
自民 旧安倍派会計責任者“還付再開 派閥幹部から求められた” NHK 2025年2月27日 18時20分
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、衆議院予算委員会は、旧安倍派の会計責任者の参考人聴取を行いました。
安住予算委員長は、記者会見で聴取の内容を公表し、安倍元総理大臣が取りやめを決めた還付について、会計責任者は、当時の派閥幹部から再開を求められたと説明したことを明らかにしました。
自民党旧安倍派の松本淳一郎・会計責任者への参考人聴取は、東京都内のホテルで、およそ40分間、非公開で行われました。このあと予算委員会の安住委員長は国会内で記者会見し、聴取の内容を公表しました。
安住委員長は「質疑はおよそ40分にわたって理事会のメンバーなどで行い、先方は3人の弁護士が立ち会った」と述べました。
その上で、安倍元総理大臣が取りやめを決めた還付が再開された経緯について松本氏が「いったん中止となったことは事実だ。2022年7月に、一部議員たちの声を受けたある幹部から『再開をすべきだ、して欲しい』という話があり、その延長で8月に4人が集まって、ということだった」などと述べたことを明らかにしました。
ただ、安住委員長がその幹部は誰かと聞いたところ「本来ならご自身がお話しすることだと思う。名前の言及は差し控える。いまは現職ではない人だ」と述べたということです。
これに関連し、記者団から「『再開すべき』と松本氏に伝えた派閥幹部は、現職ではない、塩谷元文部科学大臣と下村元政務調査会長のどちらかではないか」と問われ、「今は議員ではないということなので、結論から言えばこの2人のうちのどちらかということになるのではないか。松本氏が、話せることに限度がある中でも、最大の疑問であるこの部分は明確に話していて、意外だった」と述べました。
そして、還付の取り扱いを話し合った2022年の8月の幹部協議について「方向性を決めた会だと認識している。幹部が『望んでいる方がいるので返しましょう』ということになった。ただ幹部の1人の塩谷氏は『やむなし』と言っていたと法廷でも申し上げた。4人の幹部で意見の対立はなかった」と述べたということで、松本氏は還付を再開する方針がこの協議で決まったという認識を示したことを明らかにしました。
幹部協議には、塩谷氏、下村氏、西村元経済産業大臣、世耕前参議院幹事長の4人が出席したことが明らかになっていますが、塩谷氏を除く3人は国会の政治倫理審査会で還付の再開に「結論が出たわけではない」などと説明し、これまで経緯などは明確になっていませんでした。
一方、議員に還付された資金を収支報告書に記載しない運用について松本氏は「私自身は指示したつもりはない。私が事務局長として就任する2019年以前から旧安倍派の議員はそれまでのやり方を踏襲していた。前任の事務局長にいつからやっているのか聞いたが『分からない』と言われ、それ以上、聞かなかった」と説明し、自身が事務局長に就任する前から長年の慣例になっていたという認識を示したことを明らかにしました。
ただ、「いわゆる新人の議員には、本人か秘書に『こういったやり方を行っている』と教えた。議員どうしで話があったかもしれない。引き継ぎとは違うかもしれないが、秘書から新人議員に対して伝わったかもしれない」と述べたということです。
さらに「ノルマ超過分の還流が20年以上前から行われていたと政治倫理審査会で証言した議員もいる」とただされたのに対し、松本氏は「可能性はあったかもしれないが、それがどういう使途になったかは承知していない」と述べたということです。
このほか、松本氏は「政治倫理審査会に出席した旧安倍派の幹部が『詳しい経緯は知らない』などと話したことをどう思うか」と質問されたのに対し「不思議なことだと思った。それぞれ議員の責任で話していることだから関知できない」と述べたということです。
一方、松本氏は「今回の参考人聴取をめぐり、旧安倍派の議員から圧力はあったか」と問われたのに対し、「そのような報道が出て、びっくりしている。連絡も、面と向かっても、圧力はなかった」と述べたということです。
安住委員長 旧安倍派幹部4人への聴取 “今のところ考えはない”
