ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人九月号「黄昏て」野地千鶴

2010-09-07 08:25:50 | クンストカンマー(美術収集室)
もう誰も棲んでは居ない胸の奥ちょっぴり赤い花など咲けよ

なんの赤い花かは言わない。言わないのがいい。ちょっぴりもまたいい。「もう」だから確実に誰かが棲んでいた。喪失からほんの少しの希望を見出だす。私は作者の心に大きな赤い花が咲いて欲しいと願っている。

即詠011~020

2010-09-07 08:25:23 | 題詠blog2010
011「青」
信号が青に変わってゆくようにまたゆっくりと歩き出せたら

012「穏」
小石でも広がる波紋穏やかな湖面のような君の瞳は

013「元気」
自販機の言葉のように元気だと自分にいつも言い聞かせてる

014「接」
強引に言い聞かせても傷口は溶接跡のように残れり

015「ガール」
晴れた日の紫陽花のごといつまでも幼いままのガールフレンド

016「館」
閉館後忍者のように図書室に潜んでいれば消えてしまえた

017「最近」
襟足をくすぐる髪のようにまた最近きみが気になっている

018「京」
最後まで君と僕とはよそ者と京都のような距離感にいた

019「押」
押し入れは宇宙のように真っ暗で僕の体は自由に浮かぶ

020「まぐれ」
疲れてる背中のような夕まぐれ無言で君を駅まで送る