荻野洋一 映画等覚書ブログ

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今秋訪れた、5つの茶の湯展

2008-11-23 13:08:00 | アート
 ここ1ヶ月ちょっとの間に、都内で行われた5種類もの茶の湯関連の展覧会を、期せずして訪れてしまった。東京美術倶楽部の《禅・茶・花》を皮切りに、畠山記念館の《数寄者 益田鈍翁》、東博平成館企画展示室での《茶人好みのデザイン: 彦根更紗と景徳鎮》、日本橋高島屋の《江戸・東京の茶の湯展》、そして最後に三井記念美術館の《森川如春庵の世界》である。こうしたリストというものは、茶人でもないくせに知った風な、私自身の生来のミーハーな性質を物語っているようで、はなはだ気恥ずかしい。

 ただしこうした世界から、数多くの事柄を学ばなかったと言ったら嘘になる。茶の湯で具現される、総合的にしてディテール豊かでもある美は、「心づくし」という他者への意識の伝達となっていて、その意味では、いわゆるアートそのもの以上に直裁的で、その痕跡は後世の私たちの心をも打ってやまないのである。
 世界には、茶を飲まない国はないだろう。たとえばスティーヴン・フリアーズの『クィーン』でも、スティーヴン・ソダーバーグの『セックスと嘘とビデオテープ』でも、侯孝賢の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』でも、溝口健二の『噂の女』でもいいのだが、そこには必ず、充実した愉悦の時間、淹れる者の悦びと、飲む者の悦びが交差してはいなかっただろうか。ものの本によれば、室町後期に茶道が発達する以前、茶の湯はなにより、競技であった。「闘茶」と呼ばれる、鎌倉貴族や大商人の間で、一口飲んで茶葉の銘柄を当てるゲームの規則が流行したのであるが、この競技は北宋から伝来したとのことである。


《森川如春庵の世界》は、日本橋室町の三井記念美術館で11月30日(日)まで開催。他の展示会はすべて会期終了
http://www.mitsui-museum.jp/