また、安住委員長は今回の参考人聴取について「この事件で問われなければならないのは旧安倍派の幹部議員であり、その人たちが政治倫理審査会で言ったことを事実かどうか補足するために、今回、参考人でぜひ来てほしいとお願いした。判決が下された方に出てきてもらうことは、とても大変なことで、自民党側の懸念も十分理解できたが、国政調査権をここで使うのは事実を確かめるためだったということは理解いただきたい」と述べました。
また、聴取に弁護士が同席していたものの質疑を止めることはなかったとした上で「松本氏はまったく弁護士を振り返ることもなく淡々と自分の記憶にあることや、分かる範囲のことは正直に述べていた印象だ」と述べました。
一方、記者団から2022年の8月の協議に参加した旧安倍派幹部の4人に聴取する必要があるか問われたのに対し「この先どうこうという話は今のところは私に考えはない」と述べるにとどめました。
さらに、旧安倍派の会長経験者などに聴取する必要性については「本当に何か新しい事実が出てこないと難しいだろう。受け手からすれば、検察の事情聴取と同等の重みがある。国政調査権を発動するのは何か本当にリアルな事実がないかぎり、予算委員長として行使するつもりはない。新たな事実があれば、それに基づいてまた協議することになると思う」と述べました。
塩谷元文部科学相 “自身の説明内容と整合性とれている”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した塩谷元文部科学大臣はコメントを発表し、松本会計責任者の発言は自身が説明してきた内容と整合性がとれているという認識を示しました。
この中では「私は、政治倫理審査会の場や記者会見などを通じ、私自身が認識している事柄について正直にすべて述べてきた経緯がある。一連の事件をめぐり、還付再開の認識が問われ続けているが、私が説明してきたことと松本氏の発言が一致しており、整合性はとれていると認識した」としています。
一方、「不記載の慣習がいつ、どのように始まったのか真相解明はいまだなされていないままで、将来に禍根を残すのではないかと危惧している」と指摘しました。
塩谷氏は去年3月の衆議院政治倫理審査会で、幹部協議について「多くの所属議員から『困っている』という意見があり、『ことしに限って継続するのはしかたがないのではないか』という話し合いがなされた。『継続していくしかないかな』という状況の中で終わったと思う」と述べていました。
下村元政調会長 “「還付再開」意見出ていると伝えた”
還付の取り扱いを話し合った2022年の8月の旧安倍派の幹部協議に出席した下村元政務調査会長は、NHKの取材に対し、2022年の7月ごろに、旧安倍派に所属する議員から「還付を再開して欲しい」という意見が出ていると、松本淳一郎・会計責任者に電話で伝えていたことを明らかにしました。
その上で「還付の再開を求めるようなことは全くしていない。あくまで、派閥内にこうした声があることを伝えただけだ。松本氏には『2人で決められることではないので、当時会長だった安倍・元総理大臣にもこうした声があることを私から伝える』と話した」と述べました。
また、下村氏は「8月の幹部協議でも再開は決まっていない。いつ、どのような経緯で再開されたのか分からない」と強調しました。
一方、下村氏は旧ツイッターの「X」にもコメントを投稿しました。
この中では「私自身はこれまでも記者会見や政治倫理審査会で繰り返し述べてきた通り、還付再開を松本氏に指示したことも、還付再開を決定した場にいたという事実も一切ない。これらの点は東京地検特捜部の事情聴取でも説明しており、旧安倍派のパーティー券の問題で私が何らかの責任を問われたこともない」としています。
西村元経済産業相 “還付を指示、了承したことない”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した西村元経済産業大臣はコメントを発表し、松本会計責任者の参考人聴取の内容に反論しました。
この中では「7月に安倍元総理大臣が銃弾に倒れた後、還付を求める声が上がり、8月上旬に幹部が協議したが、その場を含め、私が還付を指示したり、了承したことはない」としています。その上で「協議の際は還付は行わない前提で議論が行われていた。還付を求める声に対応するため、いろいろな意見が出た。松本氏の『8月上旬の協議の場で還付再開の方針を決めた』との認識とはまったく異なる。松本氏の認識は正確ではないと考えている」と強調しています。
