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花組芝居の畑野後ろにはリフォームの文字が・・・。パロディー劇になんとふさわしい光景かと感心することしきりなし。
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今回喪服姿で演じられた『盟三五大切』は斬新でしゃれていた。
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花組ヌーベル 第2回公演
『盟三五大切』(かみかけてさんごたいせつ)
花組芝居
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原作 四世鶴屋南北
脚色・演出=加納幸和
キャスト
加納幸和
山下禎啓
北沢洋
松原綾央
小林大介
美斉津恵友
谷山知宏
丸川敬之
+ ゲスト(現在の死人役)
私の好きな 花組芝居『盟三五大切』を観た。
この『盟三五大切』、忠臣蔵にあやかって作られた演目。いわば『盟三五大切』のパロディ。その『盟三五大切』をネオ歌舞伎にしちゃうというんだから楽しいじゃないかえ。いわばパロディパロディとも言えるかもね。
元々歌舞伎にはパロディものも多い。男を女に変えたり、これでもかこれでもかと忠臣蔵にこじつけた演目の多いこと。びっくらこんの塩昆布!(@@)!である。
期待に期待をかけ、舞台に挑む。
『現在版盟三五大切、受けてたとうやないかいなぁ・・・。』
てなものである。
ところがこれがなかなかのお味。よろしおました。一言一句がうまく表現され、私は小さな笑いのなみがこみ上げてきて、クック、クックと乱鳥ならず、山鳩状態。実に楽しい。
舞台はまず葬式の場。こりゃ、うまく考えたものだ。舞台を経済的にあげるのにはうってこい。おまけにノーメーク。懐かしい感じもする芝居でもある。色がアルレかえった世の中や芝居が多い中、モノクロ的な舞台はかえって斬新。『盟三五大切』の歌舞伎の衣装と喪服が重複し、舞台を奥深く重厚にする。
驚いたのは音楽。
トルコの『セマー』(旋回舞)の歌と音楽かと思いきや、韓国ミュージックだったようす。喪服姿に韓国古典音楽。異質空間を表現する際、パロディパロディにはふさわしい幕開け。
小万が腕の五大力を魅せる場万では、かわいくかわいく
「ご、だ、い、りきっ。」
っと繰り返される。また、彼女が自害するといい、小さなレンジに頭をつっこもうとする場面では、会場中、笑いの渦が巻き起こる。こういった笑いは平たくて皆に受けるんだなぁと痛感。
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今回私は感心いや感動した場面があった。多分 北沢洋さんという役者さんだろうか。小万の手で彼女と三五兵衛とのの赤子を殺させ、小万をもころした後の、源五兵衛(=実は 不破数右衛門/ふわかずえもん)の決め台詞。
本来歌舞伎ならば、
「げに いわれなきぃ~ ながめじゃぁのうぉう~。」
↑ ↓ ↑↑↑↑↑ ↓ →↑↑ ↓ ↑ ↓ →→
と抑揚をつけて決めるところを、花組芝居の北沢洋さんさんは、
「げにいわれなき ながめじゃのぅ。」
→→→→→→→ →→→→→→
と少し高めの声で無表情に、しかしながら肩を落とし余韻を残して演じられた。
これはうまい!一発くわされたこの感覚。役者の遊び心。これぞ、芝居の醍醐味。北沢洋さん、してやったりだったんだろうな!あっぱれ!!
「よ! 北沢洋!!」
と、私、心の中で大向こうともハンチョとも付かぬ掛け声。
歌舞伎役者でも時々こういった観客すかしの遊びをなさることがあるが、今回、観られるとは思いもよらなかった。
これが花組芝居かと、妙に感心する。
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ところで『盟三五大切』(鶴屋南北作)類似の 並木五瓶作『御大力恋(糸成)』(ごだいりきふうじこめ)という類似作品があるという。並木五瓶作の砲が早くに作られできも言いとのこと。この場合は腕に名入れするのではなく、三味線の裏に名を入れたという。久々に愛蔵書の『歌舞伎名作辞典』を引っ張りだして楽しんでいるとこのように記されていた。並木五瓶作『御大力恋(糸成)』(ごだいりきふうじこめ)は私はまだ観てない(と思う。)もし観ていても高校生の頃だったので、理解できてなかったと思う。(笑み)
『歌舞伎名作辞典』によると【五大力とは江戸時代では五大力菩薩信仰から、手紙の封じ目に各と他人の目に触れず先方に届くまじないで、ひいては操を立てる誓言として身につけるものに書いた】とのこと。大阪の曾根崎の五人切り事件をもとに縁切りものとして書かれた作品の奥の深さに、改めて『盟三五大切』の面白みを感じるのである。
ところで今回の花組芝居の『盟三五大切』を観た観客の評価は大きく二分されたようす。また、観る前の期待★四個は見終わってからでは★三個に変化していたことも興味深い。評価に低い方の感想を読んでいると、
衣装と化粧がいただけない。
おちゃらけに終わっている。
わからなかった。
などの理由らしい。ちなみに私は今回の芝居の評価は高い。満足のいく舞台だった。
ではなぜ全体に評価の低い感想が目だったのか。私は芝居の帰り、たまたまそれに関連する内容を友人と話し合い盛り上がっていた。パロディ劇に付いて話し合って楽しんでいたのだ。
パロディとは元の話を知っていてはじめて楽しめるというのではいけない。パロディ劇も独立して優れていなければならない。その作品一つを取り上げて優れた芝居は、元の芝居を知らずとも楽しめる。そういったできの良い作品が、今も古典歌舞伎として残っている。半可通の客だけが喜んで満足する芝居ではいけないのではないか。
花組芝居の『盟三五大切』を観劇後友人との話しはそういったところに落ち着いた感じでした。(笑み)
すこーんそこーん こめだんご
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