
ウクライナ「停戦受け入れ用意」 ロシアは米と協議応じる姿勢 NHK 2025年3月12日 19時27分
ロシアによる軍事侵攻を巡り、ウクライナは、アメリカが提案した30日間の停戦を受け入れる用意があると表明しました。ロシア外務省は、近くアメリカとの協議に応じる姿勢を示していて、ロシア側の出方が焦点です。
サウジアラビアの西部ジッダで11日、アメリカとウクライナの高官協議が行われ、両政府は共同声明で「ウクライナは、アメリカが提案した即時かつ暫定的な30日間の停戦を受け入れる用意があることを表明した」と明らかにしました。
アメリカのルビオ国務長官は協議のあと、「われわれはこの提案をロシアに示し、彼らが和平に同意することを望む。ボールはいま、彼らの手の中にある」と述べ、今後、ロシアと協議を行う考えを示しました。
トランプ大統領 「米とロシアの代表 近く協議の予定」
さらにトランプ大統領も11日、ホワイトハウスで記者団に対し「プーチン大統領も合意することを願う。きょう、このあとか、あすにもわれわれは彼らと会うだろう」と述べ、アメリカとロシアの代表が近く協議する予定であると述べました。
その上で「今週、プーチン大統領と話をするのか」と記者団に聞かれたのに対し「そう思う」と述べました。
ロシア外務省 報道官「米側との接触 否定しない」
これに対し、ロシアメディアによりますと、外務省のザハロワ報道官も「今後の数日間でのアメリカ側との接触を否定しない」と述べ、近くアメリカとの協議に応じる姿勢を示していて、今後のロシア側の出方が焦点です。
また、ロシアの対外情報庁は、プーチン大統領の側近のナルイシキン長官が11日にアメリカのCIA=中央情報局のラトクリフ長官と電話で会談したと発表しました。
会談で両長官は「国際的な安定と安全保障を確保し、両国間の対立を減らすために定期的に連絡を取り合うことで合意した」としています。
ゼレンスキー大統領「停戦実現するかはロシアの出方次第」
ウクライナのゼレンスキー大統領は協議のあとSNSで、30日間の停戦についてすべての前線で完全な停戦を行う提案がアメリカ側からあったとしたうえで、「ウクライナは平和の用意がある。ロシアが戦争を終わらせるのか、続けるのかを明らかにしなくてはならない」と述べ、停戦が実現するかどうかはロシアの出方しだいだと強調しました。
また、協議を受けアメリカが、一時停止していたウクライナへの軍事支援などを再開すると発表したことをめぐり、ウクライナ大統領府の高官はSNSで「支援の再開を確認した」と述べたほか、ロイター通信はウクライナ政府高官の話として軍事情報の共有もすでに再開されたと伝えています。
キーウ市民 停戦実現に不信感も
サウジアラビアで行われたアメリカとウクライナの高官による協議で話し合われた30日間の停戦などについてウクライナの首都キーウの市民からは、期待する一方で、公正な平和につながるものなのかどうか不信感を抱く声も聞かれました。
42歳の男性は「アメリカと対話ができたことはいいことだが、この戦争は会議で解決する問題ではない」として期待感は低かったと述べました。
その上で30日間の停戦をロシアが受け入れるかどうかについては「受け入れないだろう。なぜなら彼らはウクライナに住む人々を排除することや土地を奪い、できる限りすべてを手に入れることが目的だからだ」と話し、停戦は実現しないという見方を示しました。
また28歳の女性は「30日間の停戦はロシアが応じるとしても、彼らは兵力を回復させ、弾薬や人的資源を補充する良い機会として利用すると思う」と話し、一時的に停戦してもロシア側が軍事力の増強に利用するだけだと不信感をあらわにしました。
その上で「戦争が早く終わるのならば、その方がいい。しかし、公正な平和が訪れてほしい。公正な平和のために、もう少し戦う必要があるのだとしたら、私たちは受け入れることはできる」と述べました。
