荻野洋一 映画等覚書ブログ

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別次元

2011-05-29 05:55:28 | サッカー
 今シーズンのプレミアをちらちら見ていて、いまマンチェスター・ユナイテッドが心身共に、世界で一番充実したチームだと思っていました。しかし、それをいなしていなしてボールの見せどころを晒しながら、一方的な展開に持ちこんだバルサは、別次元でしたね。
 とくに3点目のビジャの、きょうで引退するファン・デル・サールの死角へと変則的に巻いていくあの弾道、鳥肌ものでしたね! そして、2点目のメッシのフィニッシュにいたる瞬間、まるで魅せられたかのように、マンUのバックラインが一斉にフリーズしていたのは何だったのでしょうか?

『英国王のスピーチ』 トム・フーパー

2011-05-29 04:46:23 | 映画
 先の大震災に際して、今上天皇による異例のビデオスピーチが発表されたことは、記憶に新しい。父の昭和天皇にも、あの玉音放送があった。アレクサンドル・ソクーロフの『太陽』(2005)は、玉音放送の収録を担当した録音技師が自害したことを、侍従長から聞かされた昭和天皇が、ショックを受ける場面で終わっていた。
 またスティーヴン・フリアーズの『クィーン』(2006)では、ダイアナに対して冷淡な態度を崩さない女王が、息子の元妻の非業の死を悼むスピーチを引き受けるか否かが、物語の焦点となっていた。このように、国家元首とそのスピーチの如何は、映画作家に少なからぬ霊感を与えてきたわけだけれども、『英国王のスピーチ』はまさに、スピーチそのものが主題となっている。

 この『英国王のスピーチ』については、見る以前に友人Hから感想コメントをe-mailでもらっていた。ラスト近くのシーンで、対独宣戦布告を国民に告げるラジオ演説を終えたばかりのジョージ6世(コリン・ファース)が、紅潮した顔でバッキンガム宮殿のバルコニーに出て、市民の歓呼に応える後ろ姿を、セラピスト(ジェフリー・ラッシュ)が、複雑な表情を浮かべながら見つめるカットがあって、その点について「吃音症の治療が最終的に、戦争への参加を鼓舞する愛国演説を呼んだということへの皮肉か?」と、Hは問題提起をしてくれていた。
 しかし私としては、監督のトム・フーパーがそこまで考慮して演出したかどうか、どうも疑わしく思える。せいぜい、教え子の成長ぶりに目を細める恩師の、身分の違いを改めて意識したことによる距離の測定、とかそんなところではないだろうか。
 それと、ジェフリー・ラッシュ演じるこのセラピストが、どうにも芝居がかった、狭量で思わせぶりな余裕とでもいうのか、見ていてあまり愉快になる登場人物ではない。このような人物と生涯の友情を結んだ、などとエンドクレジットで記載されてしまったジョージ6世の方が、気の毒に思える。アカデミー賞受賞作というのは、わずかな例外をのぞいて、どうしてこうも。


TOHOシネマズシャンテなど全国にて続映
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