これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

原油から生産される物

2022-11-26 10:30:28 | 社会問題
【はじめに】
 近年、カーボンニュートラル (炭素循環)とPM2.5(微小粒子状物質)削減が世界的に叫ばれて、ガス燃料や液体燃料の使用を制限する運動が盛んになっています。この運動は、「原油、天然ガス、石炭の使用量を減らせ!」と言っているのと同じです。

 原油から生産されるのは、ガス燃料と液体燃料だけでは有りません。原油は、私達の生活に不可欠な種々の製品の原料でも有ります。先週、原油を牛肉にたとえました。ガソリンを『肩ロース』、軽油を『サーロイン』、重油を『リブロース』、プロパンを『ヒレ』・・・これらの部位の需要だけが急激に減少したらどうなりますか? 肩ロース、サーロイン、リブロース、ヒレは廃棄するのですか?!

 今回は、原油から生産される『物』を列記しました。 皆さんに、私達の身近な物の多くが、原油から生産されている事を認識して頂きたいので、面白い記事では有りませんが敢えて書きました。ザット目を通して頂ければ幸いです。

【❶ ガス燃料】
 都市ガスとして使用されている液化天然ガス(主成分はメタン)はガス田から得られますが、ブタンやプロパンは、原油の精製プラントで生産されます。

★ ブタン
★ イソブタン
★ プロパン

【❷ 二酸化炭素】
 ドライアイスは二酸化炭素を固体化した物です。二酸化炭素は色々な所で使用されています。その一部は石油化学プラントで生産されています。

【❸ 液体燃料】
 原油から製造される液体燃料を列記します。

★ ナフサ →→ガソリン、航空ガソリン
★ ケロシン→→灯油、ジェット燃料
★ 軽油、A重油
★ B重油、C重油

【❹ ナフサ】
 ナフサは、原油を蒸留分離して製造する液体の炭化水素の混合物の総称です。

★ 軽質ナフサ :エチレン等の原料
★ 重質ナフサ :ガソリン、芳香族炭化水素の原料

【❺ 切削油】
 金属などの切削加工を行う時、冷却と摩擦低減の目的で液体の切削油を噴射します。現在は、数値制御工作機械(NC工作機械)が中小企業でも沢山導入されており、殆どのNC工作機械で切削油が使用されています。 機械加工すると加工対象物(ワーク)の温度が上昇して膨張します。ワークを常温まで冷却した後に寸法を測定します。加工中と検査時の寸法の差が小さくなる様に、ワークを切削油で冷却しているのです。

 私は、チタンを超精密加工してもらった事が有りますが、切削油を掛けないと発火する恐れが有ると教えられました。

【❻ 潤滑剤】
 潤滑油やグリースにもJISやJALOS(潤滑油協会)などの規格が有ります。大抵は規格の番号で購入しても大丈夫ですが、デリケートな機械ではメーカーと銘柄が指定されています。

★ 潤滑油
★ グリース

(余談 :潤滑油の泡立ち) 私が大昔に担当していたガスタービンでは、軸受部と減速機部を強制潤滑して、潤滑油を空冷の冷却器を経由して油タンクに戻す様になっていました。使用出来る潤滑油として、世界的な大手石油メーカー数社を指定していました。 このリストに入っていない大手石油メーカーが、「リストに加えてくれ」と言ってきました。

 メーカーの技術者立ち合いのもとで、実機テストを始めました。油タンクには通気用の穴を設けていたのですが、1時間程運転すると穴からブクブクと多量の泡が出て来ました。とても使える品物では有りませんでした。

(余談 :私とグリース) 私は機械の設計/開発/研究に携わってきました。特殊なグリースが必要になると日本オイルシール工業(現在の社名はNOK)に相談しました。現在は国産化している様ですが、ドイツのクリューバー社が製造する超高価ですが、超高性能のグリースを輸入販売していました。 最高級の物は、1kg入り缶が100万円ほどしたと記憶しています。

【❼ パラフィン】
 原油から種々のパラフィン(石蝋)が生産されています。パラフィンは安全な物質で、ベビーオイルとしても使用されています。

★ パラフィンワックス :固形 ;ローソク、クレヨン
★ 流動パラフィン   :ベビーオイル、化粧品、シャンプー、リンス、医療用パラフィン、・・・などなど

【❽ アスファルト】
 外国には天然アスファルトを産出する地域が有りますが、日本で道路の舗装に使用されるのは原油から生産された物です。

【❾ ピッチ】
 ピッチは粘度が非常に高いので個体の様な物質です。原油から得られる物を『ピッチ』、石炭から得られる物は『コールタールピッチ』、植物《樺(かば)等)》の樹液なから得た物を『ロジン』と呼びます。『ピッチ』の一部は、加工されてアスファルトになります。

 ピッチは、粘結剤や防錆塗料として使用されています。大昔は、木造船や樽の防水材として使用していました。

【❿ 合成樹脂】
 原油を蒸留して得られる『ナフサ』から、種々の合成樹脂が製造されています。それぞれの特徴を生かして、種々の製品がつくられています。シート、糸、容器などに加工されています。

★ フェノール樹脂(PF)
★ メラミン樹脂(MF)
★ 尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)
★ エポキシ樹脂(EP)
★ 不飽和エポキシ樹脂(UP)
★ ポリウレタン(PUR)
★ ポリエチレン(PE) :レジ袋
★ 高密度ポリエチレン(HDPEまたはPE-HD) :スーパー ロール ビニール 袋・・・スーパー等に置いている、非常に薄い袋の原料です。 ポリバケツ、ビール瓶のケース(ビールクレート)、パイプ、灯油タンク・・・
★ ポリプロピレン :レジ袋
★ アクリル樹脂
★ ポリカーボネート
★ ポリエチレンテレフタレート(PET) :ペットボトル

【⓫ 合成繊維】
 私が着用している下着からコートまで、大半は合成繊維製です。ドンドン良質の合成繊維が作られる様になっています。 ナイロン、ポリエステル及びアクリル繊維を三大合成繊維と言います。