また30歳の男性は「停戦は歓迎する。いま前線で戦っている人、後方にいる人、それにこの戦争に巻き込まれている人はみな、以前から平和を望んでいた。状況はベストではないが、受け入れなければならない」と述べました。
林官房長官「ロシア側の前向きな対応 強く期待」
林官房長官は12日午前の記者会見で「長く継続する戦闘の終結に向けたプロセスの重要な一歩として歓迎する。ロシア側による前向きな対応を強く期待する。わが国として引き続き国際社会と緊密に連携しながら公正かつ永続的な平和の実現に向け取り組んでいく」と述べました。
EUフォンデアライエン委員長「ボールはロシア側にある」
EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は11日、自身のSNSに投稿し、「ウクライナにとって公正で永続的な平和に向けた一歩となり得る。ボールはいま、ロシア側にある。EUはきたる和平交渉に向けて最大限の役割を果たす用意がある」として協議の結果を歓迎しました。
また、イギリスのスターマー首相は声明を出し、「われわれは永続的かつ確実な平和の実現に向けて努力を強める必要がある。ロシアも停戦と戦闘の終結に同意しなければならない」としたうえで、今週15日に各国の首脳を集めてこの先の対応について協議を行うとしています。
フランスのマクロン大統領もSNSに投稿し、「ボールはいま、明らかにロシア側にある。フランスはパートナーたちとともに、強固な安全の保証に裏打ちされた永続的な平和に向けて引き続き尽力する」とコメントしています。
米国務省 元特別代表“共同声明でロシアにシグナル”
1期目のトランプ政権で、ウクライナ政策を担当する国務省の特別代表を務めたカート・ボルカー氏がNHKのインタビューに応じ、今回の協議の結果について「ウクライナとアメリカが初めて一緒に『今すぐ停戦を』と言える状況になった。そして今度はロシアへと焦点が移った。率直に言ってもっとも重要だったのは共同声明を出したという事実だ。なぜなら、プーチン大統領に対し、もしも停戦に合意しなければ、ロシアはアメリカとウクライナの両方と対じすることになるというシグナルを送ったことに等しいからだ」と強調しました。
そして、予想される次のステップについてボルカー氏は「アメリカとロシアのあいだで、対面か電話でやりとりがあることになる。そこでは、アメリカとウクライナのあいだで合意した内容が伝達され、ロシアに対し、それを受け入れるよう迫る。そこでは、ロシアが受け入れないのであれば制裁を科すという暗黙の脅しがあるだろう。ウクライナとの協議もこれが最後にはならない。これが最初の協議であり、鉱物資源をめぐる合意への署名を含めて、さらなる議論が行われることになる」と述べ、停戦に向けた協議の始まりに過ぎないという認識を示しました。
そして、ロシアの今後の出方については「おそらくは交渉を持ちかけようとするはずで『自分たちにはこれが必要だ』『それには同意できない』などと言って、西側諸国やウクライナに対してロシアに何かを提供するよう試みるだろう」という見方を示しました。
トランプ大統領 恒久的な停戦への筋書きは
そのうえで、トランプ大統領が描く恒久的な停戦に向けた筋書きについてボルカー氏は3つの柱があると指摘し「1つ目は即時停戦の実現だ。彼は人々が殺し合う状況を止めたい。2つ目はアメリカとウクライナのあいだの経済面での合意だ。鉱物資源などを通じてウクライナ自身が防衛にかかるコストを払っているのであって、アメリカの納税者は払っていないという状況にしたい。そして3つ目はロシアがウクライナを再び攻撃することの抑止だ。トランプ氏はこれをヨーロッパに主導させたい。アメリカにすべて依存するのではなく、ヨーロッパが安全の保証や防衛するための軍を提供し、ロシアからの攻撃を抑止する状況にしたいのだ」と説明しました。
そして、ウクライナでの恒久的な停戦が実現する時期についてボルカー氏は「誰もそれは知り得ないが、あえて言えば、私はこの秋ではないかと思う。ロシアのプーチン大統領が外貨を使い果たすのがそのころだからだ」と分析しました。
