鍵盤楽器は瞬時に和音が出せるメリットがある。
複数の弦を押さえて音を出す弦楽器に比べ、叩きさえすれば美しい和音も不協和音も出る。
どんな音でも出せるってことは、音楽理論を知らないと思い通りの音にならないとも言える。
ピアノが両手で簡単に発音できるのに対してビブラフォンやマリンバはマレットを使ってまるで別物の奏法にも見えて来る。
ニューヨーク出身のマーティン・デニーがアーサー・ライマンに出会ったのは1951年のこと。
ハレクラニホテルのクラークを務めていたアーサー・ライマンの演奏を聴いたマーティン・デニーは彼をミュージシャンとして招こうとする。
月給280ドルのクラーク勤務から週給100ドルのミュージシャンとなった彼はエキゾチック・サウンドへの道を歩むことになる。
ピアノの音は長い時間聴いていると飽きる。
ジョージ・ウィンストンが彼のコンサートの合間に、ハーモニカを吹いたりスラックキー・ギターを弾いたりするのはちょっとした息抜きになる。
マーティン・デニーが、ハワイという楽園でピアノに加えてビブラフォンの音の広がりを求めたのは当然の成り行きだった。
ハワイのホテルで演奏を続けるうちにバード・コールで鳥の鳴き声を出す演出を考えたのはアーサー・ライマンだったようだ。
ラテンパーカッションとバード・コール、ピアノとビブラフォンによってジャズコードをまぶした演奏はエキゾチックを感じさせるに十分だ。
高層ビルが並ぶワイキキのホテルのラウンジで、トロピカルのリゾート地にくつろぐ雰囲気作りに必要なサウンドだったのかもしれない。
アーサー・ライマン楽団は日系人ミュージシャンがいたこともあってか度々来日している。
当時の白黒TV番組にゲスト出演して演奏した映像の記憶が鮮明に残っている。
エキゾチック・サウンドはいつまでも気になる存在だ。
SL列車の中で食した日本各地のお弁当の思い出をいつまでも引きずるように時々引っ張り出したくなる。
ジャズのようでもあり、ポップスでもあり、BGMでもある。
そこにノスタルジーを感じさせる何かがあるから魅かれるのだろう。
ポリネシアは我々の同胞でありひょっとするとまるで別の進化を遂げたルーツかも知れない。
Arthur Lyman "Polynesia" 1965 STEREO Exotica Lounge LP FULL ALBUM
Ethel Azama "Exotic Dreams" 1959 STEREO FULL ALBUM Exotica Martin Denny
Martin Denny - Misirlou