★ ポリアミド系  :ナイロン(ナイロン6、ナイロン66など)
★ ポリエステル系  :ポリエステルテトロンなど)
★ ポリウレタン系  :ポリウレタン
★ ポリビニルアルコール系 :ビニロン
★ ポリアクリロニトリル系 :アクリル繊維  ;エクスラン、カシミロンなど
★ ポリ塩化ビニル系  :テビロン、エンビロンなど
★ ポリプロピレン系  : パイレンなど
★ ポリエチレン系  : ポリエチレン
★ ポリスチレン系  :ポリスチレン
参考資料 :ウイキペディアの『合成繊維』

(余談 :紡糸用ノズル) 合成繊維を作る最初の段階は、液状の合成樹脂を小さな穴(ノズル)から押し出して、糸を作る工程です。 紡糸用ノズルの製造で最高の技術を持った会社が、世界に3社有る様です。その内の2社は兵庫県に有ります。その1社に私は昔、硬い金属に直径0.5mmの穴を開けてもらった事が有ります。現在、紡糸用ノズルでは直径0.03mmの穴加工が出来る様です。 因みに、髪の毛の太さは50~100µm(0.05~0.01mm)です。小さな穴を開けるのは難しいですが、開けた穴の直径を正確に測定(検査)するのは、もっと難しいです。

【⓬ 炭素繊維】
 炭素繊維(カーボンファイバー)と言う夢の様な繊維が実用化されています。質量が鉄の『1/4』しかなく、強度が『10倍』で、弾性率(変形のしにくさ)が『7倍』も高いのです。ドンドン用途が拡大してきています。 最大の問題は『価格』です。

 炭素繊維は、戦後、アメリカで発明されましたが、1961年に進藤昭男氏がPAN系炭素繊維を、63年に大谷杉郎氏がピッチ系炭素繊維を発明しました。以来、この分野では日本のシェアは高いのです。 東レ、帝人、三菱ケミカル、クレハ、大阪ガスケミカル、日本グラファイトファイバーが頑張っています。

 2010年頃に、某社から高速で回転させる特殊なロールの試作依頼が有り、数か月間勉強/検討/見学した事が有ります。残念ながら、事情が有って試作は断念しました。

★ PAN系炭素繊維
★ ピッチ系炭素繊維 

【⓭ 合成ゴム】
 自動車やバイクのタイヤは、天然ゴムと原油から作った合成ゴムを混合して製造されています。原油から(下に列記する様に)種々のゴムが製造されています。 O-リングの多くは『ニトリルゴム(NBR)』製ですが、私は『フッ素ゴム(FKM)』や『シリコーンゴム(Q)』製のO-リングも採用した事が有ります。

★ イソプレンゴム(IR)
★ ブタジエンゴム(BR)
★ スチレン・ブタジエンゴム(SBR)
★ クロロプレンゴム(CR)
★ ニトリルゴム(NBR) :O-リング
★ ポリイソブチレン(ブチルゴム IIR) :コンクリートの継ぎ目材(エラスタイ)
★ エチレンプロピレンゴム(EPM, EPDM)
★ クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)
★ アクリルゴム(ACM)
★ フッ素ゴム(FKM)
★ エピクロルヒドリンゴム(CO, ECO)
★ ウレタンゴム(U)
★ シリコーンゴム(Q)
参考資料 :ウイキペディアの『ゴム』

(余談 :天然ゴムの臭い) 屋内に設置した私の実験装置の横で、T氏のチームが天然ゴムに磁性鉄粉を混合する実験を始めました。 彼らは必要以上に天然ゴム(ラテックス)を買い込んでいました。天然ゴムの臭いは強烈です! 彼らの実験装置とレシピ―はお粗末で、反面教師としては打って付けでした。当時、私は国立大学の修士卒の若い社員を二人あずかっていました。

 二人に天然ゴムの実験を観察してもらって、改善案を考えてもらいました。良さそうなアイディアが幾つも出ましたが、T氏には教えませんでした。天然ゴムの臭いから一刻も早く解放されたかった為です。

【⓮ 合成皮革】
 菜食主義者などが「動物の皮の使用反対」を叫ぶので合成皮革と人工皮革が増加しています。→→『皮』の需要が減って→→一部が廃棄される時代になっています。(本末転倒の様に思います!)

★ 合成皮革 :天然の布に合成樹脂を塗布する。
★ 人工皮革 :不織布などに合成樹脂を含侵させる。・・・衣類や靴

【⓯ 塗料】
 塗料の開発は地味ですが、多分日本の技術は国際競争力が有ると思います。ステルス戦闘機の開発の初期は、高層ビルによる電磁波問題対策として日本で開発された『電磁波を吸収する塗料』の使用が検討されたと記憶しています。

・・・ 塗料に使用される樹脂 ・・・
★ アルキド樹脂
★ 不飽和ポリエステル樹脂
★ メラミン樹脂・尿素樹脂(アミノ樹脂)
★ フェノール樹脂
★ エポキシ樹脂
★ 塩化ビニル樹脂
★ アクリル樹脂
★ アクリルウレタン樹脂
★ ウレタン樹脂
★ シリコーン樹脂 :耐用年数≒10年~13年
★ アクリルシリコーン樹脂
★ フッ素樹脂 :耐用年数≒13年~15年
参考資料 :ウイキペディアの『塗料』

【⓰ 発泡プラスチック】
 原油から製造した合成樹脂から種々の『発泡プラスチック』が作られています。代表的なのが『発泡スチロール』です。 台所で食器を洗う時に使うスポンジも発泡プラスチックです。 高速道路の工事現場を見学した事が有りますが、分厚い発泡スチロールを多量に敷いて→→その上に鉄筋を組んで→→コンクリートを流し込んでいました。

★ 発泡スチロール :気泡を含ませたポリスチレン(PS)
★ 軟質ポリウレタンフォーム(軟質PUF) ・・・台所で使っているスポンジ
★ 硬質ポリウレタンフォーム(硬質PUF)
★ ポリスチレンフォーム(PSフォーム)
★ ポリエチレンフォーム
★ ポリプロピレンフォーム(PPフォーム)

燃料と税金 (その2)

2022-11-19 06:04:34 | 社会問題
【はじめに】
 今回も燃料に掛かる税金について書きます。電気は常識的には『燃料』とは言えませんが、電気自動車と電気アシスト自転車が増えて来ているので燃料の一種と見做すべきです。

