憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

竈の神・・20

2022-11-12 19:21:16 | 竈の神  白蛇抄第18話

息子の縅之輔に犬神が憑くことにより、

榊十郎への守護が無くなるのではないだろうか?

この場合、守護と言わないだろうが、

それでも、お上の目から密貿易を隠し通す

と、いうことが、犬神の守護であれば

榊十郎を守護している間は

榊十郎は、安楽に密貿易を行える。

だが、犬神が榊十郎を見限ったら、

お上につかまり、刑罰を与えられる。

どんな刑罰になるのかまでは、

法祥には、判らないが

生きておれたとしても、

何もかも失い、榊十郎は、正気でいられるだろうか?

だが、それよりも、

なぜ、犬神は、榊十郎を見限るのだろう?

「白銅さん、犬神は

榊十郎が欲に目がくらんだせいで、

榊十郎を見限るということなのですか?」

白銅は法祥の問いに、

逆にたずね返した。

「それ以外になにか、理由が有ると思うか?」

「何らかの願いを叶えてやるのが、犬神であるのなら

どんな願いでも叶えてやらねばならないのでは?

それに、あの女子が榊さんを観世音菩薩のようだ・・と

そんな人が、

本当に、密貿易を欲得づくで行うのでしょうか?

何か、わけがあるのでは・・」

「そう思いたいのも判らぬでもないがの。

犬神は、願いを叶える代わりに生気を吸う。

だが、その生気も、欲によごれておったら

犬神もたまったものじゃないだろう」

「おっしゃることは判りますが、榊十郎、

本当に欲によごれておるのでしようか?」

いくぶんか、寂しく、いくぶんか 厳しい

そんな表情が白銅に浮かんだ。

「おまえは、自分の尺で、榊十郎を測ろうとしておるだけだ」

「私の尺?それは、どういうことでしょう?」

「おまえにとって、観世音菩薩は、至高の存在であろう。

だが、おまえの尺でしかない。

であるのに、

女が言うた観世音菩薩のようだというのを

おまえの尺で解している」

それはどういうことになるのか?

法祥は考え込んでいた。

「おまえは熱心に修行してきたのだろう。

ゆえに、お前は、神頼みとか

おかげ信仰という思いのありようがわかっていない。

女が言ったことは、

自分にとって都合の良い風にしてくれる、

あてを叶えてくれる人という意味だろう」

「でも、実際に、口入屋の商いで、

たっき(生計)の道がついて、助かった、救われた、ということでしょう?」

「それで、榊十郎は、銀山を掘る資金を作った。

あくまでも、金儲けのためでしかない。

そして、信用を植え付けておいて

伐採で目くらましをするのに、みなを利用しているうえに

おまえ、わからぬのか?」

白銅がなぜ、人だかりによりつかず

離れてみていたか。

「判らない?とは、いったい・・なにが?」

「一口いくらにせよ、楽に銭が手に入る

と、集まった人々の、欲が渦のように舞いあがり空気まで淀んでいた。

いらぬ、欲を人々に植え付ける人間が

観世音菩薩のような人であるわけがない」

世間ずれしていない無垢な男は

ー観世音菩薩ーの一言にさえ惑わされる。

「欲も必要だがの、

元の思いがどうであるかだろう?」

法祥、頭(こうべ)を垂れるばかりだった。

やっと、顔をあげたとき

「榊十郎は・・・どうにもならないと・・いうことですね」

その答えを聞きたくはなかったが

法祥は白銅の返事を待った。

「自らまいた種だ。自ら刈るしかない」

やはり、そうなのかと法祥は頷いて見せた。

「だが、ひとつ、見えてきたものがある」

白銅の見えたものとはなんであるのか?

法祥はしっかりと白銅を見つめた。

 

*******資料として*****

重罪人は火あぶり、牛裂、釜煎。減刑されても、耳そぎ鼻そぎ。 - 草思社のblog (hatenablog.com)

 吉宗は、刑罰基準や重要判例などを網羅した『公事方御定書』を編纂し、拷問乱用の禁止、従来は死罪だった密貿易の罪を遠島、耳そぎ鼻そぎに減刑するなど、刑罰改革を断行(耳鼻そぎは吉宗なりの温情だった)。諸藩も、吉宗の方針に従い、極力減刑化していこうと努めます。江戸時代の刑罰の残忍な面を紹介するだけでなく、為政者たちの改革への努力に着目している点に、本書の良さがあります。

****白蛇抄自体、年代を特定・設定していないため

法祥には刑罰は判らない、としました******

 



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