そして、西村氏は、幹部協議では「ノルマ超過分」を還付するのではなく、その後に行われる議員個人の政治資金パーティー券を派閥が購入する案を代替案として提案したとした上で「この案を中心に何らかの対応をすることは共有した」と説明しています。
さらに「私自身は2022年に還付は受けていないが、8月10日に経済産業大臣となり、派閥の事務総長を離れた後に、一部の議員に現金での還付が再開された。還付が再開された経緯はまったく承知していない」としています。
世耕前参院幹事長 “8月の会合で還付決定の認識ない”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した世耕前参議院幹事長はコメントを発表し、松本会計責任者の参考人聴取の内容に反論しました。
この中では「8月5日の会合で現金による還付が決まった認識はない。『すでにオーバーして売ってしまっている議員は活動資金として当てにしている面もあるので何らかの資金手当が必要。現金による還付ではなく、各議員が開催するパーティー券を派閥が購入するなどの形で資金手当を行う』との方向が共有されたと認識している」としています。
そして「ノルマをオーバーしている参議院議員に直接電話し、パーティーの開催予定日などの確認を行い、8月9日に松本事務局長宛てにメッセージを送信して対応を要請し、了解した旨の返信を受信している。8月5日以降に私が参加したノルマオーバー分の取り扱いに関する打ち合わせなどはない」としています。
与党側筆頭理事 自民 井上氏 “誠実に答え よかった”
参考人聴取に出席した与党側の筆頭理事を務める自民党の井上信治氏は記者団に対し「松本氏はかなり緊張していたようだったが、率直に誠実にわれわれの質問に答えていただき、非常によかったと思う。自民党としては参考人招致やそれを多数決で決めることに反対していたが、委員会で議決された以上、協力して出席を働きかけてきた。そういう意味で参考人聴取が実現できたことはよかった」と述べました。
野党側筆頭理事 立民 山井氏 “意思決定の幹部責任重い”
参考人聴取に出席した野党側の筆頭理事の立憲民主党の山井和則氏は記者団に対し「実態解明へ大きく1歩前進したと思う」と述べました。その上で「私の印象では、少なくとも松本氏は旧安倍派の幹部が決めたことに職責上従っただけで、まったく主導はしていないということであり、改めて意思決定をした幹部の責任が重いと思った。これまでの政治倫理審査会での発言と食い違っている点がいくつかあるのでそこは確認する必要がある」と述べました。
聴取に同席 公明 赤羽氏 “意味のある参考人聴取だった”
衆議院予算委員会の委員で、参考人聴取に同席した公明党の赤羽一嘉氏は記者団に対し「率直に言ってやってよかったと思う。真相究明につながるような意味のある参考人聴取だった。松本氏は極めて実直で、うそを言っているわけではないということがよく分かった」と述べました。
聴取に同席 維新 三木氏 “真相究明に努めたい”
参考人聴取に出席した日本維新の会の三木圭恵氏は記者会見で「松本氏には質問に答えられる部分は真摯に答えてもらった。会計責任者だからといって松本氏だけが罪をかぶり、一緒になってやってきた幹部が1人も罪を償っていないのは非常に遺憾だ。 収支報告書に載せられないようなお金の使い方をしていたのではないかとか、まだまだ不透明なところがあるので、ほかの野党と連携して真相究明に努めていきたい」と述べました。
聴取に同席 共産 田村氏 “幹部だった政治家の証人喚問必要”
衆議院予算委員会の委員で参考人聴取に同席した共産党の田村貴昭氏は記者団に対し「松本氏が正直に答えた部分もあるかもしれないが、まだまだ表に出したくない、出せないというのはあるのではないか。松本氏では真実がわからないところがあり旧安倍派の幹部だった政治家から真実を聞く以外になく、証人喚問を行うことが必要だ」と述べました。
自民 森山幹事長 “解明につながった”