 欧米諸国と中国では電気自動車を普及させようとしています。近い将来、ガソリンと軽油の需要が激減するかも知れません。「ドンナ問題が発生しそうか?」考える必要が有りそうです。 原油を『牛肉』だと考えて下さい。ガソリンを『肩ロース』、軽油を『サーロイン』とします。肩ロースとサーロインだけの需要が激減したらどうなるのでしょうか? 次回、この問題について少しだけ考えてみます。

【電気と税金】
 電気に掛かる税金は、消費税の『10%』だけです。 電気が車のエネルギー(燃料)として使用される様になるとは、財務省は考えていなかったのです。財務省は近年、「電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド自動車(PHV)が増加してきたので、ガソリンや軽油の様に自動車燃料税を徴収する必要が有る」と考え始めています。

 EVとPHVで使用する電気と、その他の用途で使用する電気を区別して、自動車燃料税に相当する税金を徴収する必要が有ります。区別は難しそうです! 自動車燃料税の税収は『4兆円』以上も有りますから、財務省は、ドンナ手段を使っても手放さないと予想します。

 財務省は、「走行距離計(オドメーター)を調べる方式」を考えている様です。この方式の場合は、ガソリンや軽油の自動車燃料税を廃止して、走行距離でのみ税金を取り立てれば公正になると思います。 最大の問題は、「ドンナニして走行距離計の値を調べるか?」です。車は移動する物です。 

 私の考えたのは、ガソリンと軽油の税金はそのままにして、「EVとPHVの受電部に積算電力計を設けさせて、受電量に応じて税金を徴収する」方式です。 但し、自己申告制にすると不正が蔓延しそうですから、積算電力計を送信機能付きにすれば、車が何処に有っても税務署が走行距離を把握出来ます。

【軽油の税金】
 ディーゼルエンジンを搭載した乗用車、トラック、バスなどに使用される『軽油』はA重油と殆ど同じですが、硫黄分が『50ppm(0.005質量%)』以下と規定されています。 (ガソリンの硫黄分は『10ppm(0.001質量%)』以下、A重油は『0.5質量%』以下と『2質量%』以下の2種類があります。)

 硫黄を含有する燃料が燃焼すると、硫黄酸化物(SOx)が発生し、ぜん息や酸性雨の原因になります。その為、日本を含め欧米諸国では、脱硫して硫黄分を少なくする様に規制しているのです。

 農林業で使用する軽油、内航運送や、遊覧船を除いた一般旅客定期航路に使用する軽油と重油には石油石炭税は免除されています。

軽油の販売価格=(本体価格✛軽油取引税✛石油石炭税✛環境税)✕消費税
❶ 軽油取引税 :32.1円/リットル
❷ 石油石炭税 :2.8円/リットル
❸ 地球温暖化対策のための税(環境税):0.25円/リットル
❹ 消費税 :10%

(注記 :燃料に関する関税と石油税)
 昔は原油や天然ガスに関税が掛かっていましたが、現在は廃止されています。
 『石油税』と言う税金が有りましたが、2003年に『石油石炭税』に変わりました。2012年から、『地球温暖化対策のための税(環境税)』が導入され、石油石炭税に加算される形で徴収されています。

《豆知識 :軽油の国際価格》
 日本では昔から、軽油の方がガソリンより安価の為に乗用車にディーゼル車が少し採用されて来ました。 然し、欧米諸国では価格差が少ないか、イギリスとアメリカでは逆にガソリンの方が安価です。その為に、欧米諸国ではディーゼルエンジンの乗用車が普及していないのです。

【プロパンガスの税金】
 プロパンガスは家庭で燃料として使用されますが、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを少し改造するとプロパンガスが使用出来ます。改造は違法では有りませんが、LPGガス・スタンドは全国に少ししか有りません。『LPGガス スタンドマップ』参照! 最初からプロパンガス車(LPG車)として製造された車も有ります。

 LPG車用として販売されるプロパンガスには石油ガス税が掛かりますが、ガソリンに掛かる税金よりも大幅に安い→→プロパンガスの販売価格が安い。その為にタクシーの多くはLPG車に改造された物を使用しているのです。

 前回、書いた様にガソリンの場合は❶ガソリン税(53.8円/リットル)、❷石油石炭税(2.8 円/リットル)、❸環境税(0.25円/リットル)が掛かり、更に消費税が掛かります。従って、税金の合計は『62.535円/リットル』になります。

 自動車用プロパンガスの税金の合計は『11.264円/リットル』にしかなりません。 ガソリンの方が『51.271円/リットル』も高いのです!

(私の邪推) 財務省は「自動車用プロパンガスからモット沢山税金を取り立てたい」と考えていると想像しますが、プロパンガスはクリ-ンエネルギーで、タクシーは人口の多いい所を走り回ります。都市部の衛生環境を悪化させない為に、「税金を安くして、タクシーにプロパンガスを使ってもらうべき」と言う考え方に、財務省は逆らえないのだと思います。

自動車用プロパンガスの販売価格=(本体価格✛石油ガス税✛環境税)✕消費税
家庭用プロパンガスの販売価格  =(本体価格✛環境税)✕消費税

❶ 石油ガス税 :17.50 円/kg(9.80 円/リットル) ・・・自動車用のみ
❷ 地球温暖化対策のための税(環境税):0.78円/kg(0.44 円/リットル)
❸ 消費税 :10%

【灯油の税金】
 私の故郷(田辺市龍神)で民家に電気が供給される様になったのは、1955年頃でした。それまでの照明は『石油ランプ』でした。石油ランプの燃料は『灯油(とうゆ=ともしびあぶら)』です。『ケロシン』とも呼ばれる事も有ります。 現在、灯油は石油ストーブなどの燃料として使用されています。ジェット機に使用されるジェット燃料は灯油と殆ど同じです。

灯油の販売価格=(本体価格✛石油石炭税✛環境税)✕消費税
❶ 石油石炭税 :2.8円/リットル
❷ 温暖化対策税 :0.76円/リットル・・・2012年から導入
❸ 消費税 :10%

【航空機用燃料の税金】
 航空機の燃料には『航空ガソリン』と『ジェット燃料』が有ります。 航空ガソリンは(自動車用)ガソリンと同じで、ジェット燃料(航空タービン燃料油)は灯油と同じと考えて良いです。

 航空機燃料税は非常にヤヤコシイです。 公共団体が使用する航空機には、航空機燃料税は掛かりません。 沖縄路線と特定離島路線の航空機の場合は、航空機燃料税を特別に安くしています。 以下に示す税額は、一般路線に適用される値です。

