まだ紅葉には早いため、混雑していないと思って川治温泉に行ってみました。
宿は「白井屋」に決めました。
ずっと前からこの宿に泊りたかったのですが、なかなか機会がなかったのです。
なぜならば川治温泉は通り過ぎるだけの温泉で、いつもはここを通ってもっと先の温泉に目的地があったからです。
だから、川向こうにある日帰り温泉の『薬師の湯』だけはよく利用していましたが、宿泊するのは初めてでした。
この宿は以前からリーズナブルで料理がとっても美味しい宿だと聞いていました。
そして、夕飯の最後に出てくるのはご飯ではなく、お蕎麦。
この手打ちそばを目当てに来る人が多いようなのです。
川治温泉には温泉街というような場所はなく、隣の鬼怒川温泉に比べると静かな温泉です。
それでも大きな宿がいくつかあります。
その間に挟まれたように、会津西街道沿いに民宿のような雰囲気の「白井屋」があります。
母屋のすぐ隣には細い通路があり、奥が駐車場になっています。
建物は年季が入っていて昭和風でノスタルジックな感じです。
部屋は2階にあり、長くて広い廊下が続き、全部で6部屋が並んでいます。
民宿風なので、客室はすりガラスの引き戸、もちろん鍵はしっかりと付いています。
大きな宿に囲まれているので眺望も全くなくて、庭にある大きな桐の木と屋根しか見えません。
そして、共同の洗面、トイレですが、不自由はありませんでした。
さて、温泉です。
温泉は貸切の大小2つの内風呂、小さい方は2人、大きい方は4人くらい入れます。
[大きなお風呂]
[小さなお風呂]
貸し切りできるようになっていて、入り口にスリッパが置いてあれば誰かが入っているという目印になっていました。
早速、大きい方に入ってみました。
湯口からは温めの源泉がたっぷりと湧き出していました。
その泉質はアルカリ性単純泉のですので、特に色が付いていたり、臭いがあったりすることはなかったのですが、昔から『傷は川治、火傷は滝(鬼怒川)』といわれている通り、良質なお湯で滑らかな手ざわりのお湯でした。
お風呂の後はお目当ての夕食が待っていました。
食事は全員が同じ場所でいただきました。
部屋に入ると既に料理が数点並べられていて、全員が揃ったところで、その料理の説明がありました。
最初から並べてある料理は一部で、その後は出来立てが順番に運ばれてきて、その都度、料理や使われている素材の産地などの説明をしてくれました。
お品書きがなかったのが残念ですが、すべて手作りの創作懐石料理。
この他にはお刺身の盛り合わせ、デザートなど盛りだくさんでした。
趣向を凝らし、素材を活かした料理は派手さはないのですが、とても素晴らしいものでした。
そして、締めのお蕎麦は主人が当日にそば粉を挽いて手打ちしたものだそうです。
朝食も煮物、焼き物、ご飯のお供など品数がとても多く、食べきれないほどでした。
夕食、朝食とも評判通りとっても美味しくいただきました。
この宿はご主人と娘さんの2人だけしかいません。
料理はご主人が独学で覚え、接客は娘さんの担当だということでした。
リーズナブルな宿泊費を考えれば、この料理はあり得ないと思います。
建物が古いとか、窓から何も見えないとか、トイレと洗面が共同だとか、Wifiがないとかはもうどうでもいいです。
それほど料理とおもてなしが良かったのです。
季節を変えてまた違った料理を食べに来たいと思わせてくれる宿でした。