東京新聞より転載
支援、祈願いつまでも 被災地に寄り添う成田山新勝寺
2014年3月26日
「被災地に寄り添いたい」と話す山崎照義寺務長=福島県いわき市で
東日本大震災の翌日から毎日、お護摩祈祷(きとう)で被災地の復興を祈願している成田山新勝寺。その活動は現地へのお見舞いや慰霊法要、義援金の寄託、力仕事のボランティアなど幅広い。3年が経過して記憶も薄れつつある中、新勝寺の被災地支援は「増えることはあっても減ることはない」という。 (小沢伸介)
「普段は元気にやっているつもりなんですけど、やっぱりダメ。涙が止まらない」
まだ残雪が目立つ福島県二本松市の仮設住宅。春彼岸の法要の準備をテキパキこなしていた天野淑子さん(62)は、新勝寺の僧侶たちに接した途端に脱力し、弱々しく法衣にしがみついた。
原発事故で同県浪江町を追われ、各地を転々と避難した末にたどり着いた人たちが暮らす。近くに町役場の出張所が置かれ、災害公営住宅(復興住宅)の建設計画もあり、故郷で再び暮らせる見込みはない。
震災当初に成田に避難し、この仮設住宅でも過ごした同県郡山市の宮代美紀子さん(55)は「仮設でできた縁を大切に、遠いところまで忘れず来てくれるのがうれしい」と心遣いに感謝していた。
彼岸法要では、同じ真言宗智山派の小さな寺にも立ち寄った。同県いわき市久ノ浜町の海岸で、円成(えんじょう)院の青木孝一住職(74)と檀家(だんか)が参列する中、津波で亡くなった人や行方不明者の冥福を祈った。
青木住職は「われわれも毎日お勤めしているが、大本山からこうして物故者の供養をしてくれるのはありがたく、亡くなった人も喜んでいると思う」としみじみ話した。
◆山崎寺務長に聞く
被災地支援の先頭に立つ山崎照義(やまざきしょうぎ)寺務長(77)が本紙の取材に応じ、支援の在り方や震災と原発事故の受け止めを語った。
-福島での彼岸法要のきっかけは。
「被災地に寄り添いたいという思いから、成田で結ばれた細い縁をたどる形で始まりました。皆さんのご苦労を思い、一日も早い復興と亡くなった方のご冥福をお祈りすることに、感謝の気持ちで臨んでいます」
-僧侶として心境に変化は。
「私たちは、仏の願いを自分の願いとして生きています。現地で大勢のボランティアが活動している様子に、自らしもべとなって人々に尽くす仏の願いがこういうことだと肌で感じました。一人でも多くの方に現場に行っていただきたい」
-被災地の三年間をどう感じますか。
「例えば原発の問題を抱える福島では、先が見えず本当にお困りの姿に接している。三年の時の流れが被災された皆さんの気持ちに大きくのしかかり、疲れの色が見えます」
-原発事故をどう受け止めていますか。
「被災者の姿、事故処理が進まない状況を見ても、原子力は人類とはなじまない。見方はいろいろあるでしょうが、私たちは命を根本的に考え、命を大切にする点から、将来的に原発はなくすべきだと思います」
-今後の支援は。
「震災が風化する中で、寺として『忘れない』と呼び掛けることは大切です。岩手県陸前高田市とは少なくとも平成三十年まで支援を約束しています。ほかの地域でも当面は間違いなく継続します」
支援、祈願いつまでも 被災地に寄り添う成田山新勝寺
2014年3月26日
「被災地に寄り添いたい」と話す山崎照義寺務長=福島県いわき市で
東日本大震災の翌日から毎日、お護摩祈祷(きとう)で被災地の復興を祈願している成田山新勝寺。その活動は現地へのお見舞いや慰霊法要、義援金の寄託、力仕事のボランティアなど幅広い。3年が経過して記憶も薄れつつある中、新勝寺の被災地支援は「増えることはあっても減ることはない」という。 (小沢伸介)
「普段は元気にやっているつもりなんですけど、やっぱりダメ。涙が止まらない」
まだ残雪が目立つ福島県二本松市の仮設住宅。春彼岸の法要の準備をテキパキこなしていた天野淑子さん(62)は、新勝寺の僧侶たちに接した途端に脱力し、弱々しく法衣にしがみついた。
原発事故で同県浪江町を追われ、各地を転々と避難した末にたどり着いた人たちが暮らす。近くに町役場の出張所が置かれ、災害公営住宅(復興住宅)の建設計画もあり、故郷で再び暮らせる見込みはない。
震災当初に成田に避難し、この仮設住宅でも過ごした同県郡山市の宮代美紀子さん(55)は「仮設でできた縁を大切に、遠いところまで忘れず来てくれるのがうれしい」と心遣いに感謝していた。
彼岸法要では、同じ真言宗智山派の小さな寺にも立ち寄った。同県いわき市久ノ浜町の海岸で、円成(えんじょう)院の青木孝一住職(74)と檀家(だんか)が参列する中、津波で亡くなった人や行方不明者の冥福を祈った。
青木住職は「われわれも毎日お勤めしているが、大本山からこうして物故者の供養をしてくれるのはありがたく、亡くなった人も喜んでいると思う」としみじみ話した。
◆山崎寺務長に聞く
被災地支援の先頭に立つ山崎照義(やまざきしょうぎ)寺務長(77)が本紙の取材に応じ、支援の在り方や震災と原発事故の受け止めを語った。
-福島での彼岸法要のきっかけは。
「被災地に寄り添いたいという思いから、成田で結ばれた細い縁をたどる形で始まりました。皆さんのご苦労を思い、一日も早い復興と亡くなった方のご冥福をお祈りすることに、感謝の気持ちで臨んでいます」
-僧侶として心境に変化は。
「私たちは、仏の願いを自分の願いとして生きています。現地で大勢のボランティアが活動している様子に、自らしもべとなって人々に尽くす仏の願いがこういうことだと肌で感じました。一人でも多くの方に現場に行っていただきたい」
-被災地の三年間をどう感じますか。
「例えば原発の問題を抱える福島では、先が見えず本当にお困りの姿に接している。三年の時の流れが被災された皆さんの気持ちに大きくのしかかり、疲れの色が見えます」
-原発事故をどう受け止めていますか。
「被災者の姿、事故処理が進まない状況を見ても、原子力は人類とはなじまない。見方はいろいろあるでしょうが、私たちは命を根本的に考え、命を大切にする点から、将来的に原発はなくすべきだと思います」
-今後の支援は。
「震災が風化する中で、寺として『忘れない』と呼び掛けることは大切です。岩手県陸前高田市とは少なくとも平成三十年まで支援を約束しています。ほかの地域でも当面は間違いなく継続します」