 航空機に給油する時、航空機燃料税の他にガソリンと灯油にとして販売する時に掛かる税金を含んだ金額が請求されます。然し、航空機に使用したと申請すると、ガソリンと灯油としての税金は返して貰える事になっています。

航空機用燃料の販売価格=(本体価格✛航空機燃料税)✕消費税
❶ 消費税 :10%
❷ 航空機燃料税 ・・・多分、海外からの観光客を呼び込む為だと思いますが、近年は減税されています。
★ 法律に規定された税金 :25円/リットル ・・・航空機燃料税法11条
★ 特例の税金 :18円/リットル ・・・2011年4月~21年3月
★ 特例の税金 : 9円/リットル ・・・2021年4月~22年3月
★ 特例の税金 :13円/リットル ・・・2022年4月~23年3月

【農業用などの重油に掛かる税金】
 農業、漁業、林業で使用する重油には、大昔から無税になっています。これを、『無税重油制度』と呼んでいます。 但し、消費税は掛かると思います。

【重油の税金】
 重油に掛かる税金には種々の特例が有る様なので、私には分かりません。ギブアップです! 特例が認められないケースでは➊~❸の税金が掛かると思われます。

❶ 石油石炭税 :2.8円/リットル
❷ 地球温暖化対策のための税(環境税):0.25円/リットル
❸ 消費税 :10%

【重油の種類】
 重油には大別するとA、B、Cの3種類有り、「重い油」と書きますが水よりも軽い液体です。 重油は英語では『fuel oil』が一般的です。

 JIS規格(K2205)では、A重油を『重油1種』、B重油を『重油2種』、C重油を『重油3種』と呼んでおり、A重油には硫黄分(サルファー)が(質量)0.5%以下の『1号』、2%以下の『2号』の2種類が有ります。B重油は硫黄分が3%以下で、C重油は3.5%以下と規定されています。C重油は『ねばり(動粘度)』によって3種類(1号~3号)に分類されます。

 B重油とC重油は商船で使用されます。商船の大気汚染物質『①硫黄酸化物(SOx)、②微粒子物質(PM)、③窒素酸化物(NOx) 』を規制する『MARPOL条約付属書VI』と言うのが有ります。規制海域(ESA)では、硫黄分が『0.1質量%』以下の燃料しか使用出来ません。

 更に、国際海事機関(IMO)が硫黄分『0.5質量%』以下を要求しているので、JIS規格(K2205)に規定されているB重油とC重油は商船に使用出来なくなっています。脱硫装置で硫黄分を除去したり、軽油を混合して硫黄含有率を小さくしています。

❶ A重油の用途 :ガスタービン、小~中型ディーゼルエンジン(農耕機、中小漁船、発電機)、都市部のボイラーの燃料等々として使用されます。
❷ B重油の用途 :大型ディーゼルエンジンや大規模ボイラーの燃料等々として使用されます。
❸ C重油 :用途はB重油と同じです。

《豆知識 :質量パーセント濃度》
 Eと言う物質とFと言う物質を混合した液体が有ったとします。Eのグラム数(質量)が『e』、Fのグラム数(質量)が『f』だとすると、物質Eの質量パーセント濃度は次式で求められます。

 物質Eの質量パーセント濃度=e✕100/(e+f)

 なお、質量パーセント濃度(質量%)を『%m/m』と表記しているケースが時々あります。

(余談 :軽トラと悪知恵) 軽トラのエンジンはガソリンエンジンですが、トラクターやコンバイン等はディーゼルエンジンです。ガソリンエンジンは軽量ですが効率が悪く、ディーゼルエンジンは重たいですが高効率です。 排気量の規制(660 cc以下)が有るので、軽自動車にはガソリンエンジンを採用していますが、現在の技術ではディーゼルエンジンの軽トラを作る事は可能ではと私は考えます。ディーゼルエンジンを搭載した軽トラを開発したら、農家はトラクター用に買ったA重油を軽トラにも使用すると想像します。(違法です!)

《豆知識 :A重油の販売店》
 軽油とA重油はほぼ同じ物です。ディーゼル車でA重油を使用する事は可能ですが、違法です。 その為に、A重油はガソリンスタンドでは取り扱っていないのだと思います。然し、今でも違法行為は絶えない様です。

 A重油には、軽油と区別出来る様に『クマリン』を混入する事が義務付けられています。(ブラックライトを当てると、蛍光するのがA重油です。)

 A重油は、JA(農協)や漁協の窓口、工業用潤滑油を取り扱うガソリンスタンドで入手出来ます。

(余談) 大昔、ガスタービン発電装置の設計を担当していた頃、工場内試運転用にA重油をドラム缶で沢山買っていました。車通勤の社員が多く、ディーゼル車に乗っている方が結構沢山いました。 彼らは私に無断で、抜き取るのです。 その中に知り合いの社員が数名いたので、私は目をつぶりましたが、年間にドラム缶が何本も空になってしまいました。





燃料と税金 (その1)

2022-11-12 11:14:07 | 政治
【はじめに】
 ハイブリッド車(HV)が普及する様になったら、電気自動車(EV)、自動運転車、燃料電池自動車(FCV)、クリーンディーゼル車(CDV)の開発競争が始まりました。私は技術屋の端くれなので、次世代自動車について色々考えています。

 自動車について投稿する前に、電気と燃料について皆さんに知って頂きたく、『電気料金の問題』ついて3回投稿しました。今回と次回は『燃料と税金』について書きます。

【燃料の種類】
 多種多様な燃料が使用されています。思いついた燃料を下に列記しました。

 液体燃料(ガソリンや軽油など)と液化石油ガス(プロパンやブタンなど)が原油から製造されるのは誰でも知っていますが、合成樹脂や合成繊維の原料も原油です。 将来、原子力発電や核融合発電で電気を作って、液体燃料と液化石油ガスが必要で無い時代が来ても、合成樹脂や合成繊維の製造には原油が必要です。

