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『岳』 第8巻 石塚真一

2008-12-08 23:15:50 | 
『岳』第8巻 石塚真一

『ホワイトハウス』というテレビドラマの一話に
火星探査船ガリレオ5号の話がある。



無人の探査船ガリレオ5号が
火星への着陸に失敗して危機に瀕しているのだが
ある女性教師が
「大金をかけて火星探険をするより
 住宅や福祉、教育に税金を投じるべきだ」と
大統領の広報部次長サム・シーボーンを問い詰める。

彼は、
「遠い昔人類の祖先は森を出て歩くことで
 手を使い、丘を越えて旅をしながら
 道具や火の使い方を覚えた。
 冒険こそが人類を誕生・進化させたんだ」
と答える。

限りない進化・発展こそ善とする
極めて西洋的な考え方の表出した言葉であろう。
つい、なぜ山に登るのかと訊かれて
「そこに山があるから」と答えた
イギリスの登山家ジェームス・マロリーを
思い出してしまった。

これも(解釈の仕方は様々だが)
好奇心こそ人間の本質、というところに
行き着くのだろう。

人の好奇心を刺激する山は
もっと高い山へと人を導く。
登山家が目指すのは
どことも違う山の、
未知の世界を発見することである。



『岳』の世界に描かれている
山好きの人々は、誰もが日常の中で
今を生きることに、懸命になっている。
必死になって高い山を目指すのではなく
「穂高に登るために生きている」と言いながら
淡々と、同じ山に登り続けている。

もちろん、山はいつも同であることはないし
年齢とともに、山に登る意味も変わるであろう。
彼らが目指しているのは
同じ山で、変わっていく自分を発見することである。

山好きにしてみれば、
どちらも結局同じことなのかもしれないが
山を知らない自分には、
随分と違いがあるような気がする。

それが
「こいつは無益で・・・豊かな男」
という言葉に表れていると思うのだが
どうだろうか。


『岳』第8巻 石塚真一 小学館 本体524円+税


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