風ちらし寿司と東京風ちらし寿司の違いだとピンとくる。

 うどん屋におかれた小皿のばら寿司はばら寿司と表示された店とちらしと表示された店がある。

 今まで気にもとめなかったことだが、他府県に住み ふとこんなことを思い出した。

 あしたは ひな祭。



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