・・・ 燃料の種類 ・・・
❶ 電気
❷ ガソリン :レギュラーガソリン,ハイオクガソリン、ホワイトガソリン
❸ 軽油 :A重油と殆ど同じ。
❹ 灯油
❺ ジェット燃料 :灯油と殆ど同じ。
❻ 重油 :A重油、B重油、C重油
❼ 天然ガス :主成分=メタン・・・都市ガス
❽ 液化石油ガス(プロパンガス) :主成分=プロパン、ブタン
❾ 石炭
❿ 練炭、豆炭
⓫ 木炭
⓬ 薪(まき)、柴(しば) ・・・桃太郎に登場する”おじいさん”が刈りに行ったのは『柴』です。
⓭ アセチレン :溶接用のガス・・・火炎が3,330 ℃にもなる。
⓮ 固形燃料 :アルコール等を固形化・・・調理用、ロケットやミサイル
⓯ バイオ燃料 :穀物等から作ったエタノールなど
⓰ 水素
⓱ アンモニア :燃料として検討されている。
⓲ 木質ペレット
⓳ 廃棄物固形燃料(ごみ固形燃料)
⓴ ジメチルエーテル  : 用途=スプレー噴射剤、燃料

(余談 :私が子供だった頃の燃料) 1950年頃まで、私の故郷(田辺市龍神)では、木炭バスが走っていた様です。炊事と風呂の燃料は薪(まき)でした。(今でも、風呂に薪を使用している家が有ります。) 故郷には戦前に作った水力発電所が2か所ありましたが、役場、学校、農協、商店などにしか電気は供給されていませんでした。 照明は灯油ランプでした。 1955年頃に(私が9歳の頃)、ヤット、家庭に電気が供給される様になりました。

 子供の頃、冬には数回雪が降って、積雪が30cm程になる事が有りました。家には掘り炬燵が有り『練炭』を使っていました。父が座る場所の横に火鉢を置いていて、五徳(ごとく)の下で『豆炭』か炭が燃えていました。

 小学校には無かったのですが、中学校には、各教室に石炭ストーブ(ダルマストーブ)が一台有りました。焚き付け用の小枝(柴)は生徒が持ち寄りました。 小学校と中学校に給食を作る小屋(給食室)が有りましたが、生徒が持ち寄った『薪』を『おくどさん(竃)』で燃やして料理を作っていました。

 田辺市の高校に入学したのですが、旧制中学校時代の古い!古い!木造の校舎でした。隙間風がビュンビュン入ってきましたが、ストーブは有りませんでした。勿論、冷房なんて有りませんでした。

 1950年代の後半に、故郷でプロパンガスの販売が始まりました。(隣の御主人が、販売員になったので、覚えています。) 我が家では、10年ほど経って、台所をリホームしてプロパンガスで料理を作る様になりました。『おくどさん』は残していました。 1965年頃に、灯油の給湯器を据えて、台所と風呂にお湯が出る様になりました。

《豆知識 :圧力と沸点》
 高気圧とか低気圧と言うのは、標準大気圧より高いか/低いかを表す言葉です。標準大気圧は日本では『atm(アトム)』と言う単位を使っても良い事になっています。 1atm=1013.25hPa=1.01325bar=1013.25 mbar

 厳密な定義の『沸点』とは、液体が気化する(ガス化する)温度です。液体の周囲の圧力が高くなると沸点は上昇します。 普通使用される沸点は標準大気圧で液体が気化する温度が使用されます。 水の沸点は『100℃』ですが、圧力鍋では蒸気を閉じ込めて圧力を高く保ち、内部を115℃~126℃にして短時間に煮える様にしています。

 私たちの身近に有る、圧力容器に入ったガス燃料には、以下に示す炭化水素が使用されています。 使い捨てライターにはブタンとイソブタンが入っています。安いライターにはブタンが、冬の寒い時期でも点火し易いライターにはイソブタンが入っています。(Bic社製ライターにはイソブタンが使用されている様です。)

 ガスコンロ用のボンベにはCB缶とOD缶の2種類が有ります。室内で使用するのは『ノーマル』タイプで、(CB缶で、)ブタンが入っています。キャンプなどで使用するOD缶には、『ハイパワー(寒冷地仕様)』タイプが有り、イソブタンやプロパンが入っています。使用する場所の温度(外気温度)を予想して選ぶ必要が有ります。

★ イソブタン :C4H10 ;沸点≒−11.7℃ ・・・20℃では3atm
★ ブタン    :C4H10 ;沸点≒−0.5 ℃ ・・・20℃では2atm
★ プロパン  :C3H8 ;沸点≒−42.09℃ ・・・20℃では7atm
★ ジメチルエーテル :C2H6O ;沸点≒−23.6℃ ・・・スプレー缶に使用

【スッポン税制】
 スッポン(鼈)は嚙みついたら離さないと言いますが、悪名高い財務省は、有る目的で取り始めた税金は、その目的が無くなっても取り続けます。日本のそんな税金制度を『スッポン税制』と私は呼ぶことにしています。

 自動車の燃料に掛ける税金は、スッポン税制の典型です。特にガソリン税は酷いですね! 最初は、道路整備用の資金を得る目的で自動車に使用する燃料に税金を掛けました。すなわち、道路整備の為の『特定財源』だったのです。 道路網がほぼ全国に張り巡らされた時点(2010年)で、本来は燃料税は廃止するか、低減すべきでした。 国家に『金』が必要であるのなら、(姑息な手段を使うのでは無く)新しい名目の税制で、国民が公平に負担する様にすべきだったと思います。 (現在・燃料税は、一般財源として使われています。)

 私の故郷は過疎地です。子供の頃はバスが一時間に一本ほど走っていましたが、人口が減少して、今では日に二、三本しか有りません。自家用車が必需品になっているのです。 一方、電車や地下鉄網が整備された都会では、自家用車は必需品では有りませんから、(多くの方が乗用車を持たないので)燃料税を払っていないのです。過疎地の所得は一般に低いですから、燃料税は「不公平な税金」の典型と言えます。

【自動車用燃料の税収】
 自動車用燃料による税収は、ドンドン減収傾向になっています。その主な原因は、下記の❶と❷です。

税収減の原因❶ ;燃費の向上
 近年、効率の高いハイブリッド車が普及し、エンジンの性能向上、タイヤの改善などで乗用車の燃費が向上しています。(一時期、車体の軽量化による燃費向上が図られましたが、安全性対策で車体重量は昔に戻っている様です。) 燃費が向上した為に→→ガソリンスタンドの経営が難しくなって→→店仕舞が出て来ています。税収も減って来ているのです!

