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music talks




春頃のことだったか、12歳の娘がピアノの練習の仕方を少し変えるとしたら具体的にはどうすればいいかと聞いてきた。

今までは先生にアドバイスされた通りを次のレッスンまでにこなしておくという方法一筋だったのだ。

わたしは「先生に聞いたら?」と答えそうになったが、うむ、こういう時は何らかの理由で「先生に聞き」にくいから音楽家でもない母親に聞いているのに違いないと思いなおし、敬愛する友人音楽家Kに連絡を取り、本とDVDをすすめてもらった。


本、Music Talks は世界的に有名な音楽家が独自の練習方法を述べている点が興味深いのだそうだ(わたしは無精ゆえ未読。でも絶対読みたい)。

そしてこのDVD、Art of Piano。
20世紀が誇るピアニストのヴィルトーソを現代の音楽家が解説する方式で、まるで古今東西の知識の粋を集めた魔法の書のような感じ。貴重な呪文があちこちにちりばめられている。
呪文を口にしたら誰でも魔法が使えるわけではないように、このDVDを見たら誰でもピアノが上達するわけではないが、一般的なものの見方ですらもちょっとは変わる、というのはわたしが保証しても良い。

わたしの人生テーマは「われわれは世界をどのように解釈するか」「われわれは何者か」「何がわれわれを人間にしたか」ということで、もちろんそこにも深く切り込まれるようなメッセージがたくさんあった。


わたしのまずい解説で申し訳ない...

モームの「月と六ペンス」から借用しよう。

「美はすばらしいもの、ふしぎなもので、芸術家が、魂の苦悶のうちに世界の混沌かの底から作り出してくるものなのだ。そして、それが作りだされても、すべての人間にそれがわかるということにはならないのだ。それを認識するには、その芸術家の冒険をくりかえさなければならない。それは、芸術家が歌ってくれるひとつの旋律であって、それをふたたび自分の心の中で聞くには、こちらにも知識と感性と想像力とが必要になってくるのだ


おすすめです。


DVDにはわたしの青春の憧れ、リヒター、ミケランジェリ、ゴールドが連続で登場し、そこでわたしは一気に奇声を上げるミーハーに。大人になってからはアラウに憧れる。こういう見方も楽しい。

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今年の芍薬




今年も芍薬の季節が巡って来た。
芍薬は薔薇とともにわたしの一番好きな花だ。

近所には素敵な花屋がなく、砂を噛むような思いをしながらスーパーマーケットで買うことになってしまう(花屋は抜群に美しい店でなくてはならないというのがわたしの持論)のだが、このスーパーはいい花が入っている確率が高いので、買い物途中のちょっとした楽しみなのだ。

味気ないセロファンに雑に包まれた束を4つ購入。全部で20本。
レジのマダムが値札をスキャンしながら「あなた美人ねー」と言ってくれた(突っ込みはナシでお願いします)。芍薬が、古い少女漫画の主人公が花を背負って現れるのと同じ効果を果たしてくれたのだろうか。事実、花を抱える人はみな美しく見えるのである。


5月半ばだというのに暖房をつけた部屋の中で見る見る花びらを開き、芳香を放つ。


学校から帰って来た娘が「いつかおにわをしゃくやくでうめつくしてあげます」と言ってくれた。

想像するだけでも幸せ。

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把酒問月




能作という錫のものつくりをしている会社からNIMI氏作品、片口/月。

おお、李白の「把酒問月」?

青天有月来幾時 我今停杯一問之
大空に月が有りてから幾時だろうか 
私は今盃を月に停めて問うてみよう
(ヘボ訳で申し訳ありません)

紹介文には酒仙のことなどは全く書かれていないものの、月が酒杯に優雅にあしらわれている由来を夫にムキになって説明してしまった。

でもまあ、酒と言えば月ですよね。ビールならば太陽かもしれないが。コロナとか(笑)。

もしかしらルバイヤートにも同じような飲んだくれと月とサーキィの詩があるかも(こっちは葡萄酒かな)...また調べてみよう。



偶然、ここでも紹介した小野里奈さん作品の錫のバスケットも能作さんで取り扱いがあり、錫バスケットの贈主と片口の贈主は別の友人なのだが、二人ともすごくセンスがよく、こういう共通点がうれしくなった。

錫大好き。
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karmiの茶筒と孫の話




山中漆器のKarmiという茶筒シリーズをお土産に頂いた。

「山中漆器の特徴である轆轤(ろくろ)技術と、木地師が1本1本を手作業で加工する「千筋」に着目。」とHPに紹介してあるように、色、形、柄、素材すべてが美しい。

友人夫婦でお店で木目のひとつひとつを確認して一番美しいのを選んでくれたのだそうだ。



こんな優雅な茶筒を日常に使っている人を見たらわたしはきっと惚れてしまう。

だからわたしもこれを使って今日もお茶を入れよう。

そしていつの日かわたしの孫が「これは祖母のものなの。彼女は日本人なのよ」とお茶を入れながら誰かに話すのを想像して楽しもう。

わたしの想像の中の孫は常になぜか女性なのだが、もちろん男性でもステキだな。
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flowers of all hue








石渡真紀さん作の和紙の花。

去年11月、誕生日のプレゼントとして頂戴したもの。型を元に、贈り主と作家の方があれこれ相談して作って下さったそうだ。
夕焼けのような色合いがすいこまれそうに美しい。


Flowers Of All Hue And Without Thorn The Rose...
ミルトン「失楽園」の一節、この「花」とは人間のことである、と英語の先生が言っておられた。




下のかごは小野里奈さん作の錫製で、こちらも友人からの贈り物。
錫、大好き。錫は柔らかく、このかごも形が変えられるのです。



誰かがわたしのために選んでくれた美しいものに囲まれて生活できる幸せ。

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