河北新報より転載
津波再現100回 宮古工高生、模型で小中生に備え訴え

手作りの模型で津波が襲来する様子を再現する宮古工高の生徒ら=6月20日、宮古市鍬ケ崎小
岩手県宮古市の宮古工高の生徒たちが市内の小中学校などに出向き、模型を使って疑似津波を実演する取り組みが7日、100回の節目を迎える。避難や備えの大切さを訴えようと東日本大震災前から、精巧な縮尺模型で津波が押し寄せる様子を示してきた。今月下旬には、南海トラフの巨大津波が予想される徳島県で実演する。
実演会は機械科3年の選択授業の一環として、2005年度に始まった。実習教諭の山野目弘さん(61)の指導の下、生徒たちが模擬津波を披露してきた。
模型はベニヤ板や紙粘土で作り、海底や防潮堤なども含めた地形を再現。1000分の1~2万5000分の1の縮尺で、大きさは1.8メートル四方。これまで、宮古市や隣の山田町の沿岸部をモデルにした計10基を製作した。現在は仙台湾などの模型を手掛けている。
模型の海側には、波高などを調整できるモーター駆動の造波装置が取り付けてあり、色付きの「津波」を起こす。生徒たちは実演とともに、津波発生のメカニズムや過去の津波被害などを説明する。
99回目となった宮古市鍬ケ崎小では、児童たちが防潮堤を乗り越え市街地をのみ込む津波に見入った。生徒たちは「どこに逃げたらいいのか、家族で考えて」と呼び掛けた。100回目の実演は同市磯鶏小で行う。
震災後は県外からの視察が増え、大学などに出向く機会も多い。今月下旬には、南海トラフの巨大地震による津波被害が懸念される徳島県で、小中学生らを対象に行い、自分たちの被災体験も語る。
佐々木柊亮君(17)は「津波の恐ろしさとともに、とにかくてんでばらばらに逃げる『津波てんでんこ』の教えを伝えたい」と話す。