憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

波陀羅・・・7   白蛇抄第5話

2022-12-13 09:44:24 | 波陀羅  白蛇抄第5話

波陀羅が策略にかけようと決めた鬼は
邪鬼丸こと、新羅の婿殿である。
波陀羅は、もともとは普通の女鬼であった。
波陀羅が織絵の身体の中に住みつくような術を覚える事になった、そもそもが邪鬼丸への復讐にあった。
この波陀羅の初めての男が邪鬼丸であった。
好きな様に嘘吹き、通い摘めた挙げく
波陀羅を我が物にするとものの三月もせぬ内に飽きた。
己の物への侮辱と、
邪険に扱われた末、邪鬼丸に去られた悲しみとで
波陀羅は二歳泣き暮らした。
そうする内に波陀羅は新しい男を得た。
男鬼が聞くのについうかりと初めての男の名を口にした。
初手でない事は判っておる事であった。
今更、すんだ事でしかない。
が、男の方はその相手が邪鬼丸であった事も
気にいらなかったのである。
波陀羅が言い分けがましく、
それでも本の三月ほどの仲でしかなかった事を告げると
男の顔が途端に醒めた色になった。
追いすがる波陀羅に
「邪鬼が、三月で飽くような、女子に
おだを上げておったと知れたらわしが恥ずかしい。
わしとの事は誰にも言うな」
と、言い返してきた。
波陀羅の中で邪鬼との事の悲しみが
憎悪に変ったのは、その時である。
波陀羅は森羅山に入ると邪神である、
いかずち、なみずちの双神の社に向かった。
そこで波陀羅は法術を修めた。
が、三年も過ぎると里心がつく。
双神の許しを得ると波陀羅は古巣に舞戻った。
――どうしても、邪鬼は憎い。
が、己の物、その様に拙い物なのか?―
一度知った肉の味を思い起こさせるようなほたえの春を
迎えていた波陀羅であった。
思った事を確かめる為にも、
己のほたえに突き動かされ、
波陀羅はもう一度、邪鬼丸に近づいていった。
「おう。波陀羅。良い女子になったの」
昔を忘れ果てた様な口振りの邪鬼丸であるのに
その手を取られると波陀羅はそのまま、邪鬼丸に抱かれた。
「のう。我の何処がいかなんだ?」
昔の事を口に出した途端、邪鬼丸が嫌な顔をした。
が、思いきって
「我が物は、ようなかったか?」
尋ねると、憐れと思うたのか、本意なのか
「わしは・・・それで、お前を捨てたでない」
と、言う。
「ならば、なんで・・」
「わしは、陰な女子は性に合わぬ」
それでも、お前の物が良い故に、
それでも、三月も続いたと言う。
「(三月も・・も?・・)・・・陰・・じゃと言うか?」
「じゃろう?わしに捨つられたというて、
軍冶山から一歩も出て来んで泣き暮らしおったろう?」
「いくら・・・ようてもか?」
「ああ」
「伽羅はどうじゃ?」
邪鬼の女子の事である。
「あれは・・・」
邪鬼丸が、ぐっと詰まる。
陽気な女子であるが
最近は新羅の事や里の女の事まで、とやかく煩い。
口に出さなくとも、
その辺りを心の内でぐずぐず思うておるのに
嫌気がささぬでも無いが、
お前が良いと言うと身体を開くのが伽羅である。
「早い話しの。物ではない。あれは・・わしをその気にさせる」
「わ、我は?」
「抱いておろうに」
さっさと己のほたえを始末したいだけの邪鬼丸である。
波陀羅の腰を押すと、今度は己の物に向けて、
波陀羅の腰を引寄せながら激しく
己の物を何度も付きこんで行く。
「ぁ、ああ・・本意じゃな?・・本意じゃな?」
「おうよ」
(そう答えたきり、それから、
邪鬼丸は波陀羅に寄り付きもしなかった。)
一度ならず二度もでも、嬲られると
己の浅はかさが疎ましくなった。
が、それでも、まだ何処かで邪鬼丸を求めていると気がつくと、
今度は邪鬼丸を求めさせてしまうそのほたえに
波陀羅は大きく振られ出した。
ほたえを抱え込む波陀羅の事を
邪鬼丸は元より、邪鬼丸の事を知ってか、
昔の男が話したのか、どう噂されたのか
波陀羅を振り向く者は居なかった。
己のほたえに狂いはてると
波陀羅は白拍子に身を映して人の所を渡り歩いた。
銭を渡され身体を預ける。
銭なぞ波陀羅には役に立たなかったが
人間の男は波陀羅を見ると面白いほどに、
寄って来ては銭を握らせた。
そして必ず波陀羅を求めた。
情交と呼べる物ではない。
が、波陀羅はそれで、
邪鬼丸に損なわれた自信を取戻して行く事ができた。
そうする内に妙な男を見つけた。



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