自民党の森山幹事長は党本部で記者団に対し「多数決による民間人招致という国会史上でも異例となるような議決に最終的に応じてもらい、深く感謝を申し上げたい。これまでの経過を含めて、誠実かつ虚心坦懐に話をしてもらえたのではないか。それぞれの会派が質問し、解明につながったと思う」と述べました。また、旧安倍派の幹部と松本会計責任者の証言に食い違いがあることから、党として旧安倍派の幹部などに改めて聴取する考えがあるか問われたのに対し「すでに個別に聴取をしているし、報告書もまとめて公表している」と述べ、聴取は行わない考えを示しました。
公明 斉藤代表 “解明進めるための第一歩”
公明党の斉藤代表は党の中央幹事会で「聴取が行われたこと自体は事実関係の解明を進めるための第一歩の機会になったと思う。聴取内容については今後精査するが、真相解明が非常に重要だという点は確認しておきたい」と述べました。
立民 重徳政調会長 “責任追及 政治の使命”
立憲民主党の重徳政務調査会長は記者会見で「松本氏自身が『大変複雑な気持ち』であるようだ。松本氏にすべての責任を負わせられる状況ではないのではないかという強い疑念があり、責任追及をしっかりとしていくことが政治の使命であり根幹だ」と述べました。
共産 田村委員長 “森元首相の証人喚問 求めていく”
共産党の田村委員長は記者会見で「松本氏は、キックバックが20年以上前から行われていたのではないかということについて『可能性はあったかもしれない』と述べていた。いつから始まったのかを明らかにするために塩谷氏、下村氏、西村氏、世耕氏とともに、安倍派の前身の派閥である森派の会長を務めていた森・元総理大臣の証人喚問を行うことを求めていく」と述べました。
れいわ 高井幹事長 “証人喚問で決着を”
れいわ新選組の高井幹事長は記者会見で「参考人聴取で、れいわ新選組は陪席のみで発言できないとのことだったので抗議の意味を込めて欠席した。われわれは一貫して証人喚問を求めている。意見の食い違いもあるので、証人喚問で決着をつけるべきだ」と述べました。
国会以外の場所で参考人聴取はリクルート事件以来2例目
衆議院の事務局によりますと、国会以外の場所で衆議院の委員会が参考人聴取を行うのは、1988年10月に「リクルート事件」をめぐって「税制問題等調査特別委員会」がリクルートの創業者に行って以来、2例目となります。
このときは、創業者が入院していたことから、病院で医師の立ち会いのもと、金丸信 委員長や与野党の理事らがおよそ1時間にわたって聴取を行いました。
そして、聴取のあとには、理事会で参考人の発言内容をまとめた上で、金丸委員長が記者会見し公表しました。
ただ、野党側は、参考人聴取では真相解明に至らなかったなどとして創業者の証人喚問を要求し、このあと衆議院の別の特別委員会で実施されました。
会計責任者 裁判での説明は
自民党旧安倍派の会計責任者は2022年までの5年間に
▽あわせておよそ6億7500万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載せず
▽議員側にキックバックした分などほぼ同額の支出も記載しなかったとして政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われ、禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定しています。
裁判で会計責任者は、パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を議員側にキックバックした運用について、「パーティーが終わってある程度、時期がたつと入金状況がわかる。それをもとに資料を作成して会長に説明し、ゴーサインが出てから具体的な作業をした」と述べました。
一方、キックバックをめぐる議員側との具体的なやり取りについては説明がなく、それぞれの議員側が収支報告書に記載しなかった経緯などは明らかになりませんでした。
また2022年、当時の安倍会長からキックバックを中止する方針が示されたものの、最終的に継続された経緯について「2022年7月末、ある幹部から、『ある議員が還付をしてほしいと言っている』という話があった。私は塩谷会長代理に相談して幹部を集めていただきたいとお願いして、下村さん、西村さん、世耕さん、塩谷さんが集まって話し合いが持たれた。いろいろな議論があったが、方向性として還付はしようということになった」と話しました。
