中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

真綿から糸をつむぐ―紬きもの塾19 染織実習1

2019年06月07日 | 紬きもの塾’17~’20

工房展の前に染織実習コースの方に糸つむぎの講習をしました。

糸つむぎは、私は郡上紬の宗廣先生から受け継いだ久米島式を採用していますが、結城紬のつくし方式の良いところも加え、また自分なりの工夫もしています。やや太めの糸(着尺の緯糸向き)を引き出すのに向いています。

色々な引き出しかたがあるのですが、大事なことは真綿の長繊維をなるべくちぎらないよう気をつけると毛羽立ちの少ない糸がつむげます。
私は真綿をほとんど引っ張らずにそのまま台に掛け、上の真綿から1枚ずつ綺麗に片付けながらつむいでいきます。
上の画像は真綿を4g掛けたところ。

まずは私が2尺ほどデモンストレーションしながら引き出し方のポイントを説明します。
その時、よく見ていることが大事です。手の位置や動かし方、真綿の量をどれぐらい摘まむかなど真似することがまず大事です。
理屈が先に立つとなかなかうまくいきません。理屈は後からついてきます。

どうしても素材や道具を自分に引き寄せようとしたり、制圧するようなやり方をしてしまいがちですが、それではうまく糸を引き出せません。

真綿は理に適わないことには付き合ってくれません。正直です。
真綿の繊維の量をいつも同じぐらい摘まむよう見極め、単純な道具を上手に使いこなしながら、力強く大らかな味わいのある美しい糸をイメージしてつむぐことが大切です。
織をしている人の方が糸のかたちをイメージしやすいです。初めての方は難しいと思いますが、それでも最初から上手な方というのが稀にいらっしゃいます。。^₋^

今回は4gの真綿を1時間半かけて引いてもらいました。
一反分の緯糸は約380g~400gですので100分の1位つむいでもらいました。

上の画像は真綿がたっぷり引き出されています。ちょっと多すぎですが、、。(^^;

程よい真綿の量を見極め、上の方からをひとまとめにして、

右手の指に水を付けながら捻るようにして左手元までしっかり抑えていきます。

つむぎ終わったら綛揚をします。おはじきは糸を綛揚げする際に糸同士がくっついて引っ張り上げられないようにするためです。
豆などでも良いです。
着尺用3本合わせぐらいの糸をつむいでもらいました。これはつむぐにはとても難しい太さなのです。
でも、とにかく4gの真綿から安定した太さの糸がつむげました。

みなさん真剣に取り組んでいます。

この糸は7月に工房の庭木で染め、11月には実際に織ってもらうことになります。

いつかせめてマフラー分ぐらいは全てつむいで織ってもらいたいですが、、。
真綿から糸をつむぐことは大変な労力を要する仕事ですが、心を無にしていける仕事です。
有史以来、人が生きていくための根源的な仕事でした。
多くの方に体験してもらいたいです。

仕事としていくには賃金も法外に安く、お小遣い稼ぎぐらいにしかならないので、後進が育ちませんでした、というより育てようとはしてこなかったと思います。以前手紡ぎ糸を購入していた長野の糸商さんはもう十数年前に廃業されてしまいました。私は機織りがきつくなったら、糸つむぎをたくさんしたいと思っています。

繭から引き出す座繰り糸は赤城でもまだいらっしゃいますし、後継者の育成もされているようですが、昔あった座繰りの太い糸は引ける方がいなくなったということで、寂しい限りです。私はショールなどに以前はたくさん使ってきました。

紬は経糸が大事なのですが、緯糸の真綿の毛羽ばかりが目立つ紬も多いです。
タテヨコバランスの取れた、それでいて味わいのある力強く洗練された紬を織りたいです。

詳しい紬糸のことは次回紬塾の講義で話ます。







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