鬼の退治がすむと畳に平伏し頭を擦り付ける陽道の姿があった。
「気が付くのが遅う御座いました。
何もかも、陽道の手落ちで御座います」
と、言われれば鉄斎も責める気になってしまうというものである。
「何の為に着いておってくれおった。
孕み落しも出来ぬ程になりて、
それでのうても鬼に嬲られた娘の所にどう、婿を取ればよい。
世間様にどう・・・」
図らずも鉄斎の口から陽道の思惑とする所が言い出されると
「この陽道が先に織絵さまと、
深い仲になってしもうた事にして下されませぬか?」
「な・・・何?」
「私の落ち度を拭う、言い分けがましい事では御座いますが
世間様の手前、この陽道が織絵様と
先に深い仲になってしもうたので
鬼が劣情に狂うて現れたという事に」
「そ、それでは・・・・」
陽道が鬼に犯された娘の責任を取らさせてくれと
言っているのだと鉄斎にも判る。
「はい」
腹が目立たぬ内にと話しを進めて、
一月もせぬ内に織絵と陽道の祝言が執り行われた。
私ならば生まれ来たる子の事も夫婦の睦み合いで
織絵様の性だけ残して鬼の性を取り払う事も出切る事です。
と、断言されたのも鉄斎が
陽道を婿に取ると決めた大きな要因でもあった。
やがて生まれでた子が鬼で無くなっているのが判ると
鉄斎も手放しで喜んだ。
生まれた子に一樹という名をつけたのも鉄斎であった。
その後、直に織絵は二人目の子を孕んだ。
二人の子を孕み、十月を腹に抱え、
産の痛みに耐え、乳を食ませて、しめしを替えて、
何時の間にやら波陀羅も
織絵の身体と共に母親になっていた。
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