この「ある幹部」や「ある議員」の名前については「ご本人がおっしゃらないようなので、ここでは差し控えさせて頂きます」などとして答えませんでした。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、衆議院予算委員会は、旧安倍派の会計責任者の参考人聴取を行いました。
安住予算委員長は、記者会見で聴取の内容を公表し、安倍元総理大臣が取りやめを決めた還付について、会計責任者は、当時の派閥幹部から再開を求められたと説明したことを明らかにしました。
自民党旧安倍派の松本淳一郎・会計責任者への参考人聴取は、東京都内のホテルで、およそ40分間、非公開で行われました。このあと予算委員会の安住委員長は国会内で記者会見し、聴取の内容を公表しました。
安住委員長は「質疑はおよそ40分にわたって理事会のメンバーなどで行い、先方は3人の弁護士が立ち会った」と述べました。
その上で、安倍元総理大臣が取りやめを決めた還付が再開された経緯について松本氏が「いったん中止となったことは事実だ。2022年7月に、一部議員たちの声を受けたある幹部から『再開をすべきだ、して欲しい』という話があり、その延長で8月に4人が集まって、ということだった」などと述べたことを明らかにしました。
ただ、安住委員長がその幹部は誰かと聞いたところ「本来ならご自身がお話しすることだと思う。名前の言及は差し控える。いまは現職ではない人だ」と述べたということです。
これに関連し、記者団から「『再開すべき』と松本氏に伝えた派閥幹部は、現職ではない、塩谷元文部科学大臣と下村元政務調査会長のどちらかではないか」と問われ、「今は議員ではないということなので、結論から言えばこの2人のうちのどちらかということになるのではないか。松本氏が、話せることに限度がある中でも、最大の疑問であるこの部分は明確に話していて、意外だった」と述べました。
そして、還付の取り扱いを話し合った2022年の8月の幹部協議について「方向性を決めた会だと認識している。幹部が『望んでいる方がいるので返しましょう』ということになった。ただ幹部の1人の塩谷氏は『やむなし』と言っていたと法廷でも申し上げた。4人の幹部で意見の対立はなかった」と述べたということで、松本氏は還付を再開する方針がこの協議で決まったという認識を示したことを明らかにしました。
幹部協議には、塩谷氏、下村氏、西村元経済産業大臣、世耕前参議院幹事長の4人が出席したことが明らかになっていますが、塩谷氏を除く3人は国会の政治倫理審査会で還付の再開に「結論が出たわけではない」などと説明し、これまで経緯などは明確になっていませんでした。
一方、議員に還付された資金を収支報告書に記載しない運用について松本氏は「私自身は指示したつもりはない。私が事務局長として就任する2019年以前から旧安倍派の議員はそれまでのやり方を踏襲していた。前任の事務局長にいつからやっているのか聞いたが『分からない』と言われ、それ以上、聞かなかった」と説明し、自身が事務局長に就任する前から長年の慣例になっていたという認識を示したことを明らかにしました。
ただ、「いわゆる新人の議員には、本人か秘書に『こういったやり方を行っている』と教えた。議員どうしで話があったかもしれない。引き継ぎとは違うかもしれないが、秘書から新人議員に対して伝わったかもしれない」と述べたということです。
さらに「ノルマ超過分の還流が20年以上前から行われていたと政治倫理審査会で証言した議員もいる」とただされたのに対し、松本氏は「可能性はあったかもしれないが、それがどういう使途になったかは承知していない」と述べたということです。
このほか、松本氏は「政治倫理審査会に出席した旧安倍派の幹部が『詳しい経緯は知らない』などと話したことをどう思うか」と質問されたのに対し「不思議なことだと思った。それぞれ議員の責任で話していることだから関知できない」と述べたということです。
一方、松本氏は「今回の参考人聴取をめぐり、旧安倍派の議員から圧力はあったか」と問われたのに対し、「そのような報道が出て、びっくりしている。連絡も、面と向かっても、圧力はなかった」と述べたということです。
安住委員長 旧安倍派幹部4人への聴取 “今のところ考えはない”
