暴力(DV)を理由とする面会交流権の制限
問)前の夫とは暴力(DV)を理由として、離婚しました。その際、未成年の子がいたので、親権者を私と決めました。前夫は、自己中心的に執拗に子どもとの面会交流を求めてきます。前夫は、子どもに暴行を加えたことはありませんが、前夫が子どもに会いに来ることや、子どもを前夫に会わせつれてゆくことを考えただけで私が受けた暴行を思い出し、過呼吸になるような状態になります。
こういった場合、面会交流の要求をきっぱりと拒否する方法があれば教えて欲しいです。
答)親権者が申立人になって、面会交流を禁ずることを命ずる審判を家庭裁判所に申し立てることができます。
また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(ドメスティック・バイオレンス防止法。(いわゆるDV防止法))10条1号に基づき、命令の効力が生じた日から6ヶ月間、未成年の子と親権者の住居において身辺のつきまとわりや未成年の子の住居・就学先その他通常所在する付近を徘徊することを禁じる命令(接近禁止命令)を地方裁判所に申し立てる方法もあります。
1.DV防止法が及ぼす面会交流権の審判における影響
家庭裁判所の面会交流の審判において、例えば、
・2人の子を元妻が引き取っての離婚の原因が元夫の暴力にあること
・元妻が離婚後PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発病し、安定剤などの投与を受けるほか心理的にも手当てが必要な状況にあること
・母子3人の生活を立て直し自立するために努力しているとこおであること
・子らの父親(元夫)の面接交流の円滑な実現に向けて母親(元妻)と対等な立場で協力しあうことはできない
といった案件において、家庭裁判所の面会交流の審判の場で、以下のように判断がしめされています。
「現時点で申立人(元夫)と事件本人(子ら)の面会交流を実現させ、あるいわ間接的にも申立人との接触を強いることは、相手方(元妻)に大きな心理的負担を与えることになり、その結果、母子3人の生活の安定を害し、事件本人の福祉を著しく害するおそれが大きいといわざるをえない」として、父親(元夫)からの面会交流の申立を却下した審判例(東京家庭裁判所審判平成14.5.21)。
このような判例及び実務の流れからすると、暴力(DV)を理由にして面会交流を禁ずる審判を求めて家庭裁判所に審判の申立をすれば、禁止の審判が下る公算が大きいと思われます。
もっとも、この審判では、婚姻中及び離婚後も父親(元夫)の暴力という加害行為とその被害の存在を主張する必要があります。
具体的には、
・暴力を受けてから3日以内に病院にて診断書を作成すること
・男女共同参加課といった、配偶者・パートナーからの暴力の被害を受けた住民からの相談にのるなどのしかるべき行政機関に対して常日頃から相談すること
・所轄の警察署の生活安全課や捜査1課なといった暴力の被害の相談に応じる警察の部署に相談し、暴力の存在を警察署の記録に保管するなど策を講じてておくこと
などをして、暴力(DV)の存在を日ごろから証明していっくことが必要となります。
2.元配偶者からの暴力
平成13年にDV防止法が制定・施行されから、端的に、配偶者によるつきまとい行為を禁じる命令(接近禁止命令)を地方裁判所に申し立てることが可能となりました。
この接近命令に違反があれば、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金。同法29条)をも科されます。
通常夫婦げんかに対して警察は、被害者からの通報があって現場に急行しても、民事不介入の壁によって、積極的に加害者を逮捕するということはできないのです。
現場に到着した警察官がせいぜいできることは、夫婦げんかが収まるまでその現場にとどまり、暴力がないかを監視することでした。
もちろん、警察官の目の前で夫が妻をげんこつで殴り、出血するなどのおおけがをおわせれば、傷害罪または暴行罪の現行犯で逮捕はできますが、夫婦げんかで頭に血が上っているとはいえ、警察官の立会いのある場で手を出す人はそうはいないでしょう。
このように、警察による介入ができなかったのが現状です。
しかし、この接近禁止命令が効力を有している期間であれば、暴行を加えることはもちろん、命令に違反した接近自体が逮捕の対象となります。
具体的には、接近禁止命令を受けた者(夫など)が命令に反して接近していることを、通報を受け、現場に急行した警察官による職務質問などで確認されれば、警察官は違反した者に対し、直ちに退去するよう命令をだし、この命令に従わなかった場合には命令違反で逮捕ができるのです。
もっとも、平成13年のDV防止法は、あくまで配偶者すなあち、事実婚の相手方は含んでいたものの、事実婚も含め婚姻解消後の元配偶者はその対象としていなかったのです。
そこで、このような立法不備を解消するため、平成16年のDV防止法改正により、「配偶者からの暴力」の定義が改められ、元配偶者からのさらなる身体に対する暴力により被害者の生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときにも接近禁止命令が申し立てるようになりました(改正同法10条)。
3.DV防止法の改正
平成16年の同法改正は、配偶者の暴力の拡大再定義にとどまりません。
暴力の被害者が未成年の子と同居しているときであって、配偶者が子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから、被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認められるときには、裁判所は、被害者の申立により、当該配偶者に対して、命令の効力が生じた日から起算して6ヶ月を経過する日までの間、当該未成年の子の住所・就学する学校その他通常所在する場の付近を徘徊してはならないと命令できるようになりました(改正同法10条2号)。
この命令に違反した場合、罰則が科されます(改正同法29条)。
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