ベースマンならアムペグの製品開発の動向は気になる。
60年代の真空管全盛時代から愛され続けている「V4B」や「B-15N」などこのメーカーでないと出せない低音のファンは多いと思う。
70年代以降ミュージカル・アンプのソリッドステート化によって、軽量化、高出力化が行われた。
時代の流れと合理性、経済性の点では優れていると思うが、カタログデータでは音の良し悪しはわからない。
ベースアンプに求められる自然なディストーションと輪郭のくっきりした音色はアムペグの持ち味だ。
「Sans Amp」などベースに関するエフェクターは、この音色とディストーション、ブースト効果を求め続けているに違いない。
数年前に「Heritage B-15N」というモデルが発表されている。
70年代の音楽雑誌に掲載されている「B-15N」は、定価278,000円とあるので、最新版はほぼ2倍の価格になったことになる。
「ポータフレックス」と呼ばれるアンプヘッドをスピーカー上部にビルトインするアイデアは継承されているようだ。
真空管式のミュージカル・アンプは、トランスがとてつもなく重いのでこのアイデアはそんなに奏功するものでもない。
ただ長期保管や真空管部分の埃対策という意味では優れている。
「Fender」社の真空管式アンプ類が逆向きに設置されているのと同様、衝撃に強いというメリットを狙ったのかもしれない。
70年代の「B-15N」は実行出力が30W、その上の「B-15S」ですら60Wである。
ロックにはとても物足りない出力数なのだが、音圧が結構あることときれいな音が広がることから音量不足を感じない。
酔っ払って寝っ転がって弾いた即興演奏がそのままレコーディングされたという逸話のジェームス・ジェマーソンも愛用した。
「Fender Precision Bass」との組み合わせなら太い低音が出るだろう。
日本でも愛用者は多かった。
「Ampeg Baby Bass」というスタンディング・ベースとの組み合わせは今でもファンがいる。
ポータフレッックスとスタンディングベースの組み合わせは、当時から高価でありウッドベースからの乗り換え組には垂涎の的だったろう。
ただしかさばって重いという呪縛からは抜け出せなかった。
「いい音を追求するには若干の犠牲を払わなければならないのだよ」と自身に言い聞かせては真空管アンプを持ち出す。
近年の傾向として驚くべきコンパクトサイズの一体型、あるいはセパレート型のベースアンプの台頭がある。
電子的な、あるいはエンクロージャーの設計によってポータブルでありながら、十分な低音を稼ぐ設計となっているようだ。
コンサート、ライブ会場では、これらのベースアンプからPAに直結するのだろう。
ただそれらは残念ながら「仮想」「ヴァーチャル」な低音でしかないような気がするのは私だけではないと思う。
十分で豊かな低音を稼ぎだすには、38㎝のスピーカーととてつもなく重いトランス、光を放つ真空管たちが鎮座ましていないといけないと思うのだ。
とは言ってもなかなか出番がなくなってきているのも事実。
コンサートホールや野外イベントでのPA屋さんからは持ち込みを嫌がられるし、持っていったところで「D.Iからダイレクトに音をください」と言われてしまう。
最早ミュージカル・アンプのスピーカーの前にマイクを立てるなどという繊細さを求めること自体、古式ゆかしいことになってしまった。
自分の音を思うように表現するためには「お膳立て」を人に頼ってはいけない。
お膳立てをしてやろうという人は案外音楽をわかっていなくてご自分の都合を優先する、それがビジネスだと思っている。
一方、マイノリティの音楽ほど繊細であって細心の感覚を持ち合わせていないと本質に近づくことはできない。
アコースティックの音楽をやるってことは、繊細さを要求される。
野太い音をワイルドに出しているだけのように聴こえるベースも、案外「繊細さを要求されて成立する」パートだ。
繊細な心がない人は音楽が大雑把になってしまう、、いや音楽は繊細な気持ちを教えてくれる、、、はずだが、、、
【デジマートNew Gear Showcase】Ampeg / Heritage B-15N
Marvin Gaye - 'Whats Going On', with James Jamerson on Bass
James Jamerson Tribute
NAMM '13 - Ampeg Heritage B-15N Combo Demo