また、安住委員長は今回の参考人聴取について「この事件で問われなければならないのは旧安倍派の幹部議員であり、その人たちが政治倫理審査会で言ったことを事実かどうか補足するために、今回、参考人でぜひ来てほしいとお願いした。判決が下された方に出てきてもらうことは、とても大変なことで、自民党側の懸念も十分理解できたが、国政調査権をここで使うのは事実を確かめるためだったということは理解いただきたい」と述べました。
また、聴取に弁護士が同席していたものの質疑を止めることはなかったとした上で「松本氏はまったく弁護士を振り返ることもなく淡々と自分の記憶にあることや、分かる範囲のことは正直に述べていた印象だ」と述べました。
一方、記者団から2022年の8月の協議に参加した旧安倍派幹部の4人に聴取する必要があるか問われたのに対し「この先どうこうという話は今のところは私に考えはない」と述べるにとどめました。
さらに、旧安倍派の会長経験者などに聴取する必要性については「本当に何か新しい事実が出てこないと難しいだろう。受け手からすれば、検察の事情聴取と同等の重みがある。国政調査権を発動するのは何か本当にリアルな事実がないかぎり、予算委員長として行使するつもりはない。新たな事実があれば、それに基づいてまた協議することになると思う」と述べました。
塩谷元文部科学相 “自身の説明内容と整合性とれている”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した塩谷元文部科学大臣はコメントを発表し、松本会計責任者の発言は自身が説明してきた内容と整合性がとれているという認識を示しました。
この中では「私は、政治倫理審査会の場や記者会見などを通じ、私自身が認識している事柄について正直にすべて述べてきた経緯がある。一連の事件をめぐり、還付再開の認識が問われ続けているが、私が説明してきたことと松本氏の発言が一致しており、整合性はとれていると認識した」としています。
一方、「不記載の慣習がいつ、どのように始まったのか真相解明はいまだなされていないままで、将来に禍根を残すのではないかと危惧している」と指摘しました。
塩谷氏は去年3月の衆議院政治倫理審査会で、幹部協議について「多くの所属議員から『困っている』という意見があり、『ことしに限って継続するのはしかたがないのではないか』という話し合いがなされた。『継続していくしかないかな』という状況の中で終わったと思う」と述べていました。
下村元政調会長 “「還付再開」意見出ていると伝えた”
還付の取り扱いを話し合った2022年の8月の旧安倍派の幹部協議に出席した下村元政務調査会長は、NHKの取材に対し、2022年の7月ごろに、旧安倍派に所属する議員から「還付を再開して欲しい」という意見が出ていると、松本淳一郎・会計責任者に電話で伝えていたことを明らかにしました。
その上で「還付の再開を求めるようなことは全くしていない。あくまで、派閥内にこうした声があることを伝えただけだ。松本氏には『2人で決められることではないので、当時会長だった安倍・元総理大臣にもこうした声があることを私から伝える』と話した」と述べました。
また、下村氏は「8月の幹部協議でも再開は決まっていない。いつ、どのような経緯で再開されたのか分からない」と強調しました。
一方、下村氏は旧ツイッターの「X」にもコメントを投稿しました。
この中では「私自身はこれまでも記者会見や政治倫理審査会で繰り返し述べてきた通り、還付再開を松本氏に指示したことも、還付再開を決定した場にいたという事実も一切ない。これらの点は東京地検特捜部の事情聴取でも説明しており、旧安倍派のパーティー券の問題で私が何らかの責任を問われたこともない」としています。
西村元経済産業相 “還付を指示、了承したことない”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した西村元経済産業大臣はコメントを発表し、松本会計責任者の参考人聴取の内容に反論しました。
この中では「7月に安倍元総理大臣が銃弾に倒れた後、還付を求める声が上がり、8月上旬に幹部が協議したが、その場を含め、私が還付を指示したり、了承したことはない」としています。その上で「協議の際は還付は行わない前提で議論が行われていた。還付を求める声に対応するため、いろいろな意見が出た。松本氏の『8月上旬の協議の場で還付再開の方針を決めた』との認識とはまったく異なる。松本氏の認識は正確ではないと考えている」と強調しています。