税収減の原因❷ ;電気自動車(EV)の増加
 自動車に電気を使用すると車用燃料税は掛かりません。それが、EVの最大の魅力になっています。EVが更に普及すると、自動車用燃料による税収は減少してきます。政府は最近、イエスマンを集めた諮問委員会で、「自動車の走行距離を調べて、税金を徴収すべきだ!」と発言させています。

・・・ 自動車用燃料の税収の推移 ・・・
★ 2001年度≒4.7兆円
★ 2011年度≒4.4兆円
★ 2021年度≒4.1兆円
出典 :一般社団法人・日本自動車会議所の2022年5月24日付け「燃料税収、21年度は過去20年で最少 先細り確実で課税懸念も」

【車に使用される燃料】
 ガソリンスタンドで販売している燃料は、下記の3種類(❶~❸)です。一部のガソリンスタンドでは、電気自動車(EV)の充電もしている様です。A重油と軽油はほぼ同じ物なので、ディーゼル車にA重油を使用出来ますが、違法です。

 最近話題になっている水素ガスを車の燃料に使用する研究が行われています。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを少し改良したら水素ガスが使用出来ると思われますが、水素ガスの製造体制と税金制度の検討が必要ですから、私は水素自動車の普及は難しいと考えています。

❶ ガソリン
❷ 軽油
❸ プロパンガス(LPガス)
❹ 電気

【ガソリンの税金】
 ガソリンに掛かる税金は、次式に示す様にガソリン税等に消費税が掛かる『二重税制』です。
 ガソリンの販売価格=(本体価格✛ガソリン税✛石油石炭税✛環境税)✕消費税

 ガソリン税の中には『特別税=25.1円/リットル』が含まれています。特別税は、1974年(三木武夫内閣)に、「当分の間だけ徴収する」として設けられました。『当分の間』だったのに、すでに48年も経過しているのに徴収し続けています! ⇐⇐『スッポン税制』

 2010年(民主党政権時代)に、「ガソリンの3か月の平均小売価格が1リットル当たり160円を超える」事態になったら、特別税は停止する事にしました。これを『トリガー条項』と呼びます。

 2011年(民主党政権時代)に、「(2011年の)東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し、別に法律で定める日までの間、その適用(トリガー条項)を停止する」と決めました。

 東日本大震災から11年を経過し、最近、ガソリンの価格は『160円』を超えていますが、トリガー条項はそのままにして、ガソリンに補助金を出して乗り切ろうとしています。「一旦、ガソリン税を下げたら増額が難しいから、トリガー条項は無かった事にしたい!」・・・姑息な財務省の官僚達が考えたのです!

 大震災の復興資金は『財政投融資特別会計国債(財投債)』を発行して→→法人と個人の所得税率を一時的に増やして国債を償還し→→償還が完了したら→→税率を元に戻すべきです。 東日本大震災の時の様に、自動車を持っている人だけに負担させるべきでは有りません。

(余談 :税金を払うのは嫌いだ!) 親戚に税務署勤務の方(M1氏)がおられました。最後は某税務署の署長になり、退職後に税理士になりました。M1氏は家屋敷と畑を相続して、現金を貯めて→→相続税を節税して→→一人っ子の息子(M2氏)に残して70歳前後で亡くなりました。(M1氏の奥さんは若くして亡くなっていました。)

 M2氏は、税金を払うのが嫌いで、酒もタバコもやらず、車も持っていませんでした。セッセと金を貯めて→→貸家や賃貸アパートを建てました。M2氏が60歳頃、私と会うと相続税を節税する方法の話をする様になりました。 「僕には相続税を心配しなければならいい程の財産が無い」、「三途の川を渡る為には、『六文』しかいらないよ!」、「金は生きている内に使うべきだ!」・・・等と言ったのですが、M2氏は退職後も金を貯めている様です。 面白くないので、M2氏とはもう10年以上会っていません。

❶ ガソリン税 :53.8円/リットル=揮発油税(48.6円/リットル)+地方揮発油税(5.2円/リットル)
❷ 石油石炭税 :2.8円/リットル
❸ 地球温暖化対策のための税(環境税):0.25円/リットル
❹ 消費税 :10%
(注記 :関税) 原油、プロパン、天然ガス、水素ガスの関税は撤廃されています。

《豆知識 :ガソリンの種類》
 3種類のガソリンが販売されています。車に使用されるのは、レギュラーガソリンとハイオクガソリンです。 キャンプ等では、ストーブやランタンにホワイトガソリン(白ガス)が使用されます。ホワイトガソリンは着色されていないので、無色透明な液体です。

 レギュラーガソリンとハイオクガソリンには燃料税が掛かりますが、ホワイトガソリンには掛かりません。ホワイトガソリンのオクタン価が50~55前後しかないのでガソリンエンジンには使用出来ません。 ちなみに、レギュラーのオクタン価は89以上、ハイオクは96以上とJISに規定されています。

 ホワイトガソリンは流通量が少ない為か?非常に高価です。ガソリンスタンドの一部で取り扱っていますが、缶入り販売が主で、量り売りは少なくなっていると想像します。 (私が学生だった時、下宿に大学院がいて、彼は熱心なワンダーフォーゲル部員で、何回か私をキャンプに連れて行ってくれました。時々、「ホワイトガソリンを買っておいてくれ」と言って、専用の小さなタンクを渡しました。量り売りをするガソリンスタンドで買いました。)

《豆知識 :燃料の着色》
 元々のガソリン、軽油、A重油は無色ですが、入れ間違い防止のために、ガソリンはオレンジ色に、軽油は淡黄色に着色しています。ホワイトガソリンは着色していません。 更に、給油ノズルにはレギュラーガソリンは赤、ハイオクは黄色、軽油は緑と決められています。


電気料金の問題 (その3)

2022-11-05 12:19:31 | 社会問題
【はじめに】
 総括原価方式の時代よりも、電力自由化によって電気料金は下がると予想しますが、真夏の暑い日にエアコンを動かせないと→→熱中症で死亡するケースが増加する恐れが有ります。

 「電力の需給が切迫して、計画停電が必要になる事態にならない様にするにはドウシタラ良いか?」他人事にしないで、皆で考える必要が有ります。『検討使』の能力を遥かに超える、複雑な問題だと思います。

