ルーカス・クラナッハ
(Lucas Cranach der Ältere)
ザクセン選帝侯モーリッツ(Moritz)は 1547年に即位している。日本では甲斐守護武田晴信と関東管領上杉憲政などの合戦、小田井原の戦いの年である。ルーカス・クラナッハが生まれたのは、1472年のこと、生地はチューリンゲン州の クローナハハ村。彼のスポンサーはザクセン選帝侯であり、友人には宗教改革で名を知られたマルティン・ルターがいる。 クラナッハはイタリアには行っていないようだが、ルネッサンスの巨匠ミケランジェロ とは同時代の人。同名の息子も画家であり、区別するためにルーカス・クラナッハ(父、Ältere=Older person)と表記される。
(参考 wikipedia )
Porträt von Martin Luther
1483年生まれでクラナッハより十歳ほど年下。1522年に教会批判の咎により帝國追放刑を言い渡されたが、モーリッツ (後のザクセン選皇帝)の庇護をうけて 難を逃れた。 クラナッハもこのザクセン公に贔屓にされていたので、親交が生まれたのだろうか。絵には"1533"の文字が見える。
Lucas Cranach d. Ä
Entstanden: 1529
Kunsthistorisches Museum, Wien
Holz, 80 X 114 cm
Golden Age
「黄金時代」(Golden Age)とは西欧の絵画などに取り上げられるテーマで、ギリシャ神話の「理想郷」のこと。クロノスが神々を支配して、人間も神々と一緒に住んでいた。果物は何時でも豊かに実り、川にはミルクが流れていて、人々は働くことは無い。
その後時代を経るに従って、白銀の時代、青銅時代そして、現在が鉄の時代であると謂う。
ギリシャ詩人のヘシオドスが、教訓敍事詩『仕事と日々』の中で書いていることには、四つの内の最期の鉄の時代が尤も過酷な時代である。プロメテウスが神の火を盗んだので、最高神ゼウスは怒り罰を与えた。パンドラと謂う美しい女を作り偽計を用いて、開けてはならない『パンドラの箱』をプロメテウスの弟エピメテウスに開けさせてしまった。
この箱の中にはありとあらゆる災厄が詰まっていたが、其れが溢れ出てきた。それで鉄の時代には、人々は欺き合い憎しみ合いそして戦いに明け暮れ、苦役の労働もしなければならなくなった。
ギリシャ精神の幸福は安逸であり、労働は苦役で災いと見なしている。日本人の一般的な幸福感とはかなり違うようだ。
クラナッハの描くヴィーナスは、美と愛の女神と言うよりは、開けてはならない災厄を詰め込んだ箱をもたらす、パンドラのように怪しく美麗。
Lucas Cranach der Ältere: ´Venus´, 1532, Bild
「カノン」κανών=Kanon cnide Aphrodite
ギリシャ美術においては人体がもっとも美しい比例をしていると考えられている。「カノン」κανών=Kanon はその比率を模式化したものであり、おおよその西欧美術の表現の中にある人体はこの比例に適合している。
下に載せている絵はクラナッハの作品と、他の作品や人体写真であるが、見比べて比較してみたい。
左側の女性は比較的小振りな成人の肢体をしている。頭部が右の絵に比べて大きいが是がだいたい普通の比率であり、西洋絵画のカノンはギリシャ美術の理想に影響されていて、顔は小さく表見されている。
ポーズが違うので比較しづらいが、肩は絵の方が小さくなで肩になっている。縮小した頭部とのバランスからこうなる。はっきりと異なる点はやはり、くびれた胴である。解剖学的な形態を無視して乳房の下からカーブを描いて細さを際だたせているようだ。左の写真には乳房の下に肋骨が浮き出て写っているが、右の絵には無い。
左図では、肋骨のラインが目立たない。
source
ポーズを工夫すれば、クラナッハの小さな胸を演出することも可能なようだ。
左はウィリアム・アドルフ・ブグロー (William Adolphe Bouguereau) の作品の部分。彼は19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する画家で、日本語では「ブーグロー 」と表記するのが一般的。体型はギリシャ美術の典型で均整の取れた若い女性の体型を忠実に写している。
クラナッハは腹部の表現は、より横方向へ視点をずらして、脇から眺めるように描いている。腹部の微妙なふくらみと臍の位置が作為的で、近代絵画の立体派の予兆を感じさせる。
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赤いビキニの女性はそうとう若い。体型からすると中学生程度の年齢なのだろうか。15歳前後であろう。
クラナッハの女性もほとんど同じような、カノンの印象である。