そして、西村氏は、幹部協議では「ノルマ超過分」を還付するのではなく、その後に行われる議員個人の政治資金パーティー券を派閥が購入する案を代替案として提案したとした上で「この案を中心に何らかの対応をすることは共有した」と説明しています。
さらに「私自身は2022年に還付は受けていないが、8月10日に経済産業大臣となり、派閥の事務総長を離れた後に、一部の議員に現金での還付が再開された。還付が再開された経緯はまったく承知していない」としています。
世耕前参院幹事長 “8月の会合で還付決定の認識ない”
還付の取り扱いを話し合った2022年8月の旧安倍派の幹部協議に出席した世耕前参議院幹事長はコメントを発表し、松本会計責任者の参考人聴取の内容に反論しました。
この中では「8月5日の会合で現金による還付が決まった認識はない。『すでにオーバーして売ってしまっている議員は活動資金として当てにしている面もあるので何らかの資金手当が必要。現金による還付ではなく、各議員が開催するパーティー券を派閥が購入するなどの形で資金手当を行う』との方向が共有されたと認識している」としています。
そして「ノルマをオーバーしている参議院議員に直接電話し、パーティーの開催予定日などの確認を行い、8月9日に松本事務局長宛てにメッセージを送信して対応を要請し、了解した旨の返信を受信している。8月5日以降に私が参加したノルマオーバー分の取り扱いに関する打ち合わせなどはない」としています。
与党側筆頭理事 自民 井上氏 “誠実に答え よかった”
参考人聴取に出席した与党側の筆頭理事を務める自民党の井上信治氏は記者団に対し「松本氏はかなり緊張していたようだったが、率直に誠実にわれわれの質問に答えていただき、非常によかったと思う。自民党としては参考人招致やそれを多数決で決めることに反対していたが、委員会で議決された以上、協力して出席を働きかけてきた。そういう意味で参考人聴取が実現できたことはよかった」と述べました。
野党側筆頭理事 立民 山井氏 “意思決定の幹部責任重い”
参考人聴取に出席した野党側の筆頭理事の立憲民主党の山井和則氏は記者団に対し「実態解明へ大きく1歩前進したと思う」と述べました。その上で「私の印象では、少なくとも松本氏は旧安倍派の幹部が決めたことに職責上従っただけで、まったく主導はしていないということであり、改めて意思決定をした幹部の責任が重いと思った。これまでの政治倫理審査会での発言と食い違っている点がいくつかあるのでそこは確認する必要がある」と述べました。
聴取に同席 公明 赤羽氏 “意味のある参考人聴取だった”
衆議院予算委員会の委員で、参考人聴取に同席した公明党の赤羽一嘉氏は記者団に対し「率直に言ってやってよかったと思う。真相究明につながるような意味のある参考人聴取だった。松本氏は極めて実直で、うそを言っているわけではないということがよく分かった」と述べました。
聴取に同席 維新 三木氏 “真相究明に努めたい”
参考人聴取に出席した日本維新の会の三木圭恵氏は記者会見で「松本氏には質問に答えられる部分は真摯に答えてもらった。会計責任者だからといって松本氏だけが罪をかぶり、一緒になってやってきた幹部が1人も罪を償っていないのは非常に遺憾だ。 収支報告書に載せられないようなお金の使い方をしていたのではないかとか、まだまだ不透明なところがあるので、ほかの野党と連携して真相究明に努めていきたい」と述べました。
聴取に同席 共産 田村氏 “幹部だった政治家の証人喚問必要”
衆議院予算委員会の委員で参考人聴取に同席した共産党の田村貴昭氏は記者団に対し「松本氏が正直に答えた部分もあるかもしれないが、まだまだ表に出したくない、出せないというのはあるのではないか。松本氏では真実がわからないところがあり旧安倍派の幹部だった政治家から真実を聞く以外になく、証人喚問を行うことが必要だ」と述べました。
自民 森山幹事長 “解明につながった”
