ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け35年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

新基地建設と遺骨混じりの土砂投入(20210531ー補注:20210708)

2021年07月08日 | 他紙執筆原稿

◎本稿は、キリスト教非戦平和誌「友和」(第729号-2021年5月6月号)に寄稿したものです。同紙は2021年6月下旬に発行され、わたしの旅の途中で届いたようでした。ご紹介が遅れてしまいました。 

 

 私には、声を大にして言いたいことがある。私たち日本人が「沖縄」を考えることは、何故必要なのだろうか? 平明に言えばこうだ。「沖縄を無視した平和論(戦争論)」はありえないからだ。平和(平和運動)とは「人間が生きる条件を育む」ことだと私は考えている。
 本題に入る前に、少し私を語らせていただく。私は、1951年東京生まれ。1989年5月、沖縄に行けば「安保が見える」と誘われて出かけたのが運の尽き。以来32年が経過した。2013年から名護に居を移し、沖縄から「日本」も見ている。


 本題に入る。遺骨混じりの土砂投入問題の背景について簡潔に述べる。①「辺野古が唯一」と称して何が何でも辺野古・大浦湾に新基地建設をやるのだという愚図の政権・政治。②沖縄県条例が改正され、他県から持ち込まれる土砂に外来生物の混入の規制が行われた。③2020年4月に沖縄防衛局(日本国防衛省の出先機関)が軟弱地盤対策を施すために2013年12月に沖縄県知事が認めた埋立て計画の設計変更を行わざるをえなくなり、この問題が浮上してきた。
 2013年12月の申請時の計画は、埋立用土砂は西日本各地から船で運ぶとなっていた。これが②の都合で難しくなり、沖縄県内からとなった。国頭地区、北部地区(名護市・本部町)、南部地区、宮城島地区、宮古島地区、石垣島地区、南大東島地区に振り分け、それぞれの調達可能量を示している。総計4476万3千立方メートルの内、南部地区は3159万6千立法メートルと大半を占めている。

 ご承知の通り、あの沖縄戦の最後の激戦地となったのが糸満市、八重瀬町などの南部地区だ。これらの鉱山から採掘するとなると、遺骨混じりの土砂が埋立用材になる可能性が高い。そこに、昨年10月からガマフヤーの具志堅隆松さんらが遺骨回収を進めていた現場が突然、「熊野鉱山」だと立ち入り制限されてしまった。この場所は魂魄(こんぱく)の塔から70mほどの場所だ。この塔は旧真和志村民のご尽力で1946年に建立された。毎年6月の慰霊の聖地として、沖縄県民にとってなくてはならない場所になっている。 
 私は、何度も南部地区を歩いてきたが、石灰岩の鉱山がこれほど広がっていることを認識していなかった。平和祈念公園周辺にも多くの鉱山があることを去る2月の調査で確認したのだった。
 1972年5月15日、沖縄は日本国沖縄県に組み込まれた。同時に国定公園沖縄戦跡公園に指定された。遺骨の収集は、遺族やボランティアなどに任されてしまった。文字通り戦跡公園として保護すべき場所が、鉱山などの開発が先行し、遺骨混じりの土砂が採取されてきたようだ。
 今回の具志堅隆松さん等、平和を求める沖縄宗教者の会の方々のハンストや、広範に広がった署名の結果、玉城デニー県知事は、4月16日、自然公園法に基づく部分的な措置命令を出し、先の熊野鉱山の開発は一時的に止まっている。

 ここで私は、この「日本」という国に問いたい。今回の遺骨混じりの土砂を(戦争に備える)基地建設に使う決定は、如何なる思考を経て下されたのか? 南部の土地などを使えば、そうなることを百も承知の上のことだろう。あの沖縄戦時、ガマに隠れた皇軍が避難していた住民を追い出し、乳飲み子を黙らせたなどの悪行を知らないとは、言わせない。そこは石灰石のガマだった。
 この決定は、人を2度、3度殺すことを意味している。沖縄戦、戦後76年間放置、新基地建設で新たな戦死者を生み出していく。文字通り人道(人の道)に反している。しかし、それも「人間」でもあるようだ。この国は、皇国の維持のために強行された「捨て石作戦」を正当化してきた。今また、中国を睨んだ新たな戦争に備えるために戦死者の遺骨とその歴史を踏みにじろうとしている。
 沖縄の人々は、こうした事実を掘り起こし、遺骨混じりの土砂を使わせない。私たち日本人は、どちらの人間を選ぶのか? 今を逃したら、平和を語り、実現するときは失われてしまうだろう。(2021年5月31日)

◎「チョイさんの沖縄日記」によれば、「熊野鉱山」の業者は、沖縄県との事前協議もなく、県による措置命令を無視し、整地作業を始めたとのことである。これに対して、具志堅隆松さん等は緊急に県との話し合いを求めている。今後の行方が案ぜられるが、まだわたしは詳報を掴んでいない。可及的速やかに現場を巡り、確認するつもりだ。(20210708) 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。