【電力自由化の歴史】
 日本政府は、1995年から電力自由化を少しずつ始めました。(従来からの電力会社10社以外の会社に、)発電所を建設して電力を販売する事を認めました。更に、特定の地域に限って電気を売る電力会社の設立を認めました。 これらの会社を、『独立系発電事業者』と『特定電気事業者』と呼びます。

 株式などの金融商品を取引する東京証券取引所の様な、電力を取引する『日本卸電力取引所』が2005年に設立されました。東京証券取引所で個人が株式を直接取引する事は出来ませんが、日本卸電力取引所でも認められた『会員』だけが取引に参加出来ます。 株式では、個人は証券会社に依頼して株式の売り買いが出来ますが、電力には個人が投資出来る証券会社に相当する会社は有りません。然し、『電気』も株式の様な商品になっているのです。

 2016年に一般家庭と企業に電力を供給する会社(新電力会社)の設立が認められ、2020年に『発送電分離』が実施されました。

 雨後の筍の様に新電力会社が誕生しました。既に倒産した会社もありますが、2022年10月14日時点で、新電力会社の数は『763社』も有ります。 (詳細は、資源エネルギー庁のホームページの『登録小売電気事業者一覧』で見られます。)

 国の方針に従って電力10社は、2020年に送電線や変電所などを運用する子会社を設立して資産と要員を移管しました。 例:関西電力送配電株式会社

★ 1995年 :電力自由化が始まる→→独立系発電事業者(IPP)と特定電気事業者が認められる様になった。 ・・・村山政権
★ 2005年 :日本卸電力取引所 ・・・小泉政権
★ 2016年 :電力小売完全自由化→→新電力会社の乱立 ・・・安倍政権
★ 2020年 :発送電分離 ・・・安倍政権

(豆知識 :送配電会社) 昔は、電柱や電線は電力10社の所有でしたが、電力自由化によって電力10社以外の会社も所有しています。送配電設備を所有する会社は国に届ける必要が有りますが、国は4種類に分類しています。

 日本は「電線の地中化(埋設化)」が遅れています。パリは『100%』、ソウルは『46%』ですが、東京23区は『8%』だそうです! 電力自由化で電線の地中化は、更に遅れそうです!外国からの観光客に笑われてしまいそうです!

★ 一般送配電事業者 :電力10社が設立した送配電の会社・・・2020年~
★ 登録特定送配電事業者 :送電設備を有する新電力会社・・・現在30社有ります。
★ 送配電事業者 :2016年~ ・・・現在3社有ります。
★ 特定送配電事業者 :特定の供給地点に電気を供給する会社・・・1995年~;現在37社有ります。

【(株)JERA(ジェラ)】
 東京電力と中部電力が、2015年に折半で『JERA(ジェラ)』と言う巨大企業を設立しました。 そして、2社の火力発電所、LNG基地などをJERAに移管したので、JERAは発電とLNGの分野では日本一の会社になっていると思います。

 JERAは海外事業も進めようとしており、足枷を外された『普通の会社』になって発展すると私は見ています。「他の電力会社も吸収/合併して巨大化するのでは?」と予想します。 企業は利益を追求するのが使命の一つですから、国内で種々の問題が発生する恐れが有ります。

 例えば、過疎地や離島の多くでは、電力事業は儲かりそうに無いですから、将来・電力会社が撤退する恐れが有ります。 JR各社が、民営化された後で、赤字路線を次々と廃止している様に! 「まさか、そんな事態にはならないだろう!」と思われるかも知れませんが、大昔、九州の離島の発電所は町営か村営でした。九電が”しぶしぶ”引き受けて、今日に至ったのです。

・・・ (株)JERA(ジェラ) ・・・
★ 発電量 :2,446億kWh・・・2020年度
★ LNG輸入量 :3,130万トン・・・2020年度
★ 石炭輸入量 :1,570万トン・・・2020年度
★ 発電容量 :6,548万kWh ・・・2020年4月
★ 資本金 :1,000億円 ・・・2020年3月・・・現在は非上場会社です。
★ 売上 :2.9兆円 ・・・2020年3月
★ 経常利益 :1,238億円
★ 従業員数 :5,062人 ・・・2022年3月

【安倍政権による電力自由化の問題点】
 日本人の多くは、「故人は批判せず、美化すべきだ!」と言う考え方を持っておられる様です。然し、電力の自由化について考える時、安倍政権の愚策を指摘せざるを得ません。 安倍氏は『緻密な頭脳』の持ち主では無かったと私は見ています。村山富市氏と小泉純一郎氏は、「完全な電力自由化には種々の問題が有る」事に気付いて、不完全な自由化に留めたのだと想像します。

 電力自由化を全面的に実施たら発生する問題は、素人の私でも直ぐに予想出来ました。

❶供給義務の足枷を外した! :電力10社に供給義務を負わせていましたが、義務を解除したら→→政府が安定供給義務を担う事になります→→政府は全国の発電設備能力と電力需要予想を調査して→→供給が不足する恐れが有る場合は→→国が発電所の増設/新発電所の建設と送電設備の増設を行う必要が有ります。

 『電力小売完全自由化』は2016年に実施され、既に6年経過していますが、安倍氏、菅氏、岸田氏は、「政府に電力の安定供給責任が有る事に気付いていないのか?」対策を講じている様には見えません。 最近の報道によると、岸田氏は、今年の冬も国民に節電をお願いして乗り越えようとしています。

 大停電が発生したら、政府は重い腰を上げるでしょうが、発電所を新設するには突貫工事でやっても数年は掛かります。今から着手する必要が有ります。 この話しを先日妻にしたら、「岸田さんに期待するのは無理よ!」と言いました。皆さんはどう思われますか?