自民党の森山幹事長は党本部で記者団に対し「多数決による民間人招致という国会史上でも異例となるような議決に最終的に応じてもらい、深く感謝を申し上げたい。これまでの経過を含めて、誠実かつ虚心坦懐に話をしてもらえたのではないか。それぞれの会派が質問し、解明につながったと思う」と述べました。また、旧安倍派の幹部と松本会計責任者の証言に食い違いがあることから、党として旧安倍派の幹部などに改めて聴取する考えがあるか問われたのに対し「すでに個別に聴取をしているし、報告書もまとめて公表している」と述べ、聴取は行わない考えを示しました。
公明 斉藤代表 “解明進めるための第一歩”
公明党の斉藤代表は党の中央幹事会で「聴取が行われたこと自体は事実関係の解明を進めるための第一歩の機会になったと思う。聴取内容については今後精査するが、真相解明が非常に重要だという点は確認しておきたい」と述べました。
立民 重徳政調会長 “責任追及 政治の使命”
立憲民主党の重徳政務調査会長は記者会見で「松本氏自身が『大変複雑な気持ち』であるようだ。松本氏にすべての責任を負わせられる状況ではないのではないかという強い疑念があり、責任追及をしっかりとしていくことが政治の使命であり根幹だ」と述べました。
共産 田村委員長 “森元首相の証人喚問 求めていく”
共産党の田村委員長は記者会見で「松本氏は、キックバックが20年以上前から行われていたのではないかということについて『可能性はあったかもしれない』と述べていた。いつから始まったのかを明らかにするために塩谷氏、下村氏、西村氏、世耕氏とともに、安倍派の前身の派閥である森派の会長を務めていた森・元総理大臣の証人喚問を行うことを求めていく」と述べました。
れいわ 高井幹事長 “証人喚問で決着を”
れいわ新選組の高井幹事長は記者会見で「参考人聴取で、れいわ新選組は陪席のみで発言できないとのことだったので抗議の意味を込めて欠席した。われわれは一貫して証人喚問を求めている。意見の食い違いもあるので、証人喚問で決着をつけるべきだ」と述べました。
国会以外の場所で参考人聴取はリクルート事件以来2例目
衆議院の事務局によりますと、国会以外の場所で衆議院の委員会が参考人聴取を行うのは、1988年10月に「リクルート事件」をめぐって「税制問題等調査特別委員会」がリクルートの創業者に行って以来、2例目となります。
このときは、創業者が入院していたことから、病院で医師の立ち会いのもと、金丸信 委員長や与野党の理事らがおよそ1時間にわたって聴取を行いました。
そして、聴取のあとには、理事会で参考人の発言内容をまとめた上で、金丸委員長が記者会見し公表しました。
ただ、野党側は、参考人聴取では真相解明に至らなかったなどとして創業者の証人喚問を要求し、このあと衆議院の別の特別委員会で実施されました。
会計責任者 裁判での説明は
自民党旧安倍派の会計責任者は2022年までの5年間に
▽あわせておよそ6億7500万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載せず
▽議員側にキックバックした分などほぼ同額の支出も記載しなかったとして政治資金規正法違反の虚偽記載の罪に問われ、禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定しています。
裁判で会計責任者は、パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を議員側にキックバックした運用について、「パーティーが終わってある程度、時期がたつと入金状況がわかる。それをもとに資料を作成して会長に説明し、ゴーサインが出てから具体的な作業をした」と述べました。
一方、キックバックをめぐる議員側との具体的なやり取りについては説明がなく、それぞれの議員側が収支報告書に記載しなかった経緯などは明らかになりませんでした。
また2022年、当時の安倍会長からキックバックを中止する方針が示されたものの、最終的に継続された経緯について「2022年7月末、ある幹部から、『ある議員が還付をしてほしいと言っている』という話があった。私は塩谷会長代理に相談して幹部を集めていただきたいとお願いして、下村さん、西村さん、世耕さん、塩谷さんが集まって話し合いが持たれた。いろいろな議論があったが、方向性として還付はしようということになった」と話しました。
この「ある幹部」や「ある議員」の名前については「ご本人がおっしゃらないようなので、ここでは差し控えさせて頂きます」などとして答えませんでした。