ロシアによる軍事侵攻を巡り、ウクライナは、アメリカが提案した30日間の停戦を受け入れる用意があると表明しました。ロシア外務省は、近くアメリカとの協議に応じる姿勢を示していて、ロシア側の出方が焦点です。
サウジアラビアの西部ジッダで11日、アメリカとウクライナの高官協議が行われ、両政府は共同声明で「ウクライナは、アメリカが提案した即時かつ暫定的な30日間の停戦を受け入れる用意があることを表明した」と明らかにしました。
アメリカのルビオ国務長官は協議のあと、「われわれはこの提案をロシアに示し、彼らが和平に同意することを望む。ボールはいま、彼らの手の中にある」と述べ、今後、ロシアと協議を行う考えを示しました。
トランプ大統領 「米とロシアの代表 近く協議の予定」
さらにトランプ大統領も11日、ホワイトハウスで記者団に対し「プーチン大統領も合意することを願う。きょう、このあとか、あすにもわれわれは彼らと会うだろう」と述べ、アメリカとロシアの代表が近く協議する予定であると述べました。
その上で「今週、プーチン大統領と話をするのか」と記者団に聞かれたのに対し「そう思う」と述べました。
ロシア外務省 報道官「米側との接触 否定しない」
これに対し、ロシアメディアによりますと、外務省のザハロワ報道官も「今後の数日間でのアメリカ側との接触を否定しない」と述べ、近くアメリカとの協議に応じる姿勢を示していて、今後のロシア側の出方が焦点です。
また、ロシアの対外情報庁は、プーチン大統領の側近のナルイシキン長官が11日にアメリカのCIA=中央情報局のラトクリフ長官と電話で会談したと発表しました。
会談で両長官は「国際的な安定と安全保障を確保し、両国間の対立を減らすために定期的に連絡を取り合うことで合意した」としています。
ゼレンスキー大統領「停戦実現するかはロシアの出方次第」
ウクライナのゼレンスキー大統領は協議のあとSNSで、30日間の停戦についてすべての前線で完全な停戦を行う提案がアメリカ側からあったとしたうえで、「ウクライナは平和の用意がある。ロシアが戦争を終わらせるのか、続けるのかを明らかにしなくてはならない」と述べ、停戦が実現するかどうかはロシアの出方しだいだと強調しました。
また、協議を受けアメリカが、一時停止していたウクライナへの軍事支援などを再開すると発表したことをめぐり、ウクライナ大統領府の高官はSNSで「支援の再開を確認した」と述べたほか、ロイター通信はウクライナ政府高官の話として軍事情報の共有もすでに再開されたと伝えています。
キーウ市民 停戦実現に不信感も
サウジアラビアで行われたアメリカとウクライナの高官による協議で話し合われた30日間の停戦などについてウクライナの首都キーウの市民からは、期待する一方で、公正な平和につながるものなのかどうか不信感を抱く声も聞かれました。
42歳の男性は「アメリカと対話ができたことはいいことだが、この戦争は会議で解決する問題ではない」として期待感は低かったと述べました。
その上で30日間の停戦をロシアが受け入れるかどうかについては「受け入れないだろう。なぜなら彼らはウクライナに住む人々を排除することや土地を奪い、できる限りすべてを手に入れることが目的だからだ」と話し、停戦は実現しないという見方を示しました。
また28歳の女性は「30日間の停戦はロシアが応じるとしても、彼らは兵力を回復させ、弾薬や人的資源を補充する良い機会として利用すると思う」と話し、一時的に停戦してもロシア側が軍事力の増強に利用するだけだと不信感をあらわにしました。
その上で「戦争が早く終わるのならば、その方がいい。しかし、公正な平和が訪れてほしい。公正な平和のために、もう少し戦う必要があるのだとしたら、私たちは受け入れることはできる」と述べました。
また30歳の男性は「停戦は歓迎する。いま前線で戦っている人、後方にいる人、それにこの戦争に巻き込まれている人はみな、以前から平和を望んでいた。状況はベストではないが、受け入れなければならない」と述べました。
