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乱鳥の書きなぐり

映画  『バベル (BABEL)』





         映画 『バベル (BABEL)』





 お気に入り度 ★★★★★ ★★★★★

 話の展開 ★★★★★ ★★★★★

 映像 ★★★★★ ★★★★★

 音楽 ★★★★★ ★★★★★

 おすすめ度 ★★★★★ ★★★★☆

 テーマ ★★★★★ ★★★★★


 アメリカ 2006年



 8月24日

 家族三人でバベル (BABEL)』を見た。



 この映画は以前から気にはなっていたが、劇場で見る機会を逃した。

 今回テレビで放映という事もあり気楽に見る。



 すばらしかった。

 多分私が見た映画の中では、今年度最高の映画だったと感じる。



 全ての人が善人。悪人は出てこない。

 全ての人それぞれにドラマがあった。

 そして一も私が感じている物事360度からの見方による人間の心を表していた。

 すばらしい。

 すばらしい映画だと感じる。



 人々の心の空回りと釦の掛け違い。

 地図をたどると、ニューヨーク、モロッコ、メキシコ、東京と一本の線につながれたそれぞれの感情と立場。

 悲しい切ない人間の本性。



 通じない。



 通じない。

 同じ人間であるのに通じないもどかしさ。

 どうしてなんだ!

 どうしてわかってくれないんだ。

 今にも妻が死にそうなのに。

 バスを発車させないでくれ。見捨てないでくれ。同じ、アメリカ人だろう。

 ⇅

 上の裏返し。

 それぞれの生き様がある。

 今、バスをださねば、薬がないんだ!

 バスには病人がいるんだ。

 夜になると、おそらくテロの危険率が増すんだ。



 アメリカからメキシコへ。

 メキシコからアメリカの国境越え。

 運転手には運転手のドラマが。

 乳母には乳母のドラマが。

 子どもたちには子どもたちのドラマが。

 そして 父親には父親のドラマが。

 それぞれのいい分には悪意はない。ただ それぞれの時の経過とともに、事は一人歩きをする。



 善良なるモロッコの子、父、そして母。

 モロッコの子、父、そして母に ライフルを譲った善良なるモロッコ人。

 モロッコの子、父、そして母に ライフルを譲った善良なるモロッコ人に、好意でライフルを渡した日本人男性。

 全てがよかれと思い、まじめに生きてきた人々。


 
 好意でライフルを渡した日本人男性と娘。

 娘は耳が聞こえない。

 母がライフルで自殺してからというもの、二人の間に隙間風が流れる。

 精一杯健常者女性と同様に生き、恋もしたいが、ままならない娘。

 通じない。耳が聞こえない。

 通じない。心が聞こえない。



 通じない。耳が聞こえない。

 通じない。心が聞こえない。

 世界中で心が通じないジレンマ。

 歯がゆいじれったさと腹立たしさ。

 こんなはずではなかった。

 こんなはずではなかったんだ。



 映画が始まってすぐ、父親(ブラット・ピット)が息子に電話で話す場面があった。

 息子が写る。

 息子の無邪気なたわいない日常会話。

 父親の声。

 ⇅

 映画が終わる直前、息子と父の電話の場面の裏返しがあった。

 父が写る。

 息子の無邪気なたわいない日常会話。

 泣きじゃくる父。

 妻が(モロッコで)ライフルで撃たれ、一刻を争う事態。

 アメリカは、モロッコは、それぞれの国状を一番に考える。

 一個の人間の命をないがしろにしている。



 どうして、どうしてなんだ。

 同じ人間なのに、言葉が、心が通じない。

 人間同士なのに、歩み寄ろうとしない。



 どうしてなんだ。

 なぜわかってくれないんだ。
 
 一人の人間が死に直面しているというのに。



 これが世の中なんだ。

 人一人として悪意はないのに、一直線に人一人を救う事ができない。



 見たい。

 もう一度ゆっくりこの映画を観たい。



 怖い。

 砂漠を経験した人間にとって、どのくらいこの映画が怖い事か。



 怖い。面白い。しかし危険が伴なわぬとも限らぬ異文化。



 文明国と発展途上国。

 裕福と貧乏。

 権力と個人。

 義務と権利。

 本音と建前。

 そして、全ての壁。

 壁があって通じない。

 悪意はないのに、通じない。

 事は思わぬ展開をなし、一人歩きする。



 とめようがない。

 地球という自然の中で築き上げてきた人間の掟が人間を拘束する。



 それそれの地でそれぞれの人々がそれぞれの立場に立って、たちはだかった苦悩に向き合う。



 難しいテーマを一切合さいに引き受けて、一つの映画にまとめあげた秀作。

 私はこの映画が好き。



 相対的に考えて、モロッコの子どもたちに一番感情移入した私。



 全体を考えて重苦しく、切なく悲しい時の流れ。

 笑って過ごした時もあろうに。


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 悲しく切ない時は流れ、塔は立ちはだかる。

 人間を戒めるかのように、映画『バベル (BABEL)』は淡々と物事を描いていく。
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