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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

竈の神・・21

2022-11-12 19:21:34 | 竈の神  白蛇抄第18話

「榊縅之輔の思念の中に、大きな白い犬が映ってくる

これは、たぶん、犬神の大元、前世の最初ではないかと思うのだ」

白い犬と一口で言ってしまうと

法祥には判らない事であろう。

「白い犬というのは、

人間になりたい、と、思っているのだ」

やはり、法祥は得心できない。

「犬が?犬が、人間になりたい、と、思う?

じゃあ、輪廻転生で、場合によっては

私が、元は白い犬だったということだってありえる?

そんなことが・・・」

「あるだろうの」

白虎の守家、九十九善嬉は、前世が鬼だったという。

鬼は人間になりたいと草木を食らって

厳しい修行をし、死ぬ間際

「ああ、人間になりたい」と、つぶやいた。

すると、その記憶をもったまま、人間に生まれ変わり

なおかつ、相手の前世をさかのぼって見ることが、できる。

おそらく、鬼だった善嬉の願いを叶えてやったぞと

久世観音か?が

明かして見せる為に、記憶を残したのだろうし

血へどを吐くほどの修行で得た法術も

現世で役に立てよ、と、受け継がせたのだろう。

そんなことが有ったと考えれば

犬であっても、人間になりたいと思うことがあってもおかしくない。

ただ、その思いが叶うに、

善嬉同様、神の心をうごかさねば

成ることはないと思える。

「その白い犬が、前世でなにをし

今はどうなっているのか?

例えば、榊縅之輔にうまれ変わったのか?

そういうことは、

善嬉にたずね合わせるしかない。

ただ、これは、わしの勘でしかないが

白い犬と榊一族の間に、なにかがあり

これが、因になり

犬神を榊一族がしばるように成ったのではないか」

「その白い犬は、縛られて、榊に憑いている犬神ではなく、

自ら進んで榊縅之輔を守護している、そんな感じでしょうか?」

「いや、そういう差配というものは感じなかった。

昔飼っていた犬を、思い出していると

その念を感じ取って、犬の方も、懐かしんでいる・・

そんな風に思えたのだが、

随分、昔の事のようで、榊縅之輔自身が犬を飼っていた様子はない。

おそらく、血の中に溶け込んだ前世の記憶が、

何かのはずみで、湧き出て来る。

本人には、その湧き出た物は、

「犬を飼いたい」というふうに、受け止められているだろう」

「なるほど・・・

では、榊縅之輔さんに、犬をお探しですか?

と、尋ねたら、応と答えるということですね」

「たぶんな」

それっきり、白銅は黙った。

おそらく、

澄明に、式神を返しているのだろう。

白銅と澄明が以心伝心なのは

陰陽師故だろうが、

夫婦だから、なおさら、

以心伝心が、強いのかもしれない。

既に、榊十郎を見つけたときから

澄明も、榊十郎を読んでいるのではないかと

法祥は思った。



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