フィナンシャルタイムズよ。
安倍晋三氏は12月に首相に就任した際、メッセージをふたつ中央銀行に届けた。ひとつは2%という明確なインフレ目標へと政策を移行すること。もうひとつは、その目標と整合性のある行動を取ることである。日本銀行が今週発表した政策修正は安倍氏の最初の要望にしか応えていない。
日銀の生半可な対応は残念なことだ。従来の0~2%という領域のインフレ目標はあまりにも保守的過ぎた。日銀の極めて臆病な金融政策が日本のデフレ長期化の一因だ。だが、目標を変更したからといってそれでインフレが生じるわけではない。日銀が新しい目標を守るとの強い姿勢を示さないなら、企業も消費者も現金を使わずに懐に抱え込み続けるだろう。
日銀は今回、即時に大胆な金融緩和に踏み切るべきだった。だが、新たな量的緩和の実施を2014年1月に延期した。また主に短期国債を買い入れの対象にすると発表した。それはこれまで効果がなかった戦略である。さらに、新しい目標を達成する具体的な時期を約束しなかった。当然、市場は懐疑的に反応した。円相場はドルとユーロに対して上昇した。
日銀の独立性を危惧する人たちは、日銀が安倍氏のすべての要望を受け入れなかったことに一安心している。その一人がドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁だ。彼は日本政府が金融政策に干渉していると批判したが、批判は的外れだ。財務相が金利を動かすようなことがあってはいけないが、中銀の金融政策が経済に有害であるときに政府が中銀と意見を交換することは適切だ。安倍氏がインフレを柔軟に受け入れる総裁を任命することも適切だ。
今後、安倍氏自身の責任がなくなるわけではない。日本が持続的成長に復帰するためにはサービス部門の規制緩和を進め、労働市場への女性の参加を増やさなければならない。膨大な債務の問題にも対処しなければならない。経済が弱くならない限り、予定通り消費税を15年までに10%へと今の水準の2倍に引き上げるべきだ。政治的には難しい課題だが、極めて重要だ。
ゼロ金利状態がずっーーーーーーと続いているというのに、さらにマネー増やせ、だって。あんたの国から誕生した不世出の大経済学者、ジョン・メイナード・ケインズは「泣いてる」ぜ。ケインズ先生だったらこういうだろう。
『日本はずっとデフレなんだろ。だったら貨幣よりも実態経済を立て直すことが大事だ。そのためには「有効需要」の創出は欠かせない。』
間違っても、バラマキ三昧の「無効需要」ではないからね。
思えば、民主党が政権を奪取した直後、子ども手当2万7千円/月、高速道路の無料化、農業戸別補償制度など、といった施策に加え、農業の六次産業化や林業再興、さらには、「新しい公共」を利用した介護・医療サービスの充実、なんてこと言ってなかったっけ。要するに、これらは皆、「有効需要創出」施策ばかりだ。
しかも民主党政権初期には、特殊法人の見直し、撤廃を徹底的に洗いなおす、としていたはずだ。
ところが、既得権益をむさぼる連中がこともあろうか、それらを「バラマキ」などとほざいた結果、民主党政権末期にはほとんどが「骨抜き」にされてしまった。そして自民・公明の「悪魔連合」政権下では、すっかりこれらの施策自体が無視されようとしている。
で、結局はマネーを増やせ!などと、もはやその「本拠地」であったアメリカでさえもやろうとしなくなったことをやっている。
加えて自公政権の質の悪いところは、財政出動も行うが、そのほとんどが、もはや「20世紀型」というしかない大型公共事業ばかり。そのため、10年間で200兆円も使う予定だという。
そんなことでは、消費税率を20%にしようが30%にしようが、財政再建なんてできるわけがない。それよりも、目先の株高、円安基調なんて作ったところで、実需が伴わなければ何もならない。今の株高基調は、要するに、土建屋や輸出屋が、民主党政権時代には苦しめられたが、自公政権ではそうではなくなるはず、という先行きの期待感が買われているに過ぎない。現実的に、「これは大変なことになってしまう!」と市場筋が思えば、たちまち株安基調へと入ってしまうだろう。
よって、今後怖いのは、「トリプル安」に加え、それに連動して起こりうる可能性があるスタグフレーション。つまりは、最悪の経済状況へと導かれることだ。
と考えると、思うに、日銀の「中途半端」と思われる量的緩和政策は、実は意外と的を得たやり方ではないか、とも思えるわけ。最初に話は戻るけど、日本はもう何年来ゼロ金利政策が続けられている。にもかかわらず、投資は個人も企業も伸びない。つまりは、カネが必要以上に溜め込まれすぎていて、経済循環が低調に推移していると言わざるを得ない。個人消費の伸び悩みを将来の人口減だけの原因としている限り、内需だって伸びていかない。そんな実態経済下で、「もっとマネー!」なんて言ったところで、誰も投資なんかしないし、消費だってするもんか。
ほんと、今思うと民主党政権初期時代が「恋しい」よ。早く「政官財マ」の既得権益カルテットが崩壊し、新たな権益体制へと変わってくれないかな。