自宅で一夜を過ごした後、敦子は素直に病院へ戻っていった。
誠二はほっとしたが、複雑な気持ちが残った。
以前の彼女と全く違う一面を見せつけられ、その独得の雰囲気と巧みな誘惑に呑み込まれて、危うく最後まで行きつくところだったが、ぎりぎり踏みとどまった。しかし二人が、互いにかなり激しい行為に及んだのは事実なのだ。夫婦の愛情、そんなものとは違う、敦子の危機感からだろうが、どう理解してよいか分からない。
誠二は病院に会いに行く回数が増えてきた。敦子がどうしたいのか、見守っているのだが、先日の事など何もなかったかの様に、本を読むか、横になっているだけで話も殆どしない、以前にかえってしまった。
誠二はただ家に戻る気になれず、といってゆりこに会うのも憚られて、19時少し前に 椿 へ一人で寄ってみた。空いていて、カウンターは誠二だけで女将もまだらしい。
「女将さん、何時頃来るの?」
「今日は20時過ぎになると思うけど」
顔見知りの、頼子というアルバイトの姉さんと時間潰しに話し出した。
「僕と一緒にくる人のお父さんは相変わらずよく来てる?」
「ああ、沢田さんでしょう、週二、三回ってところかしら」
「女将さんとうまくいってそう」
「どうかしら、女将さん皆に愛想がいいからね」
「なんでも好きなものを頼んでよ、ご馳走するからさ」
「わー有難う、きょうのお刺身いいのが入っているのよ、二人前、いいんですか」
「鍋料理も取ろうよ、今なら僕の相手をしていても大丈夫だろう」
誠二は新しい客が来る前に、少しでも話を集めようと躍起になっていたが、その中で気になるものがあった。
それは以前にも聞いた、60過ぎのお金持ちそうな男性が、殆ど毎日迎えにきていて、時々一緒に出勤してくる、今日あたり一緒に来るのではないかと言うのだ。
その話が出てすぐに、二人が店に入ってきた。
誠二はほっとしたが、複雑な気持ちが残った。
以前の彼女と全く違う一面を見せつけられ、その独得の雰囲気と巧みな誘惑に呑み込まれて、危うく最後まで行きつくところだったが、ぎりぎり踏みとどまった。しかし二人が、互いにかなり激しい行為に及んだのは事実なのだ。夫婦の愛情、そんなものとは違う、敦子の危機感からだろうが、どう理解してよいか分からない。
誠二は病院に会いに行く回数が増えてきた。敦子がどうしたいのか、見守っているのだが、先日の事など何もなかったかの様に、本を読むか、横になっているだけで話も殆どしない、以前にかえってしまった。
誠二はただ家に戻る気になれず、といってゆりこに会うのも憚られて、19時少し前に 椿 へ一人で寄ってみた。空いていて、カウンターは誠二だけで女将もまだらしい。
「女将さん、何時頃来るの?」
「今日は20時過ぎになると思うけど」
顔見知りの、頼子というアルバイトの姉さんと時間潰しに話し出した。
「僕と一緒にくる人のお父さんは相変わらずよく来てる?」
「ああ、沢田さんでしょう、週二、三回ってところかしら」
「女将さんとうまくいってそう」
「どうかしら、女将さん皆に愛想がいいからね」
「なんでも好きなものを頼んでよ、ご馳走するからさ」
「わー有難う、きょうのお刺身いいのが入っているのよ、二人前、いいんですか」
「鍋料理も取ろうよ、今なら僕の相手をしていても大丈夫だろう」
誠二は新しい客が来る前に、少しでも話を集めようと躍起になっていたが、その中で気になるものがあった。
それは以前にも聞いた、60過ぎのお金持ちそうな男性が、殆ど毎日迎えにきていて、時々一緒に出勤してくる、今日あたり一緒に来るのではないかと言うのだ。
その話が出てすぐに、二人が店に入ってきた。