林官房長官「ロシア側の前向きな対応 強く期待」
林官房長官は12日午前の記者会見で「長く継続する戦闘の終結に向けたプロセスの重要な一歩として歓迎する。ロシア側による前向きな対応を強く期待する。わが国として引き続き国際社会と緊密に連携しながら公正かつ永続的な平和の実現に向け取り組んでいく」と述べました。
EUフォンデアライエン委員長「ボールはロシア側にある」
EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は11日、自身のSNSに投稿し、「ウクライナにとって公正で永続的な平和に向けた一歩となり得る。ボールはいま、ロシア側にある。EUはきたる和平交渉に向けて最大限の役割を果たす用意がある」として協議の結果を歓迎しました。
また、イギリスのスターマー首相は声明を出し、「われわれは永続的かつ確実な平和の実現に向けて努力を強める必要がある。ロシアも停戦と戦闘の終結に同意しなければならない」としたうえで、今週15日に各国の首脳を集めてこの先の対応について協議を行うとしています。
フランスのマクロン大統領もSNSに投稿し、「ボールはいま、明らかにロシア側にある。フランスはパートナーたちとともに、強固な安全の保証に裏打ちされた永続的な平和に向けて引き続き尽力する」とコメントしています。
米国務省 元特別代表“共同声明でロシアにシグナル”
1期目のトランプ政権で、ウクライナ政策を担当する国務省の特別代表を務めたカート・ボルカー氏がNHKのインタビューに応じ、今回の協議の結果について「ウクライナとアメリカが初めて一緒に『今すぐ停戦を』と言える状況になった。そして今度はロシアへと焦点が移った。率直に言ってもっとも重要だったのは共同声明を出したという事実だ。なぜなら、プーチン大統領に対し、もしも停戦に合意しなければ、ロシアはアメリカとウクライナの両方と対じすることになるというシグナルを送ったことに等しいからだ」と強調しました。
そして、予想される次のステップについてボルカー氏は「アメリカとロシアのあいだで、対面か電話でやりとりがあることになる。そこでは、アメリカとウクライナのあいだで合意した内容が伝達され、ロシアに対し、それを受け入れるよう迫る。そこでは、ロシアが受け入れないのであれば制裁を科すという暗黙の脅しがあるだろう。ウクライナとの協議もこれが最後にはならない。これが最初の協議であり、鉱物資源をめぐる合意への署名を含めて、さらなる議論が行われることになる」と述べ、停戦に向けた協議の始まりに過ぎないという認識を示しました。
そして、ロシアの今後の出方については「おそらくは交渉を持ちかけようとするはずで『自分たちにはこれが必要だ』『それには同意できない』などと言って、西側諸国やウクライナに対してロシアに何かを提供するよう試みるだろう」という見方を示しました。
トランプ大統領 恒久的な停戦への筋書きは
そのうえで、トランプ大統領が描く恒久的な停戦に向けた筋書きについてボルカー氏は3つの柱があると指摘し「1つ目は即時停戦の実現だ。彼は人々が殺し合う状況を止めたい。2つ目はアメリカとウクライナのあいだの経済面での合意だ。鉱物資源などを通じてウクライナ自身が防衛にかかるコストを払っているのであって、アメリカの納税者は払っていないという状況にしたい。そして3つ目はロシアがウクライナを再び攻撃することの抑止だ。トランプ氏はこれをヨーロッパに主導させたい。アメリカにすべて依存するのではなく、ヨーロッパが安全の保証や防衛するための軍を提供し、ロシアからの攻撃を抑止する状況にしたいのだ」と説明しました。
そして、ウクライナでの恒久的な停戦が実現する時期についてボルカー氏は「誰もそれは知り得ないが、あえて言えば、私はこの秋ではないかと思う。ロシアのプーチン大統領が外貨を使い果たすのがそのころだからだ」と分析しました。