ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

智恵子抄 高村光太郎 金

2010-09-10 05:22:56 | クンストカンマー(美術収集室)
工場の泥を凍らせてはいけない。
智恵子よ、
夕方の台所が如何に淋しからうとも、
石炭は焚かうね。
寝部屋の毛布が薄ければ、
上に座蒲団をのせようとも、
夜明けの寒さに
工場の泥を凍らせてはいけない。
私は冬の寝ずの番、
水銀柱の斥候(ものみ)を放って、
あの北風に逆襲しよう。
少しばかり正月が淋しからうとも、
智恵子よ、
石炭は焚かうね。

即詠051~060

2010-09-10 05:22:30 | 題詠blog2010
051「番号」
テンキーの番号のごと押している間違えたなら閉ざされたまま

052「婆」
皺くちゃの婆ちゃんのよな顔をして大丈夫だと言い張られても

053「ぽかん」
缶投げりゃぽかんと音がするように声を掛けてもぽかんとしてる

054「戯」
戯れに蟻を観察するようにふぐりの皺で迷路をしてる

055「アメリカ」
星の数増やし続けるアメリカのようにあなたが私を占める

056「枯」
枯渇することなき琵琶湖のようにただ私のなかを満たし続ける

057「台所」
真夜中に牛乳を飲む台所みたいな君の乳房を含む

058「脳」
脳天気というのはどんな天気かと聞くようなものウスバカゲロウ

059「病」
病名を告げるドクトル辻のよな口調で君に愛を囁く

060「漫画」
さっきから黙って聞いているけれど漫画みたいにやや有り得ない