河北新報より転載
「風化させぬ」七夕に託す 被爆、震災経験の女性 仙台

仙台七夕まつり(8月6~8日)で「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ」を呼び掛ける折り鶴の吹き流しの制作が進んでいる。広島で被爆し、東日本大震災も経験した仙台市青葉区貝ケ森の小林文江さん(77)が制作に参加して10年。「災害の過去は必ず風化してしまう。繰り返し思いを発しなければなりません」と話し、鶴を折り続ける。
広島市出身の小林さんは国民学校3年生のとき、1945年8月6日の原爆投下で被爆。市中心部にある自宅から約8キロ離れた場所に疎開していて無事だったが、原爆で父と長兄を亡くした。
同市出身の会社員の夫(故人)と結婚し、約40年前に仙台に来た。朗読ボランティアをしていて、友人から折り鶴作りの活動をする市民団体「平和を祈る七夕・市民のつどい」の活動に誘われた。
常々、周りのヒロシマへの関心が薄いことを残念に思っていた。「古里が破壊され、大事な人を亡くし、広島出身者への差別…。そんな本当の悲劇が伝わっていないように感じる」
全国的に震災への関心が低下し、福島第1原発事故の風評被害などがヒロシマの状況と重なって見えるという。
どんな大きな災いでも、体験していない人に理解してもらうのは難しい。それでも「二度とヒロシマのようなことが起きてほしくないし、震災被害も正しく伝わってほしい」と願い、指先に思いを込める。
平和七夕は1976年に始まった。参加者は毎年1万人以上で、全国から約100万羽の鶴が寄せられ、吹き流しにする他、まつりの観光客に配る首飾りにしている。
市民のつどい代表の油谷重雄さん(70)=仙台市泉区=は「折り鶴を通して平和や復興の思いを共有したい。一人でも多くの人に、鶴を折ったり、糸に鶴を通したりする作業に参加してもらえるとありがたい」と話す。
連絡先は油谷さん022(378)5765。
2014年07月06日日曜日