野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

タンポポ調査近畿2005調査報告

2018-10-20 | 資料を読む

秋になっても タンポポの花がときどき見つかる
そんななかで 今回は タンポポ調査 本会でも2000年ごろにインターネットを使って調査報告をおこなった。
タンポポは在来と外来の簡単な比較であったが より詳細にわかるのが本書

タンポポ調査近畿2005調査報告 (2006年1月31日 タンポポ調査近畿2005実行委員会)

「新たに生じた問題一雑種タンポポの増加
 このような環境を知るための市民調査にタンポポが使われてきたのは、総苞外片が上向きなら在来
種、下向きなら外来種であると簡単に種類が判断でき、誰でも調査に参加できるということがもっと
も大きな理由であった。しかし、1990年代になって、この在来種と外来種との間に雑種ができている
ということが明らかになり、外来種が在来種との間で雑種を作りながら広がっていると考えられるよ
うになった。その上、この雑種タンポポの多くは総苞外片が下向きか横向きで、見ただけでは外来種
と区別ができない(これを外来種型雑種という)。今のところ、雑種であることを確実に調べるには、
DNAやたんぱく質などの化学成分を分析して比較するしかなく、今までと同じ方法でタンポポ調査
を行えば、総苞外片が反り返っているものには、純粋の外来種と雑種のタンポポが含まれてしまう。
さらに、最近になって雑種にも様々なタイプがあることが発見され、中にはまだ少数だが、総苞外片
が上向きで在来種と間違う可能性のあるもの(在来種型雑種)まで見つかっている。


本調査委員会では、雑種タンポポが増加している現時点で、市民参加のタンポポ調査を行う際に、
科学的にも意義のある調査を行うにはどのような調査方法が有効であるかを提案するとともに、実際
にその方法で2004年~2005年の2年間に渡って調査を行い、その有効性を検証したいと考えて調査に
取り組んだ。また、その調査で得られた近畿全域における雑種を含めたタンポポの分布状況を把握す
るとともに、過去の調査データとも比較して、近畿地方におけるタンポポの分布の変化や自然環境の
変遷についても明らかにしたいと考えている。


データの解析を行い、その結果を実行委員会へ提案して、調査報告書のまとめを行った。
*委員長:布谷知夫(滋賀県立琵琶湖博物館)、副委員長:武田義明(兵庫県生物学会・神戸大学)
*事務局:木村進・高畠耕一郎(大阪自然環境保全協会)、会計:宮田修(保全協会)
*各府県事務局:三重(佐野順子)・兵庫(人と自然の博物館:鈴木武)・京都(伴浩治)・奈良(田代貢)・
滋賀(琵琶湖博物館:布谷知夫)・和歌山(県立自然博物館:内藤麻子)・大阪(保全協会)」

兵庫県の結果は

「兵庫県のページより

鈴木 武(兵庫県立人と自然博)・武田 義明(神戸大・発達科学)

2.調査結果
 2004-2005年度では兵庫県実行委員会へは延べ3263名から7435件のサンプルとデータが送られてお
り、少なくとも1件のサンプルがあったのは、2008個で兵庫県全体の約1/4に相当する。なお比較の
ため、近隣府県、特に京都府丹後地方も含めて以下に示す。
(1) カンサイタンポポ(図1)
 花粉粒が均一のものは総芭の形状からほとんどがカンサイタンポポと同定された。淡路、播磨、
 丹波では多くのメッシュで見つかった。姫路市(321メッシュ)ではデータのあった196メッシュの
 うち123個でカンサイタンポポが見つかった。神戸市以東の阪神間では比較的少なく、例えば西宮
 市(132メッシュ)では、67メッシュのうち19個でしか見つかっておらず、都市化の影響と考えら
 れる。
 一方、日本海側の但馬地域(2170メッシュ)では、392メッシュのうちわずか26個のみであり、
 カンサイタンポポの分布のほとんどは旧但東町から和田山町、あるいは日本海沿岸に限られており、
 県北部の但馬地域にはカンサイタンポポの分布の欠落域が広くあるといえる。


