ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

パピルス 阪森郁代「仮寝」

2010-09-21 05:59:23 | クンストカンマー(美術収集室)
硝子窓まことしやかに閉ぢるとき空はあくまで海の領域

「まことしやか」とはいかにも本当らしく感じさせるさまという意味だ。硝子窓をいかにも海らしく感じるように閉じるとはどういう閉じかただろう。ただ、なんとなく分かる。分かるのだけど言葉に出来ない。そういう一首には衝撃を受ける。

智恵子抄「あどけない話」高村光太郎

2010-09-21 05:57:57 | クンストカンマー(美術収集室)
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。