憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

波陀羅・・10   白蛇抄第5話

2022-12-13 09:43:40 | 波陀羅  白蛇抄第5話

鬼の退治がすむと畳に平伏し頭を擦り付ける陽道の姿があった。
「気が付くのが遅う御座いました。
何もかも、陽道の手落ちで御座います」
と、言われれば鉄斎も責める気になってしまうというものである。
「何の為に着いておってくれおった。
孕み落しも出来ぬ程になりて、
それでのうても鬼に嬲られた娘の所にどう、婿を取ればよい。
世間様にどう・・・」
図らずも鉄斎の口から陽道の思惑とする所が言い出されると
「この陽道が先に織絵さまと、
深い仲になってしもうた事にして下されませぬか?」
「な・・・何?」
「私の落ち度を拭う、言い分けがましい事では御座いますが
世間様の手前、この陽道が織絵様と
先に深い仲になってしもうたので
鬼が劣情に狂うて現れたという事に」
「そ、それでは・・・・」
陽道が鬼に犯された娘の責任を取らさせてくれと
言っているのだと鉄斎にも判る。
「はい」
腹が目立たぬ内にと話しを進めて、
一月もせぬ内に織絵と陽道の祝言が執り行われた。
私ならば生まれ来たる子の事も夫婦の睦み合いで
織絵様の性だけ残して鬼の性を取り払う事も出切る事です。
と、断言されたのも鉄斎が
陽道を婿に取ると決めた大きな要因でもあった。
やがて生まれでた子が鬼で無くなっているのが判ると
鉄斎も手放しで喜んだ。
生まれた子に一樹という名をつけたのも鉄斎であった。

その後、直に織絵は二人目の子を孕んだ。
二人の子を孕み、十月を腹に抱え、
産の痛みに耐え、乳を食ませて、しめしを替えて、
何時の間にやら波陀羅も
織絵の身体と共に母親になっていた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