 京都府北部では綾部市、福知山市などではカンサイタンポポはかなりあるようだが、丹後半島で
 は少なそうな傾向にあった。

(2)ヤマザトタンポポ(図1)
 総苞外片が上向きで、花粉粒がバラバラのもので、花冠は薄いクリーム色、頭花が大型(総苞片
 の長さは15mm以上)、果実は黒く、長さは5mm以上のものをヤマザトタンポポと同定した。在来
 の倍数体タンポポとして知られており、兵庫県のレッドデータブックではAランクに指定されてい
 る。ここでは京都府綾部市が原産地のケンサキタンポポも含めている。
 県北部の但馬地域では392メッシュのうち126メッシュで見つかっており、カンサイタンポポより
 も多く見つかった。京都府でも丹後半島などで見つかっており、近畿北部に広く分布しているので
 あろう。分類学的取り扱いも含めて今後の調査が必要である。
(3)シロバナタンポポ・キビシロタンポポ(図2)
 シロバナタンポポは県内に広く分布する。豊岡市や姫路市周辺では多く見つかった。キビシロタ
 ンポポは岡山県に多い小さい白花タンポポで、三重県・福井県でも報告されている。但馬西部でも
 よく似た白花のタンポポが見つかり、予備的なアロザイム多型による遺伝子解析の結果、シロバナ
 とは異なり、岡山県や三重県のキビシロと一致しており、キビシロタンポポが兵庫県北部および京
 都府綾部市に分布することが明らかになった。
 シロバナタンポポに比べて、総苞片に角状突起がなく、総苞片は圧着するとされているが、今回
 観察した限りでは、シロバナタンポポでも3月ころの開花初期のものでは総苞片に角状突起がなく、
 総苞片は圧着する傾向にあること、5月に採集したキビシロタンポポでは総苞片はやや開出して、
 角状突起が目立つことから、上記の形態での識別は困難であると考える。遺伝子解析でキビシロタ
 ンポポとしたものでは、総苞外片の辺縁は赤味を帯び、毛が多い傾向が強く、遺伝子解析のできな
 かったものはこうした形態により同定した。
 兵庫県北西部では白花タンポポはほとんどキビシロタンポポであった。旧朝来町および京都府綾部市で
 も見つかっており、鳥取県も含めて山陰でのキビシロタンポポの分布には今後の調査がさらに必要である。

(4)クシバタンボポ(図3)
 総苞外片が上向きで、花粉粒がバラバラのもののうち、花冠は濃い黄色、総苞片には馬の背状の
 独特の突起があるものをクシバタンポポと同定した。従来から但馬で知られている在来の倍数体タ
 ンポポである。総苞外片は開花時には上向きであるが、葉が櫛の波状になるのが特徴である。綿毛
 になるころにはかなり開出するようである。
 県北部のほかに、神戸市、宝塚市、姫路市などで頭花のかたちからクシバタンポポと同定したも
 のが分布していた。葉が櫛の波状になるのがクシバタンポポの特徴の1つであるが、今回の調査で
 は葉のサンプルがないので確認できていない。
 また神戸市立六甲アイランド高校の調査では、神戸市、宝塚市、美方町の3地点のクシバタンポ
 ポがアロザイム多型では別なものとして識別されており、同定の方法やクシバタンポポの種内多様
 性について今後の研究を要する。
(5)アカミタンポポ(図4)
 セイヨウタンポポは県内に広く見つかったが、アカミタンポポは神戸市、西宮市や姫路市の都市
 部で多く分布する傾向が見られた。

3.まとめ
◎兵庫県北部および京都府北部でのキビシロタンポポの分布が確認された。
◎兵庫県北部ではカンサイタンポポの分布は限られ、ヤマザトタンポポが広く分布する。
◎クシバタンポポと判断できるタンポポが広範囲から見つかった。」

来年春になれば その後の変化をもう一度どのようになったのか調べたいものだ。