(注記 :新電力会社と供給義務) 私の家の近くに老夫婦二人で作る、美味しいケーキ屋が有りました。開店前に作ったら追加は一切作りませんでした。午後には殆ど残っておらず、3時には売り切れで、閉店していました。新電力会社には安定供給義務は有りません。「本日売り切れ」でも許されるし、「儲からないから、会社を整理する(倒産させる)」と言っても良いのです。

❷災害対策/復旧工事 :日本は台風、水害、地震、津波、火山噴火などの被害の多いい国です。電力10社と・その協力会社には資金と人員に余力が有ったので、今までは多少の災害には迅速に対応出来て来ました。

 完全自由化になって、まだ6年しか経過していないので、電力10社と・その協力会社に余力が残っていますが、新電力会社が力を付けてきて→→競争が激しくなったら電力10社の体力が低下すると予想されます→→災害対策/復旧工事の責任を国が負わなければならなくなっているのです。

❸燃料の安定的確保 :電力10社は長期契約で燃料を輸入してきました。ウクライナ戦争でヨーロッパ諸国は燃料の確保に苦慮していますが、電力10社の長期契約のお蔭で日本は今の所、助かっています。

 ヨーロッパ諸国が、ロシアから石油と天然ガスを買わない様になると、長期契約でも価格は上昇してきます。 各国の政府が、石油と天然ガスの争奪戦を始めると予想します→→石油と天然ガスの売買は外交マターになると予想します→→日本も政府が主体になって、石油と天然ガスを確保する必要が有ると思います。

【経済安全保障推進法】
 2022年5月に『経済安全保障推進法』が成立しました。結構な分量の有る法律です。政令で指定する重要物質を取り扱う企業が守らなければならない事を規定しています。 然し、政令は現在検討中です。如何にも『検討使』が作った法律だと思います。「何を重要物質に指定するか?これからユックリ検討しよう!」と言うスタンスです。

 検討使君!重要物質の安定供給の責任は国家に有る事を忘れてはいませんか? 経済安全保障推進法には、企業に報告の義務を規定していますが、安定供給の義務を負えとは書いていません。

《私の危惧 :災害対策》 福島第一原発の事故で、全国に有る原子力発電所は地震と津波対策を実施してきました。 重要物質の貯蔵及び生産設備には、地震、津波、台風、洪水対策が必要だと考えますが、経済安全保障推進法には何も規定していません。

 南海地震、東南海地震と東海地震の発生予想の話は時々聞きます。これらの地震が発生したら、日本のインフラと工業は、壊滅的な損害を被ると予想されています。対策を、出来る事から始めるべきです。国会で定期的に議論して→→予算を毎年・確保して→→少しずつでも対策を進めるべきです!

【新電力政策の提案】
 私は、1972年~84年までガスタービン発電装置の設計/販売の仕事をしたので、電気事業法と関連法規を勉強する必要が有りました。 「電力会社・10社には、供給義務が有るが、お互いが競争する事が無く、無駄な事をやれば利益が大きくなり、世の中が不景気になっても赤字にならない制度で守られているのはおかしい!」と考えていました。

 先進国の電力政策は、『てんでバラバラ』です。各国の電力政策は、それぞれ種々の問題を抱えており、参考に出来る国は、今の所見付かっていません。

 電力を自由化してしまいましたから、問題が顕著になっても今更、総括原価方式の時代には戻せません。 資本主義経済には貧富の格差が出来る等々の問題が有り、種々の社会主義的な修正が行われてきました。 電力自由化政策についても、種々キメ細かい修正を行って行く必要が有ると私は考えています。

予想問題➊ :過疎地や離島
 電力の自由化とは、「電力10社に、お互いと、新電力会社と競争させて、電気料金を下げさせる」と言う事です。然し、電力10社は今でも儲けの少ない過疎地や離島に電力を供給しています。競争が激化したら、過疎地や離島については国が支援金を出す等の対策が必要になると予想します。

予想問題❷ :災害時の配電設備の復旧工事
 前述の様に近い将来、大災害が発生した時、送配電会社だけでは短時間に復旧する事が難しくなると予想します。自衛隊の力を借りるのが良いと思います。自衛隊に復旧工事に必要な機材と資材を保管して貰って、定期的に復旧工事の訓練をして貰うのです。

予想問題❸ :電力の調査機関に権限を持たせるべき!
 石油、天然ガス及び鉱物の安定供給の為に、経済産業省の外局として『資源エネルギー庁』があり、資源エネルギー庁の下に『独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構』と言う長ったらしい名前の組織が有ります。

 現在は、資源エネルギー庁が『電力』を含めた重要物質の供給責任を負う必要が有ります。所轄大臣と官僚達に責任が有る事を自覚させる為に、資源エネルギー庁を『重要物質供給責任庁』か『重要物質安定供給庁』に改名した方が良いと考えます。 (資源エネルギー庁は、現在でも電力の供給能力の調査と需要予測は担当している様です。)

 災害でも無いのに、真夏日や寒い寒い日に家庭と企業に節電をお願いする必要が無い様に、政府は対策を行う責任が有ります!

(私が危惧している事❶ :不正な金の流れをチェック出来ているか?) 資源エネルギー庁と石油天然ガス・金属鉱物資源機構の年間予算を合計すると『2.3兆円』にもなります。一方、職員数は二つの組織を合わせて1,100人程しかいません。

 巨額の金が動く時は、悪い輩が虎視眈々と狙っています。東京オリンピックの高橋治之容疑者が良い例です。資源開発は外国で殆ど行われますから、外国に出張して適正な事業計画か?どうか?少人数で調査/チェック出来るとは思えません。資源エネルギー庁と石油天然ガス・金属鉱物資源機構に不祥事が無かった、将来も無い事を祈るのみです!

(私が危惧している事❷ :発電能力の余裕) 受給が切迫しそうになると、政府は余裕率が『2%』だとか『3%』だと平気で公表します。受給が切迫している時に、『震度6』程度の地震が発生すると複数の発電所が停止すると予想され→→一部の地域で停電が発生します!

 「2011年に発生した東日本大震災の時に、首都圏の電気の復旧は早かったですが、東北電力の発電能力に余裕が有って、その火力発電所が一早く運転を再開して、都市圏に電力を供給したためだ!」と言う様な記事を読んだ記憶が有ります。 「余力分の発電所の費用は国が負担する」様にするべきです!

★ 資源エネルギー庁 ・・・経済産業省の外局
    職員の定員≒445人
    予算≒5,597億円 
・・・職員一人当たり『13億円』ほど使っている事になります。

★ 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 
      ・・・資源エネルギー庁の下部組織
業務内容 :石油、天然ガス、鉱物に関し、❶備蓄、❷開発する企業に対する支援(資金の貸付、投資、債務保証など)、❸情報収集、❹技術支援などを行っています。
    職員数≒637人 ・・・2021年
    資本金≒1兆1,203億円 ・・・2021年
    予算≒1兆7,850億円 ・・・2021年度
    ・・・職員一人当たり『28億円』ほど使っている事になります。
    負債≒9,270億 ・・・2015年