「あの子、大事なときには必ず転ぶ」と、森喜朗元首相がフィギュアスケートの浅田真央選手を評して言った。森氏は東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だけに、大きな反響を呼んでいる。この発言には批判、非難する声が上がっているが、正直言って、私は面白いと思って笑ってしまった。
森氏は昔から“口数が多く”いろいろ物議をかもしてきたが、又やってしまったのかと思う。しかし、発言の前後を見ると、フィギュア団体戦に「浅田選手を出場させない方が良かった」など、森氏は彼女に同情的な面も表している。それはともかく、「あの子、大事なときには必ず転ぶ」という発言は穏やかでない。
必ず転ぶか、よく転ぶのか私は知らないが、この発言には意味深いものがあるのではなかろうか。「大事なとき」に限ってそうなるというのは、はっきり言って精神面の弱さ、脆さ(もろさ)があるということだ。逆に、大事なときに思わぬ力を発揮する人もいる。今回の五輪女子フィギュアでは、優勝したロシアのソトニコワ選手などがそうなのだろう。
私は浅田選手が大好きだが、どこか精神的に弱い面があるのではと思えてならない。能力や技術は抜群だが、ここ一番という時に崩れてしまうのだ。これはなにも浅田選手に限らない。ほかにも大勢いる。最近の若い者は・・・と言うと、年寄りがなにを言うかと叱られそうだが、日本の若者にはそういうのが多い。どこかメンタル面で弱いのではないか。
大相撲でもモンゴル人の横綱は、精神的に強い感じがする。以前いた朝青龍などは、ここ一番という時には憎らしいほど強かった。ハングリー精神が旺盛なのか。それに比べて、日本人力士はいざという時に力が発揮できない。横綱昇進を目前にすると、ガチガチに固くなってよもやの“負け越し”になってしまう。あれでは応援する方もガックリ来てしまう。力量や技能は十分にあっても、いざという時に崩れてしまうのだ。
もちろん、そういう人ばかりではないが、日本の若者にはそうしたのが多い。 今度 浅田選手に苦言を呈した森喜朗氏も、現職議員の頃はよく「ノミの心臓、サメの脳みそ」と言われた。私も昔、政治記者をしていたからよく知っている(笑)。しかし、ノミの心臓と呼ばれた森氏にまで、精神面のことを指摘されるとは穏やかではない。日本の若者はおおむね恵まれていると思うが、もう一度おのれを振り